表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
優しい嘘つきと鬼ごっこ  作者: 掃晴娘。
3/10

紫蘭の湖 3

 僕は今朝までサドルがあった場所を見ながら、苦笑いをする。

「ねぇ、瀬名。言いたいことと聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

「えぇ」

 構わないわ、と彼女が言う。

「僕のサドルはどこかな。そして出来ればサドルを返してくれないかな」

 呆れたように言う僕に、瀬名はおどけたように答える。

「あら、まるで私が犯人のような言い方ね」

 心外だわ。涙を拭うような仕草をする。

「じゃあ、僕のお尻を優しく受け止めていたサドルはどこにいったのさ」

「知らないわ。駐輪場に行ったら、すでにそのすがただったもの」

 ああ、そう。

「でも、そうね。もしかしたらあなたのファンが持って行ったのかも。好きな子の縦笛にあれやこれやするじゃない? その延長線上ね、きっと」

 ああ、そう。

 それじあ、今頃僕のサドルは見知らぬ女子(で、あってほしい)にあれやこれやされているのか。

「モテるっていいわね。青春よ、青春」

 そうだとしても、そんなフェチにまみれた青春は御免被りたいね。

 瀬名は素早く荷台に座ると、早く行きましょうと急かした。

 立ちこぎしかできなくなった自転車にまたがる。

 きっと、どこかの優しいイタズラ娘が僕の脚力向上に一役買うためにサドルを隠したのだろう。

 素晴らしいね、青春。

 ちなみに理由の三つ目。

 それは、瀬名にイタズラをしてほしかったからだ。

 つまり、僕も将来ましな大人になれはしないのだ。

 ペダルに足を乗せると、思い切り踏み込んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] とても青春チックな内容で、ヒロインの変態性が少し垣間見える発言が、ドキドキしました。 筆者の方の瀬名に対する愛情がしっかり伝わってくるので、僕もそういう面は参考に努めていきたいと思いました…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ