06幕 『お茶会の時間へようこそ』
「あー。あー・・その・・・それよりもこの国について教えてくれますか?」
「あら?ハングが教えてあげたんじゃないのかしら?」
「あーと・・・ルールがどうたらーとかだけ・・・」
「あらあら・・・・ダメじゃないのハング!ちゃんと教えてあげなきゃ!!」
「も、申し訳ございません!
ただ、あの小屋には休息に立ち寄ったので、詳しい話はこちらで・・・と思ったのです」
「へ?あなた達塔の方にいたの?」
今までハングに向けられていた視線が急にわたしに向いて思わず慌てて言い返す
「は、はい。えと、目が醒めたらあの塔に最上階らしいとこにいた・・・ヨ?」
「ふぅん・・・そうね。あの塔には立ち寄りたくもないものね
うんいいわよ。じゃあお茶にしましょう!」
ティーはそう言ってパンパンパン、と手を叩いた
「お茶・・・?あのーこの国の説明は」
「アリス、女王陛下はお茶の時間だけは曲げない頑固者ですので・・・」
「聞こえてるわよ、ハング!」
「おや・・・それは申し訳ございません。女王陛下」
あれれ?ハングさんハングさん?さっきと口調とか少しばかり変わってません?
「ねぇ、ティー・・・」
「うん?」
「ハングって一旦スイッチ入るとあれだけど
実はちょっと毒舌キャラ?」
「毒舌・・というよりは、いじめっ子じゃないかしら」
「・・・いじめっこ?」
「そうなのよ!わたくしは休憩時間を満喫しているのに急に書類の束を持ってくるのよ!!」
「それは女王陛下の休憩が多すぎて以前から溜まっていた重要書類の束でございます」
「・・・そ、それに!
わたくしがせこせこと書類にサインをしているのに次から次へと持ち込んでくるのよ!!」
「それも先程申し上げた通り、女王陛下が、溜めに溜め込んだ書類でございます」
「うっ・・・むぅ・・・・・」
「ティー・・・・・・・」
「うっ、うるさいわね!
うぅっ・・・ハングとアリスがいじめてくるわ・・・・」
「はいはーい。女王も宰相さんもいい加減にしましょうねー」
「え・・・」
わざとらしく目に涙を潤ませたティーを嗜めるような声がいきなりにアリス隣から声が聞こえ、
反射的に隣を見たら目の前には水色の長髪が広がっていた
(い、いつのまに・・・?)
「と、言うかさ〜女王にいつも言ってますよねー?
朝にお茶会しないで下さいよ。」
「あ、朝・・・?」
「そーそう。サァムさんに叩き起こされるあたしの身にもなって下さいよー
おかげで眠くて・・・・ふあぁ〜」
朝・・・?わたしが来た時にはまだ昼だったはず・・・・だよね?
「あらグリフォン。いらっしゃい」
「女王、あたしの話聞いてました?
朝にはお茶会をしないで下さい!」
「いやよ。わたくしはわたくしの好きな時にわたくしの好きなことをするのよ」
「・・・それで私はあなた様の尻拭いをする事になるのですが・・・?」
ハングはティーの後ろでおどろおどろしいオーラを出してティーと睨んでいる
・・・・・・・・・苦労人なんだね。ハング
ティーに『グリフォン』と呼ばれた人は諦めたようにため息をついている
「まぁまぁ、せっかくお菓子が来たんだもの。楽しくいただきましょう♪」
「女王ーあたしも一緒していいですか?」
いつの間にかわたし達の前にならべられたスイーツの数々に、
ティーたちは驚くこともなく悠然と席に座っていく
そこで水色の髪の彼女が軽く左手を上げていった・・・ダルそうに
「えぇ、えぇ。モチロンいいわよ♪好きな席に座って」
「あい。どもです
じゃあ・・・」
彼女は適当な席に座ろうとしていたわたしを一瞥した後、指さして言った
「そこの彼女の隣で」
「え?」
「・・・だめ?」
『グリフォン』はわたしより少し高い身長を屈め、わたしの顔を覗き込んで聞いてくる
「イ、イイエ!トンデモナイ!!」
「そ?なら失礼。」
全員が落ち着いて席についた頃にティーがニコニコと言った
「アリス、このお茶会が終わったらこの国について説明してあげるわね?」
「あ。うん。わかった」
「ん?なになに?君って余所者さん?」
「え、あ。はい」
この人があまりにも物珍しそうに自分を見るものだから思わず引いておどおどと答えてしまう
それと彼女は見て取ったのか、けらけら笑いながらニコニコと言う
「あ〜。ごめんごめん。あたしの名前は『グリフォン』って言うん。
この城で菓子職人をやってるからねー
あ。ちなみに名前の方は呼び捨てでよろしく。・・・・・・で、君は?」
「アリス=リデル。よろしくね?グリフォン
・・・菓子職人て和菓子とか?」
「ん〜ん。菓子系なら全般いけるよ。
それはもう西洋菓子から東洋菓子までにね」
「へー!それはすごいね」
「アリス。グリフォンもお菓子はとっても美味しいのよ。
ここに並んでるのも全部彼女が作ったんだから!!」
「え?!これ・・・全部?」
「そうそう。起き抜けだったからこれだけしか作れなかったけど、大変だったんだから。
ってことで、朝のお茶会はホントに辞めてください。いやマジで。切実に!!」
これだけ・・これだけ・・・・・これだけ?!
今わたし達の前に並んでるこれ全部グリフォンが作ったの!?
しかも起き抜け!?
ちなみに今アリスたちの前に並んでいるスイーツは
ティラミス、クレームブリュレ、パンナコッタとナタデココ、タピオカ、カヌレ
アイスクリームにケーキ、プリン、ババロア・・・・・・
ここにあるのは全部洋菓子だけど種類分けしたら軽く・・・いや
もっとあった・・・・
「すごい・・・・」
「へへへーそっか?すっごい嬉しいよ」
えへへー、と純粋に嬉しいらしく、グリフォンは子供らしい笑みを浮かべた
(・・・・・・グリフォンて、よく見るとわたしと同い年くらいみたい・・・
でもさっきの顔は二十歳位に見えたし・・・)
「なんか、グリフォンもお菓子みたい・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・はぃぃ?
アリス、今なんていった?」
「え?グリフォンってお菓子みたい、って」
「おかしぃ?あたしがぁ?」
「え?エ?なんかわたし変なこと言った?!」
「いや・・変って言うか・・・・・・。あ!こらぁ!!
女王も宰相さんも笑わないぃぃ!!!!」
一番始めに横顔を見た印章だと、なんか怖そうな人だったけど・・・
うん。やっぱり第一印象って中てにならないね。
「ゴ・・・ゴメンなさいグリフォン・・・・・で、でも・・・・・」
「く・・くく・・・申し訳ございません。グリフォン・・しかし・・・・」
「あっーもう!ひっどいなぁ!!ほら、もう夜になったからお茶会は終わりね!!!」
グリフォンは笑いを堪えているハングとティーに怒りつけた後、
空になった皿(ほぼティーが食べた)を片付ける
・・・・・・・・・・・・・・・・え?
夜?
グリフォンさん、あなた今『夜』って言いませんでした?
「おや?本当ですね。夜でごさいます。いつの間に変わったのでしょうか?」
「いつの間にそんな時間たったのかしら?」
ティーとハングは天窓を見て平然と言う
あ。本当に夜だ・・・
わたしがこの国に来た時はまだ昼で、
グリフォンが来た時は朝になって、
お茶会が終った時には夜?
・・・・・一体、どういうこと?
◆グリフォン
水色の髪の中に一部、紫色のメッシュがかかっている
背はアリスより少し高く長袖の服をいつも着ていて、
首には金の首輪がついている
本編でも出たように城で菓子職人をしている。
が、気紛れなティーのせいで朝にたたき起こされる事もしばしば・・・
(現時点、アリス視点の記録です)
>>次回『不規則な時間へようこそ』