10幕 『いかれたお茶会へようこそ』【※】
「どうデス?ワタシが入れた紅茶は」
「いやぁ~さっすがドランクさん!おいしいよ。ね、アリス!」
「う、うん・・・。」
「ソレは良かった。彼女が作ったもの以外にもお茶菓子がアルので、どうぞ」
「ど・・・どうも・・・・・」
な、何なの?この状況・・・・
どうしてこんな状況になったんだっけ・・・?
少し思い返してみよう。うん。
〓〓〓〓〓
あれから、何回も夜やら昼やら朝やらが来て、
流石にヘンテコな時間の進み方に慣れてきた頃、ハートの城の使用人の人達とも仲良くなっていて、
ハングやティーとはため口と言うか、少しは砕けて話せるようになった
ちなみにこの後グリフォンの仕事が終わったら一緒に遊ぶことになっている。
「こんにちは、アリス。」
「あ、ハング」
「この城での生活には慣れましたか?」
「うん。兵士の人もメイドさんも優しいし。ハングは?仕事?」
「そうですか。ならよかった。
えぇ。私はこれから書類を女王陛下の下へ、持っていく所です」
・・・・・やっぱ笑うと綺麗だなぁ・・・
「アリス?」
「え、あ!な、なに?」
「い、いえ・・・なにやらぼぅっとしていたようなので
風邪でしょうか?」
「ううん。なんでもないよ」
「そう、ですか?無理はしない方がいいですよ?」
「ん。平気だって」
「ですが・・・」
ハングは確かに気が回って良い人なんだけど・・・・・
ちょっと下手に回りながらも強く押してくるところが少し困り物・・・・・・・
「アリス~!」
「グリフォン」
「仕事終わったから遊びに行こっ!
城の中には長い間いるけどまだ外にでてないでしょ?」
「う、うん。」
「ほらほら、宰相さんは女王の世話があるでしょ?」
「世話・・・・って」
「私は女王陛下を見張り兼補佐、ですから」
ハングは苦笑してるけど、実際と苦笑で済む問題じゃないと思う。
そこを苦笑だけで済ますなんて・・・・
「ハングって、優しくて心が広いんだね」
そういったら前にいる二人は唖然とした
「や、優しい?私が、ですか?」
「・・・・・・・・・ぷ、」
「・・・・・?グリフォン?」
「あっはっっっはははははははははは!宰相さんが優しいって?
傑作だよ!!やっぱりアリスは面白い!」
・・・・・・・・・・・・大爆笑された。
「わ、笑うことないじゃん!」
「ごめんごめん!!
そ、それにしても、ハングさんを優しいって言うとは・・・
この人の仕事風景を見たことがないんだね!?」
「・・・・・・グリフォン?
私が優しくないというのは認めますが、『傑作』とは如何なものかと思いますよ?」
「あ、あはは~・・・・・・・・・い、いってきまぁっす!!!!」
「わ?!ちょ、引っ張らないでよグリフォン!!」
にっこりと絶対零度のような笑みを向けられたグリフォンは、
逃げるようにアリスの腕を引っ張って廊下を走る
そのグリフォンに背中にハングの声がかかる
「グリフォン、せめて刃物くらい持って行きなさい!!
アリスが殺害されたらいくら貴女でも処罰されますよ!?」
・・・・・・・・・・・・・・・後ろから物騒な言葉が聞こえたのは気のせいでしょうか?
気のせいだよね?
気のせいって言って・・・!
「はっ、なめないでよ宰相さん?人ひとり守れないグリフォンさんじゃないよ?!」
そう言って隣(頭上?)からチャキ、と音がしたと思ってグリフォンを見たら、
ナイフを指の間に挟んで、なんちゃって鉤爪を作っていた
【ここに住んで分かった事1.ここの人たちは平気で凶器を持ち歩いている】
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ハートの城を出て森に入った頃、ようやくアリスは腕を離してもらった
どこに向かっているかは知らないけど、
未だ先程のナイフをいじりながら歩いているグリフォンの隣を歩く
「グ、グリフォン・・・?いつもそんなの持ってるの?」
「ん?これだけじゃないよ?もっといっぱい持ってるけど、見る?」
「お城に・・・・だよ、ね?」
流石に今ももっと刃物を持ってるってことはないよね?
「うん?城にもあるけど今も持ってるよ?護身用の武器はあればある程いい!」
グリフォンはそう言ってナイフやら小刀やら刃物をバラバラとあちこちから取り出す
「アリスもひとつくらい持っとく?あると便利だよ?」
「い、いらないいらない!!!!そんなの、持ってても使えないし!」
「そ?残念。」
肩を竦めるグリフォンにアリスはごめんね、とだけ言って冷や汗を掻きながらも苦笑する
(あれ?)
「アリス、どうしたん?」
「ん・・・・・なんか、鉄臭くない?」
「あー確かに。
もう嗅ぎなれた匂いだから気にならなかったよ」
「へぇ~?
ひゃっ・・・・・・・・・?!」
「アリス!?」
「グ、グリフォン・・・・・・・・・・・・・・ち、血が・・・・」
アリスが見たのは、屍の山、とは行かないが、死体や人間の一部が散乱している血の海状態だった
グリフォンは慌ててアリスの前にたって見えないように目を覆うが、遅かった
アリスは、目を見開いて信じられない光景を見たように地面に座り込む
「ごめんアリス。タイミングが悪かったね」
「あ、あああ、あ・・・・・・・・」
「わっわ?!アリス!!」
普段見る事のない光景を見せられて気絶してしまったらしいアリスをグリフォンは
慌てて血で汚れていない木に寄りかからせてため息をついた
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・くおらぁ!出て来いドランク!!」
グリフォンがそう叫んだ後、
暫くして草むらからガサガサと帽子を被り、奇抜な格好をした青年が出てきた。
「おやァ?誰かと思ったらグリフォンサンでしたか
どうしましタ?随分後立腹のようですガ?」
「そりゃそうだよ!今日はあんたのとこ行くって言ってたでしょーが!」
「おや?ソウでしたっけ?」
「そうだよ。一昨日と今日で一通ずつちゃんと兵士にもた、せ・・・て・・・・・・・
ああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
「?」
「ちょ、ちょ!ドランクさん?!そこの死んでる人ウチの兵士じゃん!!」
「エ。エェ~ソウですよォ?てっきり女王カラの刺客かと。」
そこに横たわっている死体を指差して青褪めるグリフォンとは対照的に、
ドランクと呼ばれた彼はいっそ清々しい程あっけらかんとしていた
「ねぇ、一昨日もウチの兵士来た?」
「?エ~ェ。しっかりと始末しましたケドねェ~」
「あ~・・・・・ドランクさぁん。それ、あたしが手紙持たせた兵士だ」
「おやオヤァ・・・・それは残念でシタ」
「反省してよ・・・・・・・・それよりも無差別殺人をどうにか
・・・・・いや。もう遅いよね。うん」
「酷いですねェ~マァ、事実だからナントも言えませんが。
ソレより、ソコの少女は誰デ?殺してしまっても」
「いい訳あるかぁ!!!!!」
グリフォンはドランクに蹴りを繰り出すが、見事にかわされる
体を捻ってもう一発繰り出すがまたかわされる
「チッ!
・・・・・・・・・・・もういいや。とりあえずこの子をドランクさんのとこに運ぶからね。」
「ハイハイ。」
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・・・・・・・・・・・・・・あれ?
「ここ、どこ?」
気づくとわたしは見も知らない部屋の中にいて、寝かされていた。
「さっきの、夢?」
血塗れで、バラバラで、一面真っ赤で、真っ黒で、緑が赤で・・・・・・・・
夢にしてもやけに実際にあった出来事のようにリアルだった。
とても恐ろしい光景。
夢とはいえ思い出したら背筋がぞっとしてきた
がたんっ
「ひゃあぁっ?!」
「あ。アリス!起きた?」
「グリフォン・・・・・・・?」
「あぁ。よかった!ここについた途端倒れちゃうから、心配したよ・・・
だって余所者はあたし達より脆いって聞いたから、もう目ぇ醒めないかと思った・・・・・」
グリフォンが窓から入ってきて、わたしの寝ているベットまで駆け寄って突っ伏す
それだけで随分心配をかけてしまったのだと分る
(何故窓から入ってきたのかはつっこまないで置こう)
「ありがと。心配かけて、ごめん。」
「ううん。いいって」
「あの・・・ここって、どこなの?」
「あぁ。ドランクさんの家って言えばいいのかな?」
「ドランクさん?」
「ん。ドランクさんって言うのは・・・・・・・」
「アァ。起きましたカ?」
訳がわからず混乱している所に知らない名前が飛び出してきて、
さらに奇抜な帽子を被った人がドアあたりからヒョコッと顔を出す
「これがドランクさん。」
「コレ、とは酷いですネェ~
初めましテ。ワタシは[いかれ帽子屋]ことドランク、とイイます」
その人は少し不自然な話し方とともにクツクツと笑い、こちらの方を向いて一礼をしてアリスを見る
帽子屋帽子屋・・・・・申しや?(違
帽子屋ってティーが嫌いって言ってた人?
悪い人には見えないけど・・・・・
ちょっと服とか趣味が変っぽいけど。
気づいたら帽子屋さんがじっとわたしの事を見ていた
「え。あ、アリス=リデルといいますっ」
「エ~ェ。アナタの事は彼女から聞いてマスよ」
「グリフォン?」
「ハイ。彼女には随分贔屓にして頂いてマスねェ~」
「あたしは遊び来てるだけなんだけどね~」
「マァ、ソレはソレでソレとしマシて、準備はしてあるのでお茶会にしまショウか」
「「いきなり?!」」
と、いうかそれはそれでそれとするって、どれがどれでどれとど・・・・・こんがらがってきた。
「グリフォンサンもお茶菓子を持って来てくれた事デスし、ネェ?」
「え。グリフォンお菓子なんて持って来てたの?」
「ん?うん。ほら」
そう言ってグリフォンは手に持っていたバスケットを掲げた
「どこにもってたの・・・・?」
「ん~・・・四次元ポケット?」
「四次元ポケット!?」
「まぁまぁまぁまぁ、それは置いといて外に出ようか。」
「????」
「ほらほら早く。」
〓〓〓〓〓
・・・・・・・・・・・・・・・・・で、なんやかんやあって冒頭に戻るのだった。
「そういやぁさ、ハーヴとヴェインは?」
「サ~ァ?大方マタ森の中で迷子になってるんじゃあないデスか?」
「うわーありえそうでこわいな・・・・・・」
「デショウ?」
「うんうん。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?
「オヤ?アリス、カップがカラですよ?
オカワリはいりマスか?」
「あ。もらいます」
「ドランクさん、あたしにもちょうだい」
「ハイハイ」
「ねぇねぇ、グリフォン。」
「ん?」
「なんかあっちにいる?」
「ん?ン~・・・・?あぁ、鹿だよ鹿。」
「シカ?」
「いるんだよ。ここら辺にね。まぁ、森だし。
他にも熊とか蛇とか猪とか栗鼠とか山羊とかいるよ」
「ちょ、ちょ!?なんか前半部分こわい動物入ってるよ!?」
「大丈夫。安心してくだサイ、アリス」
「帽子屋さん・・・・・」
「どんな猛獣が出たとシテも彼女がどうにかしてくてマス」
「人任せかいっっっっっ!!!!!!!」
「イヤァ~。ワタシ、殺戮は1日3ジカンと決めてマスのでねェ」
てへ、と舌を出す様はいかにもわざとらしい
「知らないよっ!なにその『ゲームは1日1時間!』なノリ!!?
てか、その3時間もう使い切ったの?!」
「グリフォンサン?ゲーム(殺戮)とは決まりゴトを守ってコソ、愉しいのデスよ?」
「なんか尤もらしい事言ってるけどあんたが言っても説得力が全くないからね!!?」
「アァ。ソウですアリス、ワタシの事はゼヒ『帽子屋』ではなく、『ドランク』と呼んデくだサイ」
「シカトかっっ?!」
な、なんか・・・・
「サァ、言ってみてくだサイ?アリス」
「こら、無視すんなドランクッ!」
(漫才、みたい。)
「アリス?」
「・・・・・・・・あはは」
「「?」」
「あはははははははっ!あははっ!!
おもしろーい!2人とも面白いよ!!」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
グリフォンはドランクとお互いを見た後にアリスのほうを見て、ぽつりと言った
「笑った。アリスが、笑った・・・・!」
「ひ、ひどっ・・・・・!わたしだって笑うって!!」
「あはは。ご、ごめんごめん!
仏頂面とはいかないけど城っつーか、この国に来てから笑い顔見てないからねぇ~」
「・・・・・・・・・そう?」
「うん」
そうかなぁ?と考えているといきなりふっと暗くなった
「な、なに?!」
「アー。夜になったンですネェ」
「てかアリスさ、外に出てないとはいえ何回か時間帯かわるの見たことあるんだから、
そんな驚くこたないっしょ」
「ご、ごめ・・・」
「まぁマァ。夜闇の中でのお茶会もまた一興デスが中に入るとしまショウ」
「そだね。アリスー次、朝か昼になったら帰る?」
「え。うん。グリフォンがいいならいいよ?」
「オヤ?もう帰ってしまうのデスか?寂しいですネェ~・・・」
「明るくなったら、だよ。少なくとも夜のうちはいるっての」
「フム。ソウですカ?
てっきりワタシはグリフォンサンがアリスを夜道に連れて行き怪談話デモするものカト・・・・」
「あたしはどんないじめっ子だぁっ!!!!!!!?」
グリフォンは額に青筋を浮かべて蹴りを繰り出し、小型ナイフを投げるが
ドランクは楽しそうにクツクツと笑いながら悠々と避ける
「避けるなぁ!!」
「イヤですヨォ~避けなきゃあたるでショウ?」
「当然だ!こちとら当てる為にやってんだよ!!」
「オォ~こわいコワイ」
「ンにゃろっ!」
ナイフを投げて、ソレを避けてのエンドレスをお茶会用のイスに座って眺めていた
「アリス~勝手に家の中に入っててイイですヨォ~?コチラはシバラク終わりソウに無いのでネェ~」
「あ。は、はい」
もう少しだけあの面白いやり取りを見てみたいって言う気もするんだけどなぁ・・・・
アリスは言われたままに2人を置いて帽子屋屋敷(?)に入っていった
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ひとりで住むには不自由しないのか?と思うほど大きくて広い屋敷だった
改めて屋敷の中を見回してみると帽子、帽子、帽子だらけだった。
「さ、さすが帽子屋さん・・・・・・・・・・」
帽子屋さんということは帽子を作って生計を立ててるの?
・・・・・・・・・・・・・帽子って儲かるの?
「あふ・・・・・眠くなってきた・・・・」
ぐだぐだ(?)全開です
ドランクとグリフォンはいじりいじられ的な関係です
◆ドランク≪いかれ帽子屋≫
奇抜な帽子を被り乗馬服と燕尾服を合わせたような服装
少し狂ったような死んだような目をしている
言葉の所々にカタカナが入っていてかなり不自然な発音をする
グリフォンをよくからかって攻撃されるが、
本人は気にせず軽がると受け流している
ひとりで住むには大きすぎる屋敷に住んでいる
(現在、アリス視点の記録です)