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プロローグ/エピローグ
最初に読んでも最後に読んでも大丈夫な内容です。
黒い葉巻のようなシルエットが漆黒の宇宙を進む。
とてつもない早さだ。
シルエットはある恒星系に入るとしばし考え込むように止まった。
いくつかある惑星の中の一つに近づくと数分で1周し、もとの位置でぴたりと立ち止まる。
やがて横腹から10メートルほどの球体がひとりでに出てくると大気圏に突入した。
真っ赤に燃えながら地面に轟音と共に着弾する。
日の光を浴びた球体から灰色の芽と根が飛び出すと、ぐんぐん大きくなり木のような形になった。
シルエットは軌道上から更に成長しつつある木を確認すると、速度を上げて恒星系を出ていく。
いずれ世界樹と呼ばれるようになる若木の中で知性を持った何かが目覚めた時、その姿はもうどこにも無かった。