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再訪

高度を上げるとレイミーが妙な事を言い出す。


『ニーチャン、精霊の剣が行きたがってる所があるみたいだ』

「何処だ?」

『えーと、名前はよくわからないけど空中にあるみたいだ。結構近いぞ』


空中…。まさか俺がストーンゴーレムに投げ捨てられた所か?


「分かった。向かってくれ」

『よーし、行くぞー!!』


機体が大きな唸りを上げ、ドンっという音と共に機体が飛び始めた。

地面が凄まじい速度で遠ざかっていく。すぐに雲の上に出た。


真っ青な空にぽつんと浮かんでいる小島のような物が見える。

あれが目的地のようだ。


詳しい速度は不明だがあっという間に真上に到着した。

改めて間近で全体像を見ると縦横300メートルほどあるだろうか。よく下から見つからないものだ。


「またここに来るとはな」

「タイヨウ様、ここって一体…」

「おそらく俺が最初に目覚めた場所さ。すぐストーンゴーレムに見つかって放り投げられたんだけどな」

『私が居なかったらペシャンコになっていたな』


ウインディの言うとおりだ。酷い目に合った。


機体はゆっくり降下し、ほとんど衝撃も無く着地した。

マリカと共に機体を降りるがストーンゴーレムの姿は見えない。


が、ピンポーンと雰囲気に全くそぐわない電子音が鳴り響いた。

やがてゴーレムがゆっくり一体だけ出てくる。


「兵士よ良く来たな!ここを管理するストーンゴーレム1号である」


あの時と声は同じだが態度は正反対だった。

精霊の剣に乗ってやってくるのが正規ルートで、それ以外は全て不法侵入扱いという事か。

まあいいや。


「出迎えご苦労様。早速で悪いんだがこいつを見てくれるか?」

「了解した。…ふむふむ。機体名はX-01エレメンタルソード。各部にかなりの経年劣化が見られるな。自己診断機能が整備の必要ありと判断してここへ誘導したようだ。この程度なら整備完了まで3時間ほどだ!」

「じゃあ頼むよ。休める場所はあるか?」

「うむ、大精霊様を祭った神殿に行きたまえ!」


やがてどこからともなく3体のストーンゴーレムが現れ、全員でエレメンタルソードを弄繰り回し始めた。

後は任せていいようだ。


そこかしこに瓦礫が転がっており、唯一無事な建物である神殿へ向かう。

間違い無い。ここは俺が最初に目覚めた場所だ。


あの時は外に出ることにしか考えていなかったので分からなかったが、入り口から中を見ると真ん中に俺が寝ていた石のベッド。更に奥に祭壇と石像のようなものがある。

この雰囲気は大精霊のものか。とはいえただの古びた石像だ。


「タイヨウ様、これからどうするの?」

「エレメンタルソードの整備が終わったら世界樹へ行くさ」


だがしばらくしてやってきたストーンゴーレムの一言で予定が変更される。


「兵士よ、あの機体にはろくな武装が無い! 調べてみたが銃座は使い物にならんようだ! このまま戦場に出るのは無謀だぞ!」


マジか。銃座を上手く使えば降下艇を撃墜するくらいできるかと思っていたんだが。経年劣化は割りと深刻だったようだ。


「武器は何処で手に入る?」

「少なくともここには無い! スキャン中…。周辺に該当物無し! 後は武器になりそうな物を見つけて機体に合うように改造するしか無いな!」


オイオイ。戦闘機の武器になりそうな物なんてこのファンタジー世界にそうそうあるものじゃないだろ…。

可能性としては黒騎士のミニガンか大砲か?

だが全て自爆で処分されてしまっているし、残っている物は無い。

あったとしても降下艇にダメージを与えられるかは微妙な所だ。


ん? 降下艇、武器、回収できた物…。

ああ、そうか。あったぞ。武器になりそうな物。


太陽が地平線に沈みつつある。今日はここに泊まるとしよう。

明日の行き先は決まりだ。




エレメンタルソードにウインディを宿らせ、音消しと姿隠しをかけてもらったうえでサンディオの町の近くへ降下する。


世界樹からサンディオまで陸路で2ヶ月の道程を休憩を挟みながら半日で戻ってきてしまった。


明らかにオーバーテクノロジーだ。

とはいえ今は非常事態だし、自重しなくても良いだろう。


出来るかどうかチャレンジしてみると、エレメンタルソードはアイテムボックスではなく戦神の武具庫へ納まった。


入っちゃうんだ…。もう気にしないでおこう。


久々に戻ったが町の様子は変わりない。

俺とマリカは冒険者ギルドへ向かった。


「ギルドマスターはいらっしゃいますか?」

「おう、タイヨウにマリカじゃないか。お前ら世界樹へ向かうんじゃなかったのか?」

「ちょっと事情がありまして戻ってきました。…はさみの件で話をしたいんですが」


ギルドマスターはぎょっとすると俺達を奥の部屋へ通す。


「あれがどうしたって?」

「ちょっと必要になったので譲って欲しいんです」

「馬鹿言うな。アレは相変わらず封印指定物だぞ。第一手に入れてどうするんだ? 材質だって分からないままだってのに」

「王都の黒騎士騒動でまた楔形の化け物が出ましてね。その対抗策です」

「お前が黒騎士退治でドロシア王女から特別報酬を貰ったとは聞いてたが、楔形の化け物が現れたとは聞いてないぞ」

「姿隠しを使ってましたからね。黒騎士はあれに乗って王都までやってきたんです。また逃げられたので、今度こそ決着を付けたいんですよ」


これは嘘だ。本当は魔石爆弾で撃墜したが、残骸は母艦からと思われるトラクタービームによって回収されてしまった。

だが宇宙に更に大きな化け物の親玉がいるなんて、対抗策が無い今知らせても混乱させるだけだ。


まだ明かすべきでは無い。少なくとも撃退の目処が立つまでは…。

俺が心配しているのは第二、第三の降下艇だ。


「理由は分かったがどうするんだ? あんなの武器として使える大きさじゃ無いだろ?」


エレメンタルソードの事は明かさざるを得ないか。そこまでは良いだろう。

俺は見せたいものがあると告げ、ギルド裏手の練兵場に行く。


ここなら壁に囲まれているので外からは見えない。

俺はそこで戦神の武具庫からエレメンタルソードを取り出す。


「コイツにはさみを付けます」

「うおああ! なんじゃこりゃああああ!!!!」


うん、まあ驚くよね。大きさ的には火竜と間違えられてもおかしくないし。

しかも明らかに人が乗れる構造になっている。


「世界樹の向こうにある火山で見つけた、伝説の精霊の剣です」

「精霊の剣?! それじゃタイヨウ、お前は」

「精霊騎士です。ちなみにマリカは精霊の巫女です」

「なんてこった…」


しばし呆然とするギルドマスターだったが、サンド湖での騒動やマリカの急成長ぶりを思い出したか、すぐ冷静さを取り戻す。


「初心者講習を終えたばかりのヒヨっ子が3級冒険者でも匙を投げた依頼をこなせた理由がそれか。確かにお前が精霊騎士で、ソイツが本物の精霊甲冑だとしたら納得が行く」

「分かって頂けましたか」

「良いだろう。倉庫の肥やしになるくらいなら役立ててくれ。精霊騎士は世界の危機に現れると聞く。太陽が陰った原因をどうにかしに来たんだろう?」

「そういうことです」

「ハァー…。全く変わった奴だとは思っていたが、精霊騎士とはな」


ギルドマスターはついて来いと言うと歩き始めた。

向かった先は地下へ続く大扉。封印指定物が収められた地下倉庫のようだ。


「えーと、こいつだ。中身を確認して間違い無いなら持ってけ」


頑丈な木箱を開封すると、俺が切り落とした化け物のはさみが現れた。

これで武器が手に入った。あとはもう一度空中神殿へ戻るとしよう。




「兵士よ、なかなか良い物を持ってきたな! 取り付けと出力調整とバランス調整に12時間くれ!」

「流石に仕事が早いな。頼むよ」


空中神殿に戻ると日は沈んでいたが、クローアームをゴーレム1号に見せるとすぐ作業に取り掛かってくれた。

明日の昼前には完成するようだ。


俺達はまた神殿で休むことにした。

なおホムンクルスに宿ったレイミーは健康的な褐色肌が眩しい、赤髪をポニーテールにまとめた元気少女だった。


他の精霊組同様実体がある事の新鮮さに驚き、食事を楽しんだ。

またハーレムの事を話すと自らローテーション入りを希望し、こちらが戸惑う程だった。


なんというか、ホムンクルスによって実体を得た精霊組は皆貪欲である。




翌朝。全ての準備が整った。


クローアームは機体の腹に取り付けられており、それなりの連射速度で光弾を放つことが出来る。

またはさみとしての機能も健在で、標的とした建物の瓦礫をガンガン砕く事が出来た。

できればもう一本クローアームを奪って機体の上側に付けたい所だ。


「兵士よ、また来るが良い!」

「ありがとよ!またな!」


俺は手を振るゴーレム達に礼を言い、キャノピーを閉める。

やがてエンジン音と共にゆっくり機体が浮き上がり、高度を取る。


加速が始まればあとは世界樹まで一直線だ。

高度を下げ雲の下に出ると、遠くに世界樹が見えた。


だが様子がおかしい。根元付近から黒い煙がいくつも上がっている。

そしてその上に見えるのは…。


「タイヨウ様、降下艇が3隻もいるよ!」


どうやらヤバイ状況のようだ。

読んで頂きありがとう御座います。

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