夢の岸
藻が水に揺れ、その周りで、
小魚が尾を震わせている。
谷から湧き出た水が、
命を育んでいる様子に、
私は、引き込まれ、
その水に足を浸す。
サラサラ、サラサラ、
木々が茂り、風が歌い出す。
流れの岸に座り、
その声に耳をすませば、
あの子の声がまた聞こえてくる。
足先の、冷たい水の感触。
あの子が言っていた言葉。
「そんなに、水に入ってると、
足が火照って眠れんぞ」
来るかな……。
あの子は、色が白くて、
足が長くて、笑うと顔が、
くしゃくしゃになる女の子。
来るかな。会いたいな…。
初恋は、もしかしたら、
あの子だったのかもしれない。
来るかな。
私は、今、この夢の岸で、
あの子を待っているところ。
水に足を浸して、
待っているところ……