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第132話 言われてみれば確かにガバガバね!?

「なーんか最近のユーリから、謎の余裕を感じるんだよなあ……」


 そうぶつぶつ呟いているのはハロルドだ。

 今朝たい焼き器が完成したという連絡をもらって、朝からアイと一緒にいそいそとたい焼き試食会場、こと厨房に来ているのよ。

 本当はユーリ様も来るはずだったのだけれど、会議が長引いているみたいで絶賛遅刻中よ。


「やっぱあれか? 一線を越えた男から出る余裕っていうものなのか?」

「あの……アイもいる場でその話はよしてくださる?」


 コホン! とこれ見よがしに咳払いしてみるものの、やっぱりこの男に効果はない。


「前は『もうちゅーはしたのか?』って言っただけで真っ赤になって怒っていたのに、最近は余裕綽々で『少しだけ上手になったと思うんだ』なんて言いやがるんだ。俺はそういう反応が欲しかったわけじゃねぇ!」

「わかってはいたけれど、あなたも大概子どもね……」


 そこへ、私たち以外のメンバーも集まってくる。

 作っているのを見たいと言ったサクラ太后陛下と、すっかり体調がよくなったホートリー大神官と、それから――。


「リリアン!」


 そこには神官服を着て、また護衛騎士だった頃のように髪をポニーテールに結っているリリアンの姿があった。


「な、何よ」


 神殿に拘束されているリリアンの所には定期的に行っているけれど、王宮で彼女の姿を見るのはあの一件以来初めてだ。


「おい、サキュバスが神官服なんてどんな罰ゲームだよ!」


 そんなリリアンを指さして笑っているのはもちろんというか当然のごとくハロルドだ。


「う、うるさいわね! 一応これでも、正式に神官のひとりとして認められたのよ!」

「サキュバスが神官!? どんだけ審査がガバガバなんだよこの国の大神殿!」


 ……言われてみれば確かにガバガバね!?


 ハロルドの言葉に、私はハッと気づいた。よりによってサキュバスが神官なんて、聞いたことがない。

 私がちらりとホートリー大神官を見ると、大神官は気を悪くした様子もなくほっほっほと笑っている。


「そうなんですよ、ガバガバなんですよねぇうちは」


 そこは認めちゃっていいんですのね!?


「でもまあリリアンくんもね、魔物だけどね、言葉が通じるのなら一度くらいチャンスがあってもいいのではないかと思ってね。ほら、彼女、本当は魔封じの腕輪なんか全然効果ないのに、特に悪さしなかっただろう? そういう点も含めてね」

「えっ。あの腕輪、効果なかったんですの?」


 てっきりリリアンはあれで封じられているのかと思っていたのに、違ったなんて。

 驚いてリリアンを見ると、彼女は気恥ずかしそうに目を逸らした。


「別に……。どうせ魅了しても浄化されちゃうんだから、勝ち目がないって思っただけ」

「へっ。どうせドーナツに釣られただけだろ」

「そっそんなわけないじゃない!」


 吠えんばかりの勢いでリリアンがハロルドに噛みつく。そこにアイも嬉しそうに言った。


「アイ、リリアンおねえちゃんがだいじょうぶってしってたよ! だってりりあんおねえちゃん、やさしいもん!」

「お前のことをそこまで信じてやれるやつ、姫さんぐらいだろうな。ほんと今度は姫さんのこと大事にしてやれよー?」


 なんて言いながら、ハロルドがぐわっと大きな手を伸ばしてリリアンの頭をガシガシと撫でまわしている。


「わ、わたくしの魅了にやられるような男は黙ってなさいよ!」


 その姿を、私はニマニマしながら眺めていた。


 あいかわらずこのふたりは仲がいいのねぇ……ふふ。


 そこにサクラ太后陛下が少し困ったように言う。


「なんて言っているけれど……もし何かあったら責任を取るのはホートリー、あなたなのよ? そんなに簡単に信じてしまっていいのかしら」

「ほっほっほ。大丈夫ですよサクラ太后陛下。いざという時はこのホートリー、命を使ってリリアンくんをお止めしますのでな」

「ヒッ」


 ニコニコしたホートリー大神官の言葉に、リリアンが震え上がる。


 大神官はあんなに優しいのに、リリアンは怖いのかしら?


 サクラ太后陛下がまたはぁとため息をつく。


「まったくあなたという人は……先日倒れたばかりなのですから、ご自身の命は大事にしてくれないと困りますよ? あなた以外に誰が大神官をやれると思っているのですか」

「なあに、神官たちは皆優秀ですよ。とは言え、太后陛下にご心配をおかけしてもいけませんからねぇ。ほどほどにやりますよ」


 ニコニコとこれ以上ないくらい朗らかに言われて、さすがのサクラ太后陛下も追及を諦めたようだった。


「わかっているのならいいのです。……それよりたい焼き器が完成しているのでしょう?」


 いつになくソワソワした様子から、サクラ太后陛下が今日を楽しみにしていたことが伝わってくる。


 ふふ、やっぱり故郷の味は懐かしいものね。太后陛下の親友、ソノコ様との思い出の味でもあるみたいだし。


「そうですわね! ハロルド、早速たい焼きをお願いできるかしら!」

「おう、まかせとけ!」


 言うなり、ハロルドはサッと何かを取り出した。


「じゃーん! これが〝たい焼き器〟だ!」





***

次回、いよいよたい焼き登場!


……ちなみに大修羅場中で先週は突発的な更新をお休みいただいてTwitterの方で告知していたんですが、皆さん的には一行、二行ほどでも、活動報告で報告あった方がよかったりします?それとも「更新通知あるから関係ないよ~!」な感じなのかな……?


もしTwitter見てないから活動報告でも連絡ほしい!って方がいたら教えてください~!休載の時にそっちに書くようにします。いなかったら今まで通りTwitterの方で告知します。

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聖女が来るから「君を愛することはない」と言われたのでお飾り王妃に徹していたら、聖女が5歳だったので全力で愛します!!

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聖女が来るから君を愛することはないと言われたのでお飾り王妃に徹していたら、聖女が5歳?なぜか陛下の態度も変わってません?
― 新着の感想 ―
[一言] たい焼き! 皮はパリッと! あんこじゅわ〜! うまうま!
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