表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/18

01幕 『不思議な国へようこそ』

 やぁ。アリス

 さっそくだけれど、

 金の装飾の懐中時計を目印に

 白いウサギを追いかけよう



「う…ん………」


のどかな春の陽だまりの中、うっすらと目を空けると、ぼんやりと青と白の空を眺めた



「あら。アリス、起きたのね?」

「姉、さん」


隣には、のんびりと本を呼んでいる、アリスの姉のロリーナの姿があった



『ようやく―――ようやく会えますね』



「?」


声が……した。若い、男の人の声が聞こえた………ような気がした


「…今、」

「?」

「声が、聞こえたような気がしたの」

「声?」


姉さんは本から視線をわたしに移して小首をかしげた


「うん、声。聞いた事のあるような、無いような

…曖昧な感じなんだだけど。…………姉さんは聞こえた?」

「いいえ?」


姉さんも聞こえたのではないかと訪ねてみたら、

全く、とふるふると首を横に振った


「そう………」


さっきの声は空耳?


考え込むように黙ってしまったアリスに続いて、ロリーナも何かを考え始めた

幾秒かした後、ロリーナが何か思いついたように顔を上げた


「アリス、それはあの子達の声じゃないかしら?」


姉さんは向こうの草原で遊んでいる子供たちを指差した


「楽しそう………」


アリスは、向こうの草原ではしゃいでいる子供たちをぼうっと眺めている


きっと、きっと、さっきのは、空耳。

折角、こんなのどかな陽だまりの中で大好きな姉さんといるんだから。

この幸せな時間を無駄にはしたくない

そうだ。さっき見た夢の話をしよう

姉さんは人の夢の話を聞くのが大好きだから


「姉さん、あのね…………」

「ロリーナ姉様、お父様がお呼びよ!」


アリスの妹のイーディスが大きな声でロリーナを呼ぶ


「あらあら、何の御用かしら?今行くわ、少し待っていて!」


ロリーナは大きな声を出してはいないが、離れた所にいるイーディスには聞こえたらしく、

「わかったわ」とだけ頷いて家の中に入って行った


「アリス、さっき何を言おうとしたの?」


本を閉じて、立ち上がった姉さんは身を屈めて聞いてきた


「ううん。大した話じゃないの。父さんの用事を優先して?」


わたしは、自分に出来る限りの笑顔を姉さんに向ける。


「そう?じゃぁわたしが戻ったら聞かせてね?」

「うん。行ってらっしゃい」


姉さんもわたしに満面の笑みを見せて、家の中へ消えていった


「ふう……」


アリスは特に何をするでもなく大きな木に寄りかかって、

のどかな陽だまりの中ではしゃぎまわる子供達を眺めていた


(また………眠くなってきた)


うとうととして溶けていくように陽だまりの中でアリスは目蓋を閉じた




「ふぁ……。…あれ?」


まだ昼だった。随分と眠っていたような気がするが、空を見ると

30分、1時間程しか経っていないようだった。

姉さんはまだ戻ってきていない


(父さんの話、長いのかな?)


「おはようございます。」


不意に上から声がして見上げると白い髪の青年が目の前に立っていた


「大変お久しぶりですね。もっとも、あなた様は覚えていらっしゃらないかもしれませんが。」



誰?


思い出せない。この人物は誰なのか


いや。うっすらとは覚えている。


もう何年も前の母の葬式の日に出席していて、


白い髪が印象的だったのを少しだけ思い出した


彼は、憂い気に微笑んで言った


「迎えに幾年もかかってしまい、申し訳ございません」

「え………」


迎え…?

一体なんの?



『さぁアリス

   白いウサギを追いかけましょう』



青年は腕を伸ばして森を指差した。

そこには赤い服を着た二足歩行のウサギが走っていた

アリスはゆっくりと立ち上がって、駆け出していた

追いかけなければいけないような気がして、足が勝手に白ウサギを追いかけていた


『そうです。さぁ、そのまま白ウサギを追って

    穴へ飛び込みましょう』


あぁ。そうだ……


どこかで聞いた事のある声――――


まだ、分からない。

でも、不思議とわかる


わたしは白ウサギを追って、


思い切り穴へ飛び込んだ―――――――――――――――


落ちる。落ちている。


深い、とても深い穴


どこまで続いているのか分からない


…このまま落ちてば死ぬかもしれない。


でも、不思議と怖くない。


なぜだろう?


あ。母さんが昔、読んでくれた童話だ。


わたしと同じ名前の女の子。


…『リデル』っていうのも一緒だったけ?


まぁ、いいか。



わたしと同じ名前の女の子が、白いウサギを追いかけて……


帽子屋のお茶会。


暴君女王様の裁判。


そして、それは全て夢?


おかしな出来事も全部おかしな夢だった?


この童話はおかしな所で終わっている。


主人公のお姉さん……ロリーナ、だっけ?


あぁ。これも一緒だ。


母さんはアリスが好きだったのかな?



アリスは深い穴に落ちているのにとても落ち着いている。


(今、落ちている。これも夢?)


落ちながらぼんやりと考える。

もし、全部夢で………この先に不思議な世界が繋がっているとしたら?


この先は楽しい世界?

それとも、悲しい世界?


後は……


何もない、真っ白な世界?

何も見えない真っ黒な世界?


…あぁ。光が見えてきた



――――――そこで、わたしの意識は途切れた




投稿した後もちまちまと修正を入れています。

誠に申し訳ありません<(_ _)>

目標として一ヶ月〜四ヶ月の間に投稿したいです(・_・)


>>次回『おもちゃの国へようこそ』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ