16幕 『夢と忘却と帰還』
わーい。前回投稿から早一年ですよ!もう、時間が経つのは早いんだから☆
……………言い訳としましては、ずっと携帯電話が壊れていて一ヶ月くらい前に機種変をようやくした、というところですor2
気づくとわたしは何もないところにいた。
草原と青空以外は本当に何もない。
いや―――――全然違う、まだ、あった
草原には丘があって、丘の天辺には大きな、大きな大木があった
そこまで行ってみるとひとりの『人』がいた
その『人』は真っ黒いローブを羽織って、でもローブのフードは取っているのに、まるでフードを被っているような………違う。それは違う
|その『人』の周りだけ暗闇みたいに顔が見えなかった《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》
その『人』はわたしに気づくとにこりと微笑んだ
……………?どうして、顔が見えないのに笑ったってわかったんだろう?
『久しぶり。アリス ………うん?直接話すのは初めてだから『はじめまして』かな?』
だれ?
『誰でもないよ。僕はボクだ。夢だ。世界だ。時間だ。命だ。
そして、この世界で一番くだらなくてちっぽけなものだ。』
……………?
『うぅん………やっぱわかんないか。本当に、アリス。どうして君はこの国にこれたんだろうね?』
………どういうこと?
『そのままの意味だよ。そうだね、君に設問を投げかけてみようか』
……………。
『君は、なにかを失った?君の還る場所はある?あるならどうしてこの国に留まる?』
失ってない。帰る場所は当然ある。留まる理由は…………
『思いつかない?おかしいね。普通の人間なら死に物狂いでもとの世界に戻ろうとするものなのに。どうしてだろうね?君は何も失ってないし、還る場所もあるっていうのに』
…………………………
『怒らないでよ。本当のことだろ?……仕方ないからもう一度聞いてあげるよ。少し項目を増やしてね』
『君は、なにかを失った?君の還る場所はある?あるならどうしてこの国に留まる?』
『失ったのなら、君はいったいなにを失った?』
「――――――――――、」
「アリスッ!気づきましたか?」
「ここ………ハートの城?」
「えぇ、えぇ。そうです。そうですよ」
目を覚ましてまずいちにあったのがハングの心配そうな顔
わたしはいつのまに、どうやって帰ってきたのか。
正直に言って何も覚えて無い。
ヴェインと一緒にヴェインの友達って人の家に行ったら殺されそうになって
赤毛の人が助けてくれて、ヴェインにあって……
それで気づいた今、わたしはハートの城のベッドに寝ていて、ハングが目の前にいる。
「ハング………」
「グリフォンが貴女を連れて帰ってきた時は何事かと思いましたよ」
「ごめ、んなさい……」
「いいえ、いいえ。貴女に大事が無く安心致しました」
「うん。でも、その、………」
バンッ
「ハングッ!アリスは気づいてっ?!」
「…………ティ、っ―――――!」
突然大きな音を立てて扉が開いて、ティーの声を聞いてそっちをみると……………見る余裕もなく鳩尾にティーが飛んできた
とんでもなく痛い。きっと胃に何か入ってたら………
でもティーはそんなわたしの事はお構いなしでそのままわたしをぎゅうぎゅう抱きしめる
「あぁ、よかったわアリス!これもわたくしが一途にあなたの無事を祈ったおかげね!」
「……………女王陛下」
「あら?まだちょっと顔色が悪いのね?気づいたのなら遊ぼうかと思ったのに、おあずけかしら?」
「女王陛下」
「仕方が無いからあなたが全快するまで遊ぶのは待ってあげるわ。あたくしの寛大さに感謝して頂戴ね、アリス!」
「……………、」
べりっ
まさにそんな音がしそうな程キレイにティーは剥がれた……と、言うよりハングが剥がしてくれた。
―――けど、正直鳩尾の痛みでそっちに注意が向けられない
「んもう!なによハングの無礼者!!首を跳ねて欲しいの?!」
「女王陛下、御言葉ですがアリスはまだ疲れておいでです。今はアリスを安静に寝かせておく事が優先事項かと。」
「ふんだ。あなただってアリスが帰ってきてから一睡もしてないじゃないの。すぐに眠るべきなのはあなた自身じゃなくて?」
「え…………?」
「ちょっと聞きなさいなアリス!ハングったらあなたが帰ってきてから一睡もせずにあなたを看ていたのよ?
しかもちゃあんと執務もこなしてね。メイドに任せたくないって気持ちもわからなくもないけど無謀にも程があると思わない?」
「嘘ぉ……………」
「あたくしが嘘をつくと思って?信じられないならハングの顔を見てみなさいよー」
鳩尾のダメージから少し回復した私はティーの言葉通りハングを見上げてみる
ハングは見られたくないようで顔を逸らしているけど、確かに顔色が悪く少しやつれている感じがした
「………わたし、どのくらい寝てたの?」
「そうねぇ~……どのくらいだったかしら?」
「どうして覚えていないんですか。およそ四巡前、ですかね」
四巡前……ということは大体わたしの来た世界で言って三日と、というか四日目になる前?で、あってるよね?
「………そんなに、ごめんなさい」
「アリス、貴女が気に病む必要は御座いませんよ。私共は自らの意思であなたを案じているのですから」
「でも……」
「いいのですよ、アリス。今は、ゆっくりと心身を安めてください。」
「うん、………ごめん」
「それとアリス、私は謝罪を繰り返されるよりも、一度のお礼を言われる方が嬉しいです」
少し冗談めかして言うハングに思わず笑ってしまった
そんなわたしに、優しい微笑みを浮かべて丁寧な手つきで髪を鋤いてくれるハング
「!! なっ、なに?!」
「失礼。御髪が乱れていたので」
ささやかなイタズラが成功した。
というように綺麗な顔で綺麗に笑われるとわたしにはどうすればいいかとんとわからなくなって、ハングを直視できずに思わず俯いてしまう
「~~~っ!あ、……ありがとう」
「いえいえ」
「ちょっと?なに勝手に二人っきりの世界に浸り込んでいるのよ!」
「なっ!ひ、浸り込んでなんか………!」
「ふーんだ。あたくしだって、本当はキングともっとイチャイチャラブラブしたいわよーぅ」
あの人とイチャイチャラブラブって………あの人がそういうことをするなんて想像もつかない。……………まだ一回しか会ったことないけど。
……………うん。とっても綺麗な顔ってことは覚えているけどあの人がデレる、となったら全くもって想像がつかない
「ちょっとアリス?流石に失礼じゃなくって?
それこそキングは普段はああだけれど微笑むとそれはそれはとーっても!綺麗な表情をなさるのよ!!」
「ちょ!!なに心のなか読んでるのティー!」
「アリスったら顔でバレバレなのよー!」
「て、あれ?あれ?そういえば、グリフォンは?」
いつもならここらでグリフォンのツッコミが入ってくれすはずなのに、それがないって今更気がついた。色々あったからって遅い。遅すぎる。
でも気になった。わたしを連れて帰ってきてくれたのはグリフォンらしいし、どうやってあの物騒な日本屋敷から帰ってこれたのかがとても気になる
「ねぇ、グリフォンはどこにいるの?」
「グリフォン……?あぁ、グリフォンですね」
「あぁ、あの子?あの子は―――」
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『ねぇ、もう十分でしょ?63時間もぶっ続けでサァムさんも疲れてるでしょ?』
『いえ、特に。』
『特にって……!いやもうホント勘弁して。あたしの方が極限……ぅあ!』
『極限、超えてこその仕事。』
『いやいやいや。この仕事ってどっち?どっちのこと言ってるの?!』
『さて。どっち?』
『いやいやいやいやいや。こっちが聞いて―――ちょ、ちょっと……?サァムさん? え?ちょ?冗談だよね?
いい加減にしないと いや、マジ勘弁しt………ギャ ア――――――ッ!!!!!』
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「―――疲れたからって寝てるわ。」
(嘘だ!絶対、確実に嘘だっっ!!)
「まぁ、寝ている人のことを気にしても仕方ないから寝なさいな?」
「いやいやいや!寝てないでしょ確実にっ!!」
「あら。何を言っているのアリス?グリフォンなら今ごろ(血の海に)寝ているわよ。」
「なにか不穏な単語が隠れている気がするっ!!」
「気のせいよ~」
気のせいなんかじゃないはず!
グリフォンの声が聞こえたとかじゃないけど、絶対に気のせいじゃないはず!
困ってハングを見上げるとにこりと微笑んでわたしを寝かせる
「ちょ、ちょっと?ハング?!」
「アリス、あなたは間違いなく疲れています。だから幻聴なんて聞こえてしまうのです」
「え、いや、幻聴って何も聞こえt」
「グリフォンが心配なのでしたら彼女が回復したらこちらに来るよう言いつけておきますよ」
「う、うん………」
「眠くなくても横になっていてください。それだけでも、体は休まりますから
何か欲しいモノがありましたら遠慮なく言いつけてくださいね?」
「あ、うん、わか、った?」
な、なんか笑顔で言いくるめられたというか無理やり押し切られたような気がするっ!
ぐううぅうぅぅぅううううぅ
「……………」
「……………」
「……………」
「~~~~~~~っ!!!
………………ごはん、ください……………」
も、もうやだ!どこかに深い穴があったら入りたい!!
恥ずかしいどころの話じゃないよぅ………
ちらりとハングを見ると目が合って丁寧にお辞儀される
「畏まりました。―――女王陛下、行きますよ」
「えぇ?なんでよ。あなただけが行けばいいじゃないの」
「女王陛下をひとりにしたら何をしでかすか見当もつきませんので」
「失礼ね。」
「いいから、行きますよ女王陛下。」
「いーやーよ!」
「……(ぼそり)」
「!! し、仕方ないわね!ハングがそんなに言うならついて行って差し上げますわよ!」
「そうですか。ありがとうございます。ではアリス、安静にしていてくださいね」
変なお嬢様っぽい口調になって部屋を出ていくティーににこにことお礼を言いながら続いて部屋を出ていく
何を言ったの、ハング………
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「んもう、少しくらいアリスと一緒にいさせてくれてもいいじゃないの。あたくしはなにもしないわよ」
「そうですか?では、その鎌はなんです?」
「………。あんな可愛い子、首にしないほうがおかしいのよ」
「遊び相手がいなくなってしまいますよ?」
「グリフォンがいるわ」
「彼女だけで満足できるのですか?女王陛下」
「……………無理ね。でも、あなただってそうじゃなくって?ハング」
「はい?」
「あなただって、アリスを傷つけたいと思っているのでしょう?
肉体的な意味でも、精神的な意味でも」
「えぇ、否定はしません」
「ならわかるでしょう?あたくしの気持ち」
「えぇ、えぇ。痛いほど、嫌と言うほど理解しております。」
「なら、」
「しかし、私は待とうと思っているのです」
「………待つ?」
「えぇ。アリスが、私の愛しい方が、役持ちになられるまで」
「どれだけの時間がかかるかもわからないのに?
それどころかあの子が元の世界に帰ってしまうかもしれないのに?」
「時間はいくらかかっても構いませんよ。後の愉しみさえ思えばいくらでもこの衝動は抑えることはできます」
「あら、それじゃあ『衝動』とは言わないんじゃなくって?」
「それもそうですね。―――そうそう、もうひとつの質問も答えましょうか。彼女は彼女の世界に帰ることはありませんよ」
「どうしてそんなことわかるのよ?」
「彼女は分かっていないのですよ。
自らが何を失ったのか。自らが何を犯したのか。自らが誰なのか」
「……………どういうこと?アリスはアリスでしょう?」
「そのままの意味ですよ。彼女は確かにアリスです。名もないアリス。それだけです」
「もういいわ。相変わらずあなたの言葉は意味不明ね」
「そうですか?」
「そうよ。もういいわ、サァムにアリスのご飯を作ってもらいなさい」
「はい。畏まりました」
なにやらブラック的な展開になってしまいました\(^o^)/ナニガアッタシ
顔の見えない人とは?ハングの言葉の意味は?
二人の言う『アリスの忘れているもの』とは?
ついでにグリフォンの生死は?