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第135話 王宮はきっと、これからも楽しいことがいっぱいね

 どうだったのです、というのはローズ様の正体についてだ。


 ホートリー大神官の体調が回復した後に、もう一度ローズ様たちに会ってもらっていたのよね。

 話を振られた大神官が、うぅむと元々下がり気味だった眉をさらに下げる。


「それが……特に何も変わったところはなくてですね……。以前感じていた女神様の気配も、今回は感じられず……。わたくしめの気のせいだったのかもしれません」

「そうなのですね……。女神様と関係のある人物なら私も会っておこうかと思ったのですが……」


 サクラ太后陛下も、ローズ様に少し興味を持っていたみたい。

 アイと違って直接会わなかったとは言え、サクラ太后陛下も女神様によって人生が変わったひとりだものね。


 それにしてもホートリー大神官が何も感じなくなっているなんて……。

 だとしたらあの日〝映像共有〟で見た人物は一体誰だったのかしら? 他人の空似にしては似すぎているんだもの。それとも私の気にしすぎなのかしら。


 そこへ、会議で遅れていたユーリ様も合流する。


「遅れてすまない。なにやらいい匂いだ」

「パパ!」

「おっユーリちょうどいいところに。今ちょうど焼きたてができあがったところだぞ! ほれ、姫さん持ってってやりな」

「うん!」


 ハロルドからたい焼きを受け取ったアイが、嬉々としてユーリ様のところに持って行く。

 ユーリ様はそれをアイごと抱っこすると、アイが持っていたたい焼きにぱくりとかじりついた。


「……うん、おいしいな。ぼたもちもおいしかったが、私はこっちの方がさらに好きかもしれない。皮がパリパリで楽しい」

「そうそう。そうなんだよ~。ユーリのくせにいいところに目をつけるじゃないか」

「ユーリのくせにとはどういう意味だ」


 そんなユーリ様の言葉を無視して、ハロルドが語り出す。


「実は皮もな、厚すぎず薄すぎず、ちょうどいい焼き加減を求めて試行錯誤したんだよ。薄すぎると中身が見えてちょっと嫌だろう? 厚すぎると今度は少し味気ない。だからパリパリになる、でも破れない塩梅を見つけるのが大変でさ~~~」


 ハロルドはすっかり語りモードだ。


 私たちの前ではパパッと作ってくれたように見えたけれど、やっぱりこっそり練習していたのね……!


「ハロルドのそういうところ、本当に真面目で偉いわよね」

「お? おう……そりゃまあな」


 へへっ、とハロルドが照れたように頭を掻く。

 次の瞬間、バシン! という音が響き渡った。


「いってぇ!? 何するんだリリアン!」


 見れば、それまでもくもくとたい焼きを食べていたはずのリリアンが、ハロルドの頭を思いっきりはたいていたのだ。


「虫がついていました」

「ぜってぇ嘘だろ!? 俺が厨房に虫入れるはずがあるか!」

「いました」


 言って、プイっとそっぽを向く。その顔はどこか拗ねているようにも見える。


 …………あら? あらあらあら?


 私はふふっと笑った。

 王宮はきっと、これからも楽しいことがいっぱいね。ふたりを見ていると、そんな気がするわ。


「ったくなんなんだよ……。それより!」


 みんなの注目を集めたハロルドが叫ぶ。


「餡子もいいが、たい焼きにはあんこだけじゃないぞ~! カスタードクリームにホイップ&餡子、チョコレート、モンブラン、それからユーリ用にチーズ&ハムをいれたものもある!」


 何その品ぞろえ……! 聞いているだけでおいしそう!


「アイ、ちょこれーとがいいー!」

「わたくしはカスタードクリームが食べてみたいわ!」

「ホイップと餡子なんてものがあるのね。若者の発想は斬新だわ……」


 次々と飛び出す新種たい焼きを、私たちはお腹いっぱいになるまで堪能したのだった。





 翌日。今度はローズ様たちを招いて、たい焼きを食べてもらうことにした。


 え? 二日連続たい焼きで飽きないのかって?

 それが不思議なことに全然飽きないのよね。もうお腹いっぱい食べた、と思っても次の日になってあのふんわりとしたいい匂いを嗅ぐと、途端にまた食べたくなってしまうの。

 これはぼたもちの時にはなかったことだから驚きよ。もしかしてたい焼きって、中毒性があるのかしら……!?


 考えながら席につく。

 茶室には、既にローズ様とアイビー様が来ていた。

 ローズ様はいつも通り特製の魔法椅子に、アイビー様はその後ろに立っている。


 ……アイビー様って実はいつもローズ様の後ろに立っていて、どんなにすすめても決して座らないのよね。その姿はまるで、主人に仕える従僕のようだと思う時がある。


 そんなことを思いながら、私はお皿に山盛りになったたい焼きを薦めた。









***

ハロルドとリリアン、好きなんですよね……!

そういえば書籍3巻の描き下ろし番外編にも、ふたりが登場します!(宣伝


宣伝といえばもうひとつ。

5歳聖女ではないのですが、

「抜いた包丁が聖剣だった!」

というゆるい感じのファンタジーも書いておりまして(書籍1巻発売中)。

そちらのコミカライズも最近連載が始まったので興味ある方はよかったらぜひー!


「はらぺこ令嬢、れべるあっぷ食堂はじめました ~うっかり抜いた包丁が聖剣でした!?~」

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聖女が来るから「君を愛することはない」と言われたのでお飾り王妃に徹していたら、聖女が5歳だったので全力で愛します!!

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聖女が来るから君を愛することはないと言われたのでお飾り王妃に徹していたら、聖女が5歳?なぜか陛下の態度も変わってません?
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