偽の砂城[偽の盤上]
あとがきにネタバレがあります。
途中でどうしてもわからない人は、ネタバレを見てから読んでみても楽しめると思います。
そこに一人の男はいた。今は近未来の戦争中であった。
だが起きたばかりなのか頭がまわらず何も考えられない。
窓の外は轟音と光が飛び交っている。だんだん意識がはっきりとして自分が基地の一部屋にいることがわかる。
外は銃撃戦、昔見ていた緑の景色はなく、灰色の砂に強い太陽の光がさしていて廃墟の跡すらない。
やがて出撃命令のアナウンスが流れる。
男は精鋭部隊のエリートであり、胸にはいつ作られたのかすらわからないとても古いエリートバッジをつけている。
つまり歴戦の戦士である。
出撃命令により支度を整え錆びたバッジを胸に戦場へと向かう。
精鋭部隊のすさまじい活躍により、領地をひとつ奪還することができた。
男の楽しみはこれであった。活躍により名誉と階級を上げていくことだ。
戦いによる死の恐怖よりも娯楽も何もないこの世の中において多くの人々はそれを楽しく思っていた。
ただ戦争に完璧な勝利などない。死者がでない戦争などない。
曖昧な記憶だが戦いにより男の知り合いが一人消えた。
悲しくなんて思わない。まず知り合いなのかが曖昧である。そして戦争においてこれは普通のことだと思っている。
部屋に戻り錆びた銀色のバッジを眺める。
彼の自信はそこにあり、銀のバッジは男のすべてとも言っていい。
国から与えられた名誉のバッジ、国のため、娯楽のために男は戦う。
ある日戦闘中見覚えのある顔を見た。
胸には錆びた銀のバッジ、それはむかし消えた一人の仲間だった。
彼は敵側にいた。不思議に思ったが男は勘違いだと思い、そいつを他の敵と同様に殺した。
もちろん今回の戦いも勝利である。精鋭部隊のエリートである自分にミスなんてない。
男は今まで一度も負けたことがない。
男は次の戦地へ、勝利へ向かう。
目を疑った。自分と同じ配属に殺したはずのあいつがいた。
胸には錆びた銀色のバッジを誇らしげにつけている。
見間違えではない。確実に彼である。
初めて話を聞いてみると、ぼんやりと起きて出撃命令がでたから来ただけだという。
男は戦いながら考えていた。二つのことを同時に考えている男には当然隙が生まれる。
そしてこの王取り合戦のような戦いにてはじめて敗北を味わった。
敗北とは死である。負けたことのない彼にとってとんでもない苦痛だった。
倒れて意識が薄くなりながらも、自分の積み重ねてきたものがなくなっていくのを感じる。
死とは変な感覚だった。ふわふわした感触に包み込まれていく。
思ってみれば起きる前の記憶がなかった。
毎日が戦いの日々で毎日が同じような日々だった。
自分の思い出、記憶がないことに初めて気づいたのが死の時とは嫌なものだ。
そして起きてから今この時までの記憶が消えていくのを感じる。
思考、感覚がなくなり、目の前が暗くなった。
そこに一人の男がいた。
読んだ後理解できなかった方、小学生の時書いたものを除くと初作品なので許してください。
どうしてもわからない方はあとがきの一番下にネタバレがあります。
この作品はSFです。理解できない人は近未来×将棋を考えながらもう一度読んでみてくださいね!
読んでくれてありがとうございます。
星新一さんが大好きなのでちょっと意識しています。
・ネタバレ
場所の風景としては戦争によって廃墟すら残っていない何も無い砂の星っていう設定になっています。
皆さん将棋盤を思い浮かべてください。砂のような色、戦い以外何も無い場所ですよね。
男はその1部の駒として話にでています。
国→プレイヤー
出撃命令→持ち駒を出す
死→敵の持ち駒となる
敵の持ち駒となる時、記憶が残っていてはいけません。
それを表すため、「男は1度も負けたことがない」と途中に書いたのですが、遠回しすぎましたよね(笑)
負けたら(死ぬと)敵の持ち駒となり、記憶を消されるため、負けることを味わった記憶があるわけがありません。
そんなわけで、この物語は主人公(男)の盤上に持ち駒として出されてから、敵の持ち駒になるところまでということになります。
ゲームが終わるまでこの話はループします。1番はじめの文と終わりの文を見ていただければわかると思います。
ひとつ言っておくと、将棋の世界を再現しているものであり、将棋の世界として作っていません。
これはSFです。




