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【天ヶ瀬 雪音視点02】

彼女がいたのはこことは全く違う異世界。


空にはドラゴンが飛び交い、草木や動物達も人間と同じように感情や言葉を持ち、陽気な妖精達は踊り、人々は魔法を使う世界。


ビルが建ち並び道路には大量の車が走るこの世界とは何もかもが違う。



「マリオンは…あれからどうしたんだろぉ…」



彼女が存在したその世界には「俺」も存在した。

正しくは「前世での俺」。


俺は「アラフ・レジャーラン」っていう人の生まれ変わりで、前世の記憶を持って生まれた。

高校の中間試験勉強中に寝惚けて机に頭をぶつけた時に思い出した。

記憶で混乱した頭では勉強なんか集中出来る筈もなくて、次の日の試験結果はボロボロ。


人生で初めて赤点を取った瞬間だった。


記憶に対して冷静になった頃、記憶に出て来たマリオンという女の子が誰よりも綺麗で俺は彼女の絵をすぐに描いた。


たくさんの人を惹き付ける赤い髪と瞳。


記憶の中で笑う彼女は輝いていて、「前世の俺」とも凄く仲が良くてかなり嬉しかった。

それなのに、「前世の俺」でもある「アラフ・レジャーラン」はマリオンを避けていった。


「アラフ・レジャーラン」はマリオンが好きだった筈なのに、マリオンより「あの子」の言葉を信じて彼女を追い詰めた。


俺が好きな赤い髪を悪魔の色とまで言って。


「アラフ・レジャーラン」を含め、たくさんの人に追い詰められたマリオンは理不尽な罪を言い渡され最後は国を追い出された。


その後の彼女の人生を俺は知らない。


彼女の泣き顔なんか見たくなくて、あの綺麗な笑顔をまた見せて欲しくて…俺の描く紙上の彼女は笑顔だけ。



「君は今どこにいるのー…」



俺みたいに生まれ変わったのかな。叶うなら記憶の中だけじゃなくて現実世界で君に会いたい。


漫画家だからそういう夢は捨てられないんだ。


あり得なくても少しの可能性があるなら「いつか」を信じたい。

彼女を泣かせるしか出来なかった「アラフ・レジャーラン」、俺は君とは違うよ。


俺は好きになった子は大事にするし、かなり尽くすタイプなんだ。

マリオンが去って残酷な真実を知った君達の後悔は何の役にも立たなかった。俺は後悔なんて絶対にしない。



「轟君…ねー。なーんか引っ掛かるんだよねぇ?あの新人君…」



きーちゃんを好きなのは一目瞭然。


でも、ごめんね。

俺が大切だって思う子はもう泣かせたくないし、誰にも渡したくないんだよ。



(んー…まずはきーちゃんに俺を意識して貰わないとなぁ。仕事に影響しちゃうかなぁ…それは嫌だなーううん…。)



俺はきーちゃんの担当漫画家できーちゃんは俺の担当編集者で、とても近くて遠い距離。


きーちゃんがもし俺を男として意識したら俺から離れて行っちゃうのかな…とか色々な不安が頭を過る。


こんなの女々しいって分かってるけど、恋って本当に難しい。



(うー…これじゃ本当に少女漫画の主人公だよ俺ぇぇええ…。)



きーちゃんの事を考えるだけで顔が熱くなるなんて重症だよね。


パタパタと手で顔の熱を冷ましていると机にあった携帯が震えた。表示されていたのは悩みの原因であるきーちゃんであたふた。


きーちゃんから送られてきたメールには簡潔な二行の文章だけ。



《一週間後、忘れるなよ。


ネームはその調子で進めるように。》



やっぱ全然甘くない!と泣きそうになったけどメールにはまだ続きがある事に気付いた。


かなりスクロールして一番下にあった文章。




《頑張ったな。〆切も大事だがあまり無茶はするなよ》



「~~~~~~っっ!!!!!!」



クッションを叩きながら悶える。


もうっっきーちゃん大好き!!!

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