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【4巻3/10発売】聖女が来るから君を愛することはないと言われたのでお飾り王妃に徹していたら、聖女が5歳?なぜか陛下の態度も変わってません?  作者: 宮之みやこ
第三部

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第152話 私はもう駄目ですあとは任せましたユーリ様……!


 サクラ太后陛下が水羊羹を持ってきてくれた日から、私のつわりは少しずつ、けれど確実に収まっていった。


「よかったわ~~! このまま一生パンが食べられくなったらどうしようかと思ったわ!」


 アイの大好物でもあるふわふわの白パンにはしたなくかぶりつきながら、私は喜びの声を上げていた。


 あいかわらずお魚や匂いのきつい柑橘系には「ウッ」となったりするのだけれど、それ以外の食べ物は少しずつだけど食べられるようになっていた。

 調子のいい日なら以前のように、アイとユーリ様と一緒に食卓を囲むこともできるようになったのよ。


 ああ、食べ物を吐かずに食べられるって、なんて幸せなのかしら……!


 私が喜びを嚙みしめていると、ユーリ様がほっとしたように微笑んだ。


「よかった、君に元気が戻って。男にはどうしようもないこととはいえ、だからこそ見ていてやきもきしたよ」

「その節はご心配をおかけいたしましたわ。ユーリ様にも、そしてアイにも寂しい思いをさせてしまいました」


 言いながら隣でパンを頬張るアイを見ると、アイも私を見た。

 それからパンを手に持ったまま立ち上がって、よいしょっ! と膝上によじのぼってくる。


「ママ、げんきになってよかったねぇ!」


 小さな手が私の首の後ろに回ってきて、アイはぎゅううっと私を抱きしめた。


「アイ、食事中に席を立ちあがってはいけませんよ。……と本当なら叱らなければいけないところだけれど、今日だけは特別よ。ずっとアイには寂しい思いをさせていたものね」


 私もアイを抱きしめ返すと、柔らかな黒髪に顔を寄せた。

 ふんわりとした柔らかい、それでいて清潔な匂いを思いきり吸い込む。


 ……あら? そういえばアイ、少しだけ背が伸びている気がするわ。以前より頭の位置が若干高いような……。


 でもそうよね……アイがこの国にやってきて、もう一年経つもの。

 この一年、ショコラやリリアンやローズ様など本当に色んなことがあったけれど、一年もあれば子供の背だって伸びるわ。


 私がしみじみと思い出していると、アイが私の肩にこてんと頭を寄せて言った。


「じゃあ、またママとねんねしてもいい?」

「! そうね……!」


 実はつわりが始まってすぐ、アイたちとは寝室をわけていたのよ。

 私は昼夜問わずいつ嘔吐するかわからない状態だったし、その度に隣で寝るアイやユーリ様を巻き込むのも申し訳ないと思って。

 ユーリ様は付き添うと言ってくれたのだけれど、ユーリ様は国王なのよ。私のせいで寝不足にさせて政務に支障が出たらよくないから、かたくなに断っていたの。

 その間、アイはなんとサクラ太后陛下に添い寝をしてもらっていたのよ。

 サクラ太后陛下は「久しぶりに幼子の添い寝ができるなんて、なんだか若返るようだわ」と喜んでくれたからよかったのだけれど……。

 でも確かに今の体調なら、また以前のようにみんなで寝ても大丈夫かもしれない。


「……うん、そうね。ママももうみんなと一緒に寝て大丈夫だと思うわ。太后陛下にお礼を言って、お部屋に帰ってきなさい」


 私の言葉に、ぱぁぁっとアイの瞳が輝く。


「やったあ! またママとねんねできるっ!」


 またアイがぎゅうううっと私を抱きしめた。

 ふふふ、心なしか、力も少し強くなったかしら?

 サクラ太后陛下と一緒にねんねしてる間アイは何も言わなかったけれど、きっとアイなりに寂しい思いをしていたのだろう。

 そこに、こほん、という控えめな咳が響く。


「…………ではエデリーン、私も戻ってもいいだろうか?」


 控えめにそう尋ねたのはユーリ様だ。


「もちろんですわ。ユーリ様もいらしてくださいませ」


 私の言葉に、ユーリ様の顔もパッと明るくなる。

 一瞬私はそこに、大きな耳と尻尾が見えた気がしてぱちぱちまばたきをした。


 ……ユーリ様ってやっぱり、時々大型犬っぽいのよね……!


「もし気持ち悪くなったりしたら私を起こしてくれ。遠慮はいらないから」


 そう言って私に優しく微笑むユーリ様の幸せそうなお顔ったら……。

 キラキラして、まるで物語に出てくる王子様のようね!?


 最近つわりのせいでユーリ様のお顔を直視していなかったから、私は久々のユーリ様スマイルの直撃を受けていた。


 いつも忘れるのだけれど、お顔立ちがいい分こういう時の威力がすさまじいのよね……!


 同時にあまりにも気遣いにあふれたユーリ様を見て、私はとあることを考えていた自分を少しだけ恥じた。


 ……とあることっていうのは、あれよ。


 ほら、夫婦の………………あれよ。


 これ以上は言わないけれど、つわりが治った以上、そういうことも考えるべきなのかしら? もしユーリ様がそれを望んでいたら「お医者様に確認しなければ!」と言うつもりだったんだけれど……。

 先ほどのユーリ様のこれ以上ないピュアな笑顔から、そういうやましいことは全然考えていなさそう……?

 うう、ごめんなさいユーリ様。どうやらやましいことを考えていたのはユーリ様ではなく、私の方だったようです……!


 私が口を押さえてふるふると羞恥に震えていると、ユーリ様が心配そうに顔を覗き込んでくる。


「エデリーン? 具合が悪いのか?」

「いっいいえ! 大丈夫ですわ!」


 言えない。

 不埒な想像をしていた自分を恥じていたなんて、言えない。


「そ、それより……この通り私も体調が戻ってまいりましたから、ずっと延期になっていたアイの生誕祭に関して、本格的に取り組もうと思いますわ!」


 私の嬉々とした言葉に、ユーリ様も微笑む。


「そうだな。アイの生誕祭は、やっぱり君が主導するのが一番だと思う」


 つわりで動けない時ならいざ知らず、もう調子が戻ってきたんだもの!

 アイのお誕生日、国で一番の盛り上がりにしてみせるわああ!!!


 めらめらとやる気を燃え上がらせる私の横で、アイが笑う。


「えへへ」


 お誕生日会、という言葉にアイがほっぺに両手をあてて、嬉しそうに笑っている。


「アイ、しってるよ。おたんじょーびって、ぷれぜんとがもらえるんでしょ?」

「もちろんよ。アイは何かほしいものはある?」

「えっとね、えっとね……おおきなくまさんのぬいぐるみ! ……あ、でもやっぱり……アイ、ぴあのもやってみたいの!」


 ピアノ?

 いずれ習わせなければとは思っていたけれど、まさかアイの口から先にその単語が出るなんて。


「あっ、でも、うーん……でもやっぱりあたらしいえほんが……ほしいな……。それでね、それで……」


 言いながら、アイがちらりと私を上目遣いで見上げる。

 つぶらで黒いおめめが、うるるんと揺れた。


「……またママに、えほんよんでほしいな……?」


 っ……!!!

 くううううっ!!!


 私はガッと鼻を押さえた。


 つわりでユーリ様に対する免疫が消えていたのは先ほど実感したばかりだけれど、アイに対する免疫も消えているわね!?

 アイの天使の如き可愛さに、久しぶりに鼻血を吹き出すところだったわ!?


「でもねっでもねっ」


 そんな私の異変には気づかず、もじもじとしながらアイが言葉を続ける。


「ほんとはママとパパにもらえるなら、なんでもうれしいよ」


 は~~~い追い打ちいただきました~~~~~!!!

 私はもう駄目ですあとは任せましたユーリ様……!


 鼻下をなまあたたかい液体が伝うのを感じながら、私はフフッと笑った。


 こんな気絶の仕方なら、悪くない。

 ママ、ちょっと天国覗いてくるわね……。


「えっ、エデリーン!?」

「ママっ!?」


 あわてふためくユーリ様とアイの声が聞こえる。


「とりあえずハンカチを!」


 ユーリ様の手が伸びてきて、急いで私の鼻をハンカチで押さえる。


 さすがユーリ様、動きがすばやいですわ……。なんて頼もしい。これならいくら鼻血を出しても安心ですわね。


ユーリ様に鼻を拭き拭きされながら、私は謎の安心感を覚えていた。


「エデリーン、今日はこの辺りでもう休んだ方がいいのでは」

「何をおっしゃいますの! 本番はこれからですわよ!」


 なんせ私には、可愛い可愛いアイのお誕生日を盛大に祝うっていうミッションがあるんですもの! つわりや鼻血に倒れている場合ではないわ!


「それならいいが……あまり無理はしないでくれ。……それから、少しふたりで話したいのだがいいか?」


 ふたりで?


 その言葉に私はユーリ様を見た。


 ふたりでということは、アイや侍女たちに聞かれてはまずい話ということよね?


「……わかりましたわ。では、ユーリ様のお部屋に行きましょうか。アイ、ママたちはお仕事の話をしてくるから、ここでアンたちと待っていてくれる?」

「わかった!」


 アイがこくりとうなずく。

 私が目くばせをすると、アン、ラナ、イブたちもしっかりとうなずき返した。












生きることは食べることです!

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聖女が来るから「君を愛することはない」と言われたのでお飾り王妃に徹していたら、聖女が5歳だったので全力で愛します!!

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聖女が来るから君を愛することはないと言われたのでお飾り王妃に徹していたら、聖女が5歳?なぜか陛下の態度も変わってません?
― 新着の感想 ―
育てなおされて、育ちなおしてる… 大きくなれよぉ(なんかこればっか言ってる気がしてきた)
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