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波乱万丈。

(ま、まさか…ははは。まさかだよ、な…?)



冷静になるんだ私。

ほら、世界には似た人が三人いると言うだろう?

このテレビに映る男がココだとは断言出来ないじゃないか。うんうん、そうだそうだ。


自分の中でそう解決し吹き出して飲めなかった分のコーヒーをまた飲もうとすると取材をしていた女子アナウンサーが目線をカメラへと戻した。



「世界的有名デザイナーの九重 スカイさんですが、今日は九重さんが来月主催するファッションショーの内容をちょこーっと皆様にお見せしちゃいます!」



お前、マジか。


どうやら私が先日友人になった男はオタク魂が凄まじいイケメンだけじゃなく世界的有名デザイナーという肩書きまで持っていたようだ。


テレビに映るココの目を見るとあの綺麗な碧眼ではなく茶色の瞳に変わり、あの存在感があった眼鏡もなかった。


…あれってもしかして変装だったん?



「気付けよ私!!!!!」



世界的有名デザイナーにストーカーとか言っちゃったよ。ヤバいよ。


一時は警察に連絡しそうにもなったし。

あのまま勘違いしてたら、世界から大事な天才デザイナーを奪うところだった。あっぶな。


自分が流行に遅れている事は分かっていたが…これからはもう少しテレビや雑誌をマメに確認しとかなければだな。


少女漫画編集部に勤めてからは少女漫画に関係する事しか集中してなかったし。



「休日の朝からこんな刺激はいらん…」



なんとまぁ、日曜日のほのぼのとした休日の朝から嫌なサプライズである。これ以上、何か心臓に悪い事をされたら寿命縮むぞ私。


朝食を食べ終えてからセーターとジーパンに着替える。持ち物は財布と携帯のみ。


仕事柄、不健康な生活をしていると自覚済みな為、休日は必ず散歩を心掛けている。

今日はテレビという不整脈の原因もあった訳だしな。精神ケアの為の散歩に行こう。


どの散歩コースを行こうかなんて考えながら扉を開けた。



「おはようございマス稀世サン!会いたくて来ちゃいマシタ!!」



静かに扉を閉めた。


今…何か信じられないものを見たような…?


最近、前世関連の事が立て続けにあって疲れてんだな。有休でも取って温泉に行こう。


癒しが足りないんだ。

だから妙にキラキラしたものが見えたんだ。



(よしよし。今日の散歩コースは公園だな。)



悩んでいた散歩コースを決めて再び扉を開ける。



「おはようございマス!良いお天気なので一緒にお出掛けしまショウ稀世サン!!」

「幻覚じゃなかったか…」



目が痛くなるくらいのキラキラ笑顔を浮かべ、ピンク色の薔薇を持つココ。


二日前とは違う眼鏡、服装はスーツではなく動きやすいカーディガンとチノパン。

髪もテレビに映っていた時はオールバックだったが今は前髪を下ろしていた。


この姿であればデザイナーの九重 スカイだとはすぐにバレないだろう。しかし、だ。



「ココ…敢えて聞く。どうして私の家を住所も何も教えていないお前が知ってる」

「そこはチョチョイ!とそういうのが得意な友人に頼みマシタ!!」

「それは犯罪だ馬鹿者」



稀世サンに馬鹿と言われマシタ!と感激している様子のココは無視し、さっきからココの後ろに静かに立っている男に意識を向けた。


きつく締めたネクタイとシワのないスーツ、完璧な七三に分かれた髪型から真面目な雰囲気が一目で分かる。


目が合うと素早く九十度の挨拶をされた。分度器で測りたいくらい綺麗な角度だ。



(ワタクシ)、九重の秘書をしております常磐(トキワ)と申します。本日は社長がどうしても稀世様とデートがしたいと駄々をこね…んん、失礼。申しまして…馬鹿で迷惑で馬鹿な社長で大変申し訳ありません」

「常磐!アナタに馬鹿と言われても全然嬉しくありまセン!稀世サンが良「黙れ変態。朝から女性の家に連絡もなしに行くとは何事です?馬鹿なんですか?馬鹿なんですね。しかも付き合ってもいない女性、それに一方的な片思い…究極の馬鹿の貴方に処方する薬はありませんね御愁傷様でございます」

「……おぉ」



先日のココの息継ぎなしの愛蘭語りも凄かったが上には上がいたようだ。


常磐さんの息継ぎなしの毒舌につい感心してしまった。あのドM認定されてるココが震えている。


すっきりした感じの常磐さんが胸に手を当て、さっきまでの無表情だった顔が一瞬で笑顔に変わる。


イリュージョンみたいだな。



「どうなされますか稀世様、私がこの馬鹿を今すぐにでも持ち帰…んん、失礼。連れて帰る事も可能ですが」

「稀世サン…」



常磐さんがココを持ち帰ると言った事も若干気になるが今にも泣きそうなココが目に入ってくる。


だから何度も言っているだろう。



(私は動物には弱いんだ…!!)



体が小さくない、しかも男前な筈のココが震えた小動物に見えてきてしまう。

何だこの現象は…本当に有休を取らなければ色んな男が小動物に見えて来そうで怖い。


休もう。癒しを求めて休まなければ。



「…来る時は必ず連絡しろ。分かったら返事!」

「ハ、ハイ!稀世サン!!」

「お優しいのですね稀世様は。私でしたら富士山の頂上からバンジージャンプさせますよ」

「稀世サン助けて下サイ!この常磐という男は恐ろしい悪魔なんデス!!」

「はは…」



本日の休日はゆったりまったりとは程遠い、波乱の一日になりそうだ。

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