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【轟 羽月視点】

久しぶりに遊ばね?つか遊べ、と友達に誘われてっつーか脅され何故か水族館にいる俺。


休日という事もあって水族館には家族連れや恋人達が溢れていた。


何が嬉しくて貴重な休日を男二人でしかも水族館で過ごさなくちゃならねぇんだ。どうせなら俺は稀世先輩と水族館に来たかった。


今頃、稀世先輩は何してんのかなぁ。



「おい。折角この俺が誘ってやったんだ!もっと楽しめ騒げ!!」

「無理があるだろ…急に朝から電話があったと思ったら何で水族館なんだよ。普通に昼飯だけとかでも良くね?水族館とかは彼女と来いよ」

「うるせー馬鹿!言われなくてもっ分かってるよ!……うぅ!!」

「急にどうしたお前?!」



ふれあいコーナーでナマコを触りながら泣き始めた男に周りの視線が集まる。


絵面的に知らない人のふりをしたい。


そっと距離を取ろうとするが、ガシッと腕を掴まれ逃げ切れなかった。

ナマコを触っていた手で服を触るなとか言ったらもっと泣いちまうかな…コイツ。



「俺だってなぁ!彼女と…っ、あいつとラブラブして来たかったんだよ!けど、…フラれたから仕方ないだろ畜生!!」

「え、お前…フラれたの…?」

「問い掛けるな!あいつと行こうと思って用意した水族館のチケットをまさかお前に使うとは思わなかったよ…!!」

「それは…その、災難だったな…」



一昨日、他に好きな人が出来たからごめんねと軽く言われ突然フラれたらしい。


彼女と出会った思い出の水族館、そのチケットを付き合って一周年記念にと友達はウキウキして買ったその日の夜にフラれたという悲しき出来事。


折角買ったそのチケットを捨てるのにも躊躇われ、苦渋の決断の末俺を誘ったのだと今度はヒトデを触りながら話された。



「うぅ…っ、仕事が忙しくて確かに最近はデートとかしてなかったけどさ!けどさ!ううっ…」

「仕方ない…今日は夜まで付き合ってやるからもう泣くなよ。な?」

「轟…、やっぱり持つべきなのは優しくてイケメンな友だよな!今日はテキーラ飲んでやる!」

「テキーラは駄目」



少し回復した友達がイルカを見て癒されたいと言い出し、イルカショーを見る為にふれあいコーナーを出た。


ちょうどショーが始まる五分前で会場は賑わい始めていた。一番前の席では水飛沫で濡れたい子ども達がレインコートを着て座っていた。


そこには子どもだけじゃなく、大人も混じっていたが殆どがレインコートを着ている。


全身濡れが大丈夫な人達はレインコートを着ていない。でもそれも数えると十人くらいだ。


ここのイルカショーの水飛沫が凄いというのはテレビのCMでもアピールされていた。

それでもレインコートを着ていない人達はかなりの挑戦者だな。



「あのカップル…やけに輝いてんな。けっ…カップルなんて全員別れてしまえ…って、あ?なぁ、あれって安心院編集長じゃね?」

「は?んな訳ね…………嘘、稀世先輩?」



一番前の席で一際目立っている一組の男女。


レインコートを着ていないのもあるけど、その男女がいる席の周りは何故かキラキラとしていた。


後ろ姿しか見えないがすぐに分かる。


あの綺麗な後ろ姿を見間違う筈がない。

あれは稀世先輩だ。じゃあ隣の男は?となる。



(彼氏…違う違う絶対に違う。だって稀世先輩、今は彼氏いないって情報あるし!!)



俺の気持ちがお見通しの影の協力者、佐波先輩と真昼先輩に教えて貰った情報によれば稀世先輩はここ数年、彼氏がいないと言っていた。


あの男はただの友達だ安心しろ大丈夫だ。


イルカショーを見て癒される筈が逆に落ち着かない心境になっている。



「うわー…安心院編集長とあの男、超美形カップルじゃん。何か輝いてんな…」

「カップルじゃねーよ絶対!あり得ねぇ!!」

「うお?!そ、そんなに怒るなって…そうだったな。お前って安心院編集長にぞっこんラブだったよな…………あ」

「な、何だよ?あ、って…あ」



稀世先輩が男にあーんをしている…?!


目を擦ってもその光景は変わらず、二人の周りに漂うハートまで見えてきた。


手に持っていた水族館のマップを落としたのと同時に職員の合図で三匹のイルカが高くジャンプしてショーが始まった。


稀世先輩と男はイルカを見て楽しそうに話している。ハートが見えるんだけど?!



「イルカ超可愛い…癒されるぅ…」

「なぁなぁ?!あの二人どんな関係だと思う?!ヤバい関係なのかな?!」

「今の俺にカップルという存在は毒でしかない。よって考える事を放棄する」

「はぁ?!」



イルカが鼻先で高い位置に吊るされているボールに触れると歓声が起こる。


その次にイルカが水槽の際を泳ぐと水飛沫が上がり、一番前の席へと直撃。

その水飛沫で濡れた子ども達の楽しそうな声が会場に広がった。


勿論それは大人達も楽しそうな訳で、稀世先輩と男も濡れたお互いを見て笑っていた。

あれは完全にカップルの雰囲気じゃねーか!


まだ決まってない!か、な、り!仲の良い友達の可能性もある!あれ…それってカップル?



「ではここでアシカのルルちゃんにも登場して貰いましょう!ルルちゃんと一緒に輪投げをしたい人はいますかー?!」



ステージの奥からアシカが出て来ると盛り上がる会場、輪投げをしたい子ども達が手を元気良く挙げている。


その勢いに負けないくらい手を挙げる一人の男。


水族館の職員が選んだのは子どもと女子高生とその男。嬉しそうに男は水槽の近くへと行く。



「今日はどなたとご一緒に来たんですか?」

「ワタシの大好きな人と一緒に来マシタ!今日はデートなんデス!!」

「まぁ!幸せカップルですね!ルルちゃん、幸せな二人に拍手ー!!」

「稀世サン、拍手されちゃいマシタ!」



大好きな人?


幸せカップル??


稀世さん???



「あれ。何か目から汗が…」



輪投げが上手くいった男が稀世先輩とハイタッチをしている光景を見た瞬間、目からの汗が勢いを増した。

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