12幕 『三月ウサギと眠りネズミ』
「不法侵入者は殺して良いんだよな?ヴェイン?」
「……うん。…本当に、不法侵入なら。」
「なら、問題無しだ、なっ!」
「うわあぁっ!」
「避けんなよ、っとぉ!」
「嫌に決まってるでしょ!?」
わたしは少年達に背を向けて走り出す
「あっ!?おいコラ、逃げんな!!」
「殺されるって分かってるのに逃げない人はいない!」
「自殺志願者は逃げねぇよ!!」
「わたし自殺志願者じゃないから!!」
「おら、よぉっ!」
「ひあっ!」
「ハーヴ、外しっ放し~…」
「こいつがうろちょろすんだよっ!」
「わぁっ?!」
え?ちょ?『ハーヴ』?いま『ハーヴ』って言った?
じゃあこの二人が例のグリフォンの喧嘩友達?!
グリフォン、こんなのと喧嘩して生きてるの?!!
「あ………!」
―――なんて考えてたら壁にあたる。
ちょちょちょ?!何で家の中に部屋への扉でも何でもなくただの壁があるの?!
前と左と右は壁、後ろはグリフォンの喧嘩友達(仮)だし。
前後左右逃げ場無し?!!
わたしは慌てて後ろを振り返る。
当然と言うべきか。彼らはわたしから何メートルか離れたところで立ち止まっていた
わたしは壁に背中をへばりつける
「おー。行き止まりか」
「…大丈夫、かなぁ?」
「大丈夫だろ。どうせ不法侵入者だ」
「…っ!」
「ま、せめて即死にしてやるか」
「…ドランクさんみたいにしたらお掃除、大変だもんねぇ………」
「イヤァ~ワルかったデスねェ~。アレはワタシの趣味なのデスよォ」
「……………………は?」
「………?」
グリフォンの喧嘩友達(仮)の後ろから片言のような言葉が聞こえる
彼らはガバッと後ろを振り返る
「コンニチハ。ハーヴ君、ヴェイン君?久方振りデスねェ?」
「…ただいまー…」
「ハイ。お帰りなさい」
「な、なんで……」
「オヤァ?ソレはワタシのセリフですよォ?
帰って来たと思ったらこんなトコロで遊んでますシねェ?
アァ。イエイエ、遊ぶのがワルいワケではナイのデスよォ?
ムシロ少年期のキミ達には必要な事と言えるでショウねェ。
デスが、今回は遊ぶべき相手を間違えたと言っても過言ではないデスねェ?
今日はグリフォンではナク、ワタシと遊びまショウかァ?」
す、すごい饒舌だ……
「ド、ドランクさん…怒ってる、っスか…?」
「ハイ?怒る?ワタシが?ナゼ?」
「怒ってます、よね?」
怒ってる………のか?
顔は笑ってるけど、なんか、ナイフ持ってるし…
「…ドランクさん、怒ってるねぇ~……」
「うわっ!いつの間に?!」
いつの間にか隣りにいたグリフォンの喧嘩友達(仮)にわたしは慌てて距離をとる
彼はそれを何と思ったのか、のんびりとした口調で言った
「あー。ボク、眠りネズミのヴェイン……よろしく…」
よ、よろしくできないよ!!殺されかけたのによろしくなんて無理!!
「えーと…、あっちにいる帽子の人は、ボク達の恩人のー、ドランク…さん」
知ってます。……恩人?
「で、そのドランクさんに押されてるのがー、三月ウサギのハーヴ……ボクの~、兄弟?」
はい。グリフォンの喧嘩友達確定。
「……キミは~?」
「え。あ、アリス…」
て、何で言うわたし?!
「そっかぁ~…よろしくね?アリス…」
グリフォンの喧嘩友達(確定)は、ほわぁ、と笑う
(かっ、かわ……っ!!)
………ハッ!!
だ、騙されちゃダメだ!
この人達はわたしを殺そうとしたんだから!
「…アリス~?」
でも、、、カワイイ……
でも、よろしくしたくない…
「アリス……?」
うっ?!それは反則…っ
反則だよグリフォンの喧嘩友達(確定)……!!
『うわあぁっ!!』
『安心シてくだサイ、じっくりねっとり折檻シてあげまショウ』
『安心できねぇー!!?』
『我侭デスねェ』
『ワガママとは違うと思うっス!!』
声が聞こえて来てそっちの方を見てみたらそんな会話がされていた
「うわーさっきのわたしみたい」
「ねー」
すいません。グリフォンの喧嘩友達(確定)
可愛く癒しな声と表情で言われても今の『ねー』は納得しかねます!!!
わたしはあなたに殺されかけた者です!!
「…………」
「な、なに……」
グリフォンの喧嘩友達(確定)はじ~っとわたしの顔を見る
「んー……ドランクさんが、怒ったからーもう、ボクは襲わない、よ?」
「?」
「…キミは、ハーヴがキミを襲ったから、ボクを警戒しているんでしょう~…?」
ぎく………
…?いやいやいやいや。キミもわたしを追って来てなかったっけ?
「…ボクは『本当に不法侵入なら』って、言ったんだよ~だから、ボクは、悪くない、んだぁ~」
「屁理屈だ!!!!」
何か今までの中で一番聞き捨てならない一言だ!!
「あ~。」
「なに?!」
「今、声ーはっきりと聞こえた~」
グリフォンの喧嘩友達(確定)はまたもやほわぁ、と笑った
(うわうわうわうわうわ……………無理!もうダメ!ムリ………!)
「はわわ~っ」
………………ヤバい。
つい抱き締めちゃった。
どうしよう。
こっから先、どうしよう。
グリフォンの喧嘩友達(確定)は驚いた様な声を出したけどおとなしくわたしの腕の中にいるし。
「あはは~やってるねぇ?」
…………はい?
『上から』声が聞こえた。
天井の辺りから。
上を見上げると排気口からグリフォンがひょっこりと上半身だけ逆さまになっていた
「やっ!アリス」
……今度はわたしの見間違いじゃない。
確かにグリフォンは逆さまになっている
「…なんで排気口からぶら下がってんの?」
「いやぁ~久々だねぇヴェイン」
「スルー?!!」
「ひさし、ぶり~」
「お~。久しぶり~元気してた?」
「う~ん、とねぇ~…元気なんだけど~、ハーヴのせいでちょっと危うかったなぁ~…」
え。ちょ、人を無視してなに友達を殺しそうになってた人と話してんの?!
……あ。グリフォンわたしが殺されかけたの知らないんだ。
「はぁ~そりゃ大変だったね?」
「うん~」
「ま、ハーヴだしね。」
「ハーヴだもんねぇ~」
え。なにそれ。あのツンツン髪の方のグリフォンの喧嘩友達(確定)ってそんなモンなの?
殺されそうになったけど何か酷い扱いだ…
「あー。アリスも大変だったね?」
「へ?」
「殺されそうになったねぇ?」
「知ってたなら助けろよ!!!!!!!?」
「へ……?」
「ほぇ………?」
「…………あ」
やば………つい口調が乱暴に…
「あ、」
どうしよう、どうしよう…
嫌われたかな?絶交される?
というか、何でここでこの口調が出るの?!!(この思考その間約0.1秒)
「あっはははははははははははははははははははははははは!!!!!!」
「な、なに?!」
「イイ!」
「は、はいぃ……?」
「いいねアリス!これはあれだね?アリスの知れざる一面?っていうの?イヤイヤ、なんとも面白い」
…え、えーと………つまり、呆れられてもなく、引かれてもなく、……えと、面白がられてる?
………それはそれでなんか嫌だな…。
いや。贅沢って分かってるけど。
…むしろさ?おとなしい女の子(自分で言うか)のあんな一面を見て笑い飛ばせるグリフォンは凄いと思うんだ
…あれ?逆さまになっててあそこまで笑えるグリフォンの腹筋って鋼鉄?!
そんなことを考えていると、グリフォンの喧嘩友達(確(まだやるか)…以下ヴェイン)はこちらをじーっと見ていた
「アリス~、急に大声を出すと、ビックリするから~おっきな声を出す時は~教え、てね?」
「そうさしていただきます!」
ダメだ!この上目遣いには逆らえないっ!!
わたしは思わず腕の中にいたヴェインを抱き締める腕の力を強くした
「はわわわわ~」
『あ!あいつ、ヴェインに何しやがる!!』
『ナニって、抱き締めてマスねェ』
『分かってんなら行かせてくださいっ!オレのヴェインが……!』
『ヴェイン君はキミのじゃナイでショウ…』
『大丈夫っス!ヴェインはオレを必要としてるからオレのヴェインでいいんス!!』
『メチャクチャですねェ~…
アンマリ弟にベッタリだと煙たがれマスよォ?』
『う…………っ!』
…………うわー…
あのツンツン髪の少年ってブラコン…?初めて間近(?)で見た!
「はぁ~っ!ハーヴも相変わらずブラコン全開だねぇ!?」
「……助かるけど、正直ちょっと困る、んだよねぇ~~」
「だろうなぁ」
はは、とグリフォンは苦笑してヴェインは少しだけ顔を顰めている
「…ボクは、アリスの方がいいやぁ~」
「ほぁ?!」
「お。ヴェイン、アリスを気に入った?」
「うん~ダイスキ~
可愛くてー小っちゃくてーほわほわしてるー」
ちょ、ソレまさにキミのこと……
すっごいカワイイしわたしの腕に収まる程の背(わたしと同じくらい?)だし。
なんか一緒にいると和むし
なによりカワイイし!!
「後、落ち着きのないところはハーヴにそっくりだけどーそこも、いいなぁ」
「同じ落ち着きがないのでも暑苦しい少年とカワイイ女の子とじゃ印象違うしね」
「ねぇ~」
『オイこらグリフォン!
誰が暑苦しいって?誰が』
『キミに決まってイルでショウ。そもそも、話しながらワタシと殺りあうなんテ余裕デスねェ?』
「その通りだよ、暑苦しい熱血のブラコンハーヴ君。
そしてドランクさんに失礼だから集中しろ。」
『なんか酷ぇ評価が聞こえた!!』
『間違った評価ではナイですネェ』
『ドランクさんも酷ぇ!
しかも空耳じゃなきゃ何か命令された!?』
「アリス~、グリフォン…ここから離れて外に行かない~…?」
ドランクさんとやりあっている兄弟はどうでもいいと言う様にヴェインは言い出した
「ん?そうだね。アリス、戻ろっか」
「え。この二人放っておいていいの?」
「いいのいいの。平気平気。」
「そもそもここって行き止まりだからこの二人をどうにかしないと出れないよ?」
「…その為の排気口ー」
「へ。」
「行き止まりに見せかけて、実は上から逃げられるんだよ。」
「排気口という名の脱出口ー」
……………
排気口って、その為にあるものだっけ?
何か使い方色々違くない?
「さ。行くよ。ほら、アリス捕まって」
「はやく~」
はやっ!
ヴェインももう登ってるし!
「ほいっと」
「うひゃあっ!」
「アリス~どうせ叫ぶなら『きゃあ』とかもうちょっと可愛らしいのをきぼん…」
「嫌だよ!」
「ちっ」
グリフォンはわたしになにを求めてるの?!
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「つ、疲れた……!」
「うわ、体力ないなぁ。アリス」
「うん~」
「うるさいなぁ!匍匐前進なんて慣れてないんだもん!!むしろ慣れてる方がある意味凄いよ!」
「あたしはサァムさんや宰相さんから逃げる為によくやってるんだけど…?」
逃げるって、グリフォンサンはなにか悪いことでもしてるのでしょうかっ?!
「ボクも蜂とか、熊とか、禿鷹から逃げる為によくやってるなぁ~」
ヴェインは匍匐前進を『よくやる』ほどサバイバルな環境にいるのっ?!
も、だめ…何かこの人達ツッコミが追いつかない……
そして常日頃そんなことになってるあなた達と一緒にしないで!!
ガーデン用の椅子にぐったりと寄り掛かっていると、またフッと周りが暗くなった
「またぁ?!」
「ふはぁー。今回は昼が短かったかー」
「…さっきも一度夜が来たから、『次の日』になったんだねぇー」
「だねぇ。あーあ、またココでジッとしてるか」
「グリフォン、仕事大丈夫?」
わたしのせいで帰るのが遅れた訳だから少しばかり罪悪感がする
「ん。問題は(多分)無いよ
アリスの護衛以上の仕事なんて精々女王のお茶菓子の用意か掃除しかないもん」
「そっか。なら平気だね」
………何か『護衛』とか冗談じゃない様に聞こえてきた……
本当にココは危ない。
以前は一気に出して苦労したので月一を心がけたいです………
◇ヴェイン[[眠りネズミ]]
おっとりした天然キャラで三月ウサギとは双子の兄弟
山吹色のふわふわの跳ね毛とおっとりのんびりマイペースな印象がかわいい弟にしたいタイプ
三月ウサギからは護身用に仕込杖を持たされている
常に眠そう…と言うか万年春眠している
寝ているところを邪魔されると性格がガラリと180度回転し、不機嫌になる
帽子屋の家に三月ウサギと一緒に居候をしている
*****
◆ハーヴ[[三月ウサギ]]
眠りネズミとは正反対の性格。
ブラコン
鋭く勘がよさそうな印象があるが、実は結構鈍い。
グリフォンとは喧嘩友達
見かけによらず甘いものが好き(ほぼグリフォンに餌付けされている状態)
自分と眠りネズミを家においてくれている事で帽子屋には恩を感じている
眠りネズミを猫と蜥蜴から護る為に、大鎌を持っている(あと趣味のため)