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精霊騎士の相対性異世界ハーレム理論  作者: 神楽坂
第一章 最初の町
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白い部屋

初投稿作品です。よろしくお願いいたします。

気がつくと真っ白な部屋に寝ていた。

ここは夢の中か。


それにしても周囲全部真っ白とは。

最近は仕事に追われる夢ばかりだったからなんだか新鮮だ。


周囲を見回すと、目の前に人型の白いもやが立ち上がった。

丁度人間くらいの大きさだ。


「私はこの世界を管理する大精霊。藤山太陽さん、よく来てくれました」

マジかよ、もやが喋った。


女性のようだがその声は焦りと疲労を感じさせる。

「ごめんなさい、私にはもうどうしようもありません。黄金の魂を持つ者よ、どうか世界に希望を…」

知らない声の女性に話しかけられるなんて変な夢だな。


「今の私から授けられるのはこれくらいです。世界樹を目指して下さい。そして彼らを止めて下さい。どうかお願いします」

そう言うともやは形を失い、部屋には何も無くなった。


俺の戸惑いが言葉になる前に、白い部屋に次々と何かが現れる。

剣、槍、斧といった武器。全身甲冑。

最後に目の前の空中に透明な板がポップアップし、

猛烈な勢いでスクロールし始めた所で意識が途切れた。




「う…いててて」

意識が覚醒する。


そこは石造りの建物だった。

20畳ほどの部屋の中心に石で出来たベッドがあり、その上で寝ていたようだ。


「なんだここ…」

体を起こすと節々が痛い。

こんな硬いベッドで寝た経験など無いのだから当然か。


唯一の入り口から外を見ると、空が白み始めている。

もうすぐ夜明けのようだ。


えーとちょっと待て。どう見ても俺の部屋じゃない事は確実だ。落ち着け、思い出すんだ。


昨日は大きな案件が片付き、久しぶりに定時に上がってゆったりした時間を過ごして寝たはずだ。

しかし次に目が覚めると白い部屋に立っていて、大精霊?と思われる人?に頼みごとをされていた。

次に目が覚めたのがここだ。


うーんわけがわからん。

トラックに轢かれたわけでも無いのに…。


…そういえばここ数ヶ月自炊する時間が惜しくて外食続きだったな。

たまに動悸や息切れもあった。

一度だけだが心臓あたりがピキーンと痛んだ事もあったな。


まさか、昨日は久々に深酒して寝たからそのままポックリってパターンか?

嗚呼否定できない。

というよりそれ以外思い当たらない。


30歳素人童貞で終わるとは限り無く最低に近い人生だ。

いや無職でないだけマシか…。何の慰めにもならないが。


ひとしきり感慨にふけった後、自分の体を見下ろす。

全裸である。

ろくな説明も無く、いきなり見知らぬ場所に裸で放り出されてしまった。


これからどうしようかと思った所で、腹がぐぅっと鳴った。

何もせずとも腹は減る。

生きている証拠だ。


そう、死んだと思ったのに俺は今生きている。

それだけで儲け物ではないだろうか。

ここは一つ長いものに巻かれ、水のように流されてみようではないか。

我ながら素晴らしい考えだな!

空元気とも言うが。


とりあえず何か食い物は無いだろうか。

…そういえば大精霊から最後に何か貰ったんだよな。

あの時透明な板が空中に現れて、何かの文字がずらっと並んでいたような気がする。

服が要るし、食い物もあるかもしれないし、とりあえず手元に何があるか確認しよう。


あの透明な板はどうやったら出せるのだろうか。

…と思ったらいきなり目の前にお待ちかねのモノが現れた。

頭の中で「メニュー」と唱えると出るようだ。こりゃ便利。


一番上にカタカナでメインメニューと書いてあるが、下にはアイテムボックスの項目しかない。

こういう時お馴染みのステータスやスキルはどうした。バグってるのか?


とりあえずアイテムボックスを選択する。

アイテム、武器、防具の3つの項目が現れた。


村人その一が着ていそうな野暮ったいデザインの服があったのでとりあえず着ておく。

ちょっとゴワゴワするが贅沢は言っていられない。


水筒があったので取り出して一口飲む。

ふたを閉めると少し重みが増した。

どうやらふたを閉める度に満タンになるようだ。

魔法のアイテムか? こりゃ便利。


何か食べ物は無いかと思ったが、どうやら何も無いようだ。

そして白い部屋で最後に見かけた物か、武具の類が恐ろしく多い。


武器は短剣、片手剣、両手剣、槌、斧、刺剣、槍、ハルバード、ナックル、鎌、鞭、弓、ボウガン、小盾、大盾。

鎧は灰色っぽい全身甲冑が一つだけで、何処か草臥れている。

時間を掛けて現状を把握する必要がありそうだが、それにしても腹が減った。


唯一の入り口から出て階段を降りると違和感を感じる。

なんだこれは。

雲一つ無い青空がすぐそこまで迫っている。


頭が今まで見た事の無い景色に混乱していると、厳かな雰囲気に全く似合わないビーっという電子音が鳴り響いた。

ドスドスと足音を立てて姿を現したのは、ストーンゴーレムとしか言いようの無い人の形をした巨人。

4体現れたそいつらは俺を指差すと喋り始めた。


「侵入者、侵入者」

「発見、発見」

「排除、排除」

「実行、実行」


いや、ちょっと待って欲しい。

ここはとりあえず自己紹介と名刺交換でもして…。


ガシッと左右から腕を掴まれ、捕まった宇宙人状態になる。

もがけどももがけども我が体自由にならず。


100メートルほどそのまま運ばれると、彼らはようやく歩みを止めた。

「なんで止まるの?…え?」


止まった位置から数メートル先には、地面が、無い。

階段を降りた時感じた違和感の正体が分かった。

この神殿は空中にある。

それも雲の遥か上だ。


「投棄、投棄」

「全力、全力」

「任務、任務」

「完了、完了」


ストーンゴーレムは振りかぶると、あっさり俺を空中に投げ出す。

「てめぇらおぼえてろよぉおおおお!」

俺の叫び声が届いたかどうか、確認する術は無かった。




落ちる!落ちる!落ちる!死んでしまう!どうにかしなければ!


頭ではそう考えるが体は動かない。

風の音が酷い。

寒くて凍えそうだ。

雲に入った。

抜ければ地面はすぐそこだ。

このまま落ちれば確実に命は無い。

だがどうしようもない。

なんてこった。

異世界に来て大地に立つこともなく死ぬとは。

どうしてこうなった。

真下を見ると大地の裂け目が暗く口を開いている。

あそこに落ちたら死体は谷底だ。

あああああああ!誰でもいいから助けてくれぇええええ!!


すると願いが誰かに届いたのか、下からぶおっと強い風が吹いて落下が止まった。

更に何処からともなく女性の声がした。


『妙な気配がするから風穴から出てきて見れば…。おい、しっかりしろ。…駄目か。なら仕方ない。こんなサービス今回だけだぞ』


混乱の極みにある俺の目の前にメニュー画面が現れ、アイテムボックスが選択された。

鎧の項目にある全身甲冑が選択されると、再び声が響く。


『これでいい。さあ、唱えろ。お前自身の言葉でな』


俺はその鎧を見た瞬間、頭の中に浮かんだ単語をそのまま叫んだ。

「着装!」


俺の言葉に反応したかのように、

目の前の虚空からずるりと全身甲冑の背中が現れた。


背面装甲が大きく左右に開き、俺の胴体を包み込むように装着される。

腕と足も同様に甲冑に覆われ、最後にやや乱暴に兜が覆いかぶさった。

胸部に埋め込まれた宝石がかすかに緑の色を帯びると風が収まり、俺の体は再び落下し始めた。


「やっぱ落ちるのかよおおおおお!!」

『落ち着け、死ぬことは無い』

「そんな事言ったってぇえええええ!」


ドォォォォオオン!!!!

衝撃が全身を貫く。


俺は背中から地面に叩きつけられ、小さなクレーターが出来た。

「い、生きてる…」


信じられない。

あのとんでもない高さから落ちたのにまだ生きている。

嗚呼、神よ感謝します。

これからは毎朝祈りを捧げます。

名前は知らないけど。


『大丈夫か?』

耳元から女性の声がした。


「ああ、なんとかな…。誰か知らないけどありがとう。俺の名前はタイヨウだ。アンタは?」

『風の精霊だ。名前は無い。お前が付けろ』

「ええと、じゃあウインディで」

『ウインディか。ふふ、悪くない』


あれ、なんだこの感覚。

暖かいような、嬉しいような。

こそばゆい感じだ。


『そ、それで? 怪我は無いんだな?』

声をかけられると、妙な感覚は霧散した。

今のは何だったんだろうか。


とりあえず立ち上がって改めて体を確認するが、どこも痛くない。

いつの間に現れたのか、視界の左上にある赤いゲージが9割がた減っている。

すぐ下の青いゲージが減少するのに合わせて、少しずつ回復しているようだ。


「大丈夫だ。ただ視界の左上に赤と青のゲージがあって、赤が底を尽きそうだがじわじわ回復してる。その下の青のゲージは満タンから少しずつ減ってるな」

『私の魔力を使って精霊甲冑の耐久力を回復させてるからな』

「精霊甲冑?」

『今お前が着てる鎧だ。こいつはなかなか居心地が良い。

しばらく宿っておいてやる』


見た目はくたびれた灰色の甲冑なんだが、空から落ちても無傷だったり、修復機能が付いていたりとトンデモ性能なようだ。

いきなり異世界に放り出されて頼れる物は少ない。

有難く使わせてもらうとしよう。


少しだけ明るい気分になり、周囲を見回す余裕が出来た。

「それで、ここはどこなんだろう」

『私がいた風穴のすぐそばだ。魔物の気配は無いな』

ならしばらくは安全か。


さて、これからどうするべきだろう。

とりあえず命の危険は去った。

魔物が存在しているらしいが今は気配無し。

とりあえず第一村人に接触したい。

町人ならなお良い。

飯を奢ってくれたら靴を舐めても良い。

…いや、流石に言い過ぎた。


そういえばウインディは気配を探れるのか?

「ウインディ、周囲に人間の気配は?」

『今は無い。だが一日に一回か二回はあの木のあたりを馬車が通る』


周囲を見渡すと、ほぼ真っ平らな草原の先、300メートルほど先にぽつんと一本だけ木が立っている。

甲冑を着たままがちゃがちゃと歩いて行くと、馬車が通った後と思われる轍がある。

どうやら街道のようだ。俺は木の根元に腰を下ろした。

上手く行くか分からないが、とりあえずここで馬車が通りかかるのを待って町に連れて行って貰おう。


「あー、全くとんでもない目に合ったぜ…」

『空から人間が落ちて来るのは珍しい。何があった?』

俺は白い部屋で謎の人物に武器や鎧を貰った事。

空中神殿で目覚め、直後にストーンゴーレムに投げ捨てられた事を話した。


『ということはお前は精霊騎士か』

「精霊騎士?」

『大精霊様の加護を受け、世界を救う存在だ』

世界を救うとは大きく出たね。


そういえば「彼ら」から世界を救って下さいとか言ってたな。

彼らって誰だ? 何から世界を救うんだ?


ふと空を見上げると、厚く空を覆っていた雲が一瞬だけ晴れ、太陽が姿を現す。

俺が抱いた疑問の答えがそこにあった。


畜生、そういうことか。

視線の先、太陽は空に浮かぶ六角形をした巨大な何かに遮られ、本来の輝きを失っていた。

読んで頂きありがとうございます。

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