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ちょっとぬけてる槌使いが戦いへ  作者: CHITA
第一章
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選んだ理由は一撃

 

 冒険者組合にある小広場で剣や槍などを試し2、3時間ほど経った。試しに私の身長ほどもある大剣を持ち、若干ふらつきながらも両手でしっかり握る。そして上段から勢いよく鎧を纏った案山子へ振り下ろすと、鎧から若干の抵抗を感じつつも叩き切りながら地面へと到達した。その後私が振るった大剣の一撃によって案山子の纏った鎧は大きく裂けた状態となり、僅かに切れ残った部分でどうにか繋がっている状態へと姿を変えた。

 他に大鎌を使ってみた。横から案山子へ大鎌を振るい、刃の部分が案山子の背中へ来たら首を刈り取るように手前へ引く。そして何の抵抗もなく引き裂かれた案山子は、その後綺麗な断面を残し切り落ちていた。

 そんなふうに、「あれかな、これかな」と迷いに迷って私が選び抜いたのが槌であった。私が持った槌は頭が黒色で他の槌よりも若干頭が小さかった。取り回しがしやすかった槌を頭上へと大きく振りかぶり、鈍色の鎧を着た案山子へ衝撃をもって金屑へと姿を転職させた。大剣や大鎌で切ったときとは違い、ほぼ鎧の原型を留めていないことはなんと痛快だったことか。私が槌を選んだのはそれが決めてだったのだろう。


 るんるんと壁際に佇んでいた小広場の係員へと歩みより手元に持っている槌を見せて「これに決めました。」、と告げたことは少々子どもっぽすぎたと思う。


 私は暖かい目の係員に案内され、武具庫受付まで戻ってきた。


「おう、嬢ちゃんか使いたい武器は決まったかい?…そうか、槌にするんだな。ちょいと待ってな。」


 おじさんは、カウンター越しの木製の引き出しから取り出した幾枚かの用紙に文字を書き込み始める。職業申請書、武器申請書、…などなどと、おじさんはさらさらとペンを動かし空欄だった場所を文字で埋めていく。


「…よし、この用紙をあっちに持って行きな。そうすりゃ、武器を手渡されるだろう。世界へ旅立つ冒険者に栄光あれ!、俺が担当したやつに言ってる特に深い意味はない祈り文句さ。じゃぁ頑張んな。」


 私はおじさんから数枚の用紙を手渡され、小広場へと繋がっている通路と反対側の通路にある受付へ向かう。 

 受付へとたどり着くとカウンターに座っていた若いお兄さんへ数枚の書類を手渡す。お兄さんは用紙を1枚、2枚と確認し、用紙に記されている内容を確認すると「少々お待ちください」と私に伝えカウンターの奥へと進んでいった。

 

 この受付の奥には槌のほか、剣、盾、ランスといった武器が並んでいる。ここで武器を手渡しているのか、石造りのカウンターには細かい傷が何十も刻まれていた。このカウンターに刻まれた傷一つ一つがここから旅立った冒険者らの数なのかもしれない。

 


「お待たせいたしました。こちらをお使いください。」


 お兄さんが戻ってきて石のカウンターに置かれたのは、鈍く光る黒い頭に同じく黒く染められた柄をもつ槌であった。


 柄を持ってみると、やはり頭のほうはずっしりと重く、小広場で練習用として置かれていた槌よりいくらか重かった。長さも僅かに長いのか槌の頭を地へ置いてみると柄が私の肩先へと達しようとしている。


「これから世界中を見て回られることでしょう。大自然を遺跡を、滅びた都市を。そして時にはモンスターに襲われるでしょう。あるいは同胞に狙われることもないとは言い切れません。そんな貴方を守ってくれるのが貴方の手に持つ物となります。貴方は時に窮地へ立たされることもあるでしょうが、それでも貴方は手に持つ武器を信じることで道が開かれるでしょう。

 いってらっしゃいませ。世界の全てを見て回り新たな扉を開いてくださいませ。

 これで職業、武器の書類申請などは以上となります。では、貴方様の冒険に栄光を。」



 私はお兄さんの言葉を胸にしまい、これからの相棒片手に元来た通路を戻っていった。








 


 

 

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