私はこんなの認めない!!
白いごつごつとした石が固くかみ合うようにして積み重ねられ建設された建物。建物の一部には両開きの窓が備え付けられ、開け放たれた窓の中からはおじさんどもの陽気な声が聞こえてくる。
正面の玄関に位置する木製の大きな扉は左右に開けはなたれ、帯剣した冒険者職員が左右で建物の中に入る冒険者を監視している。
初めて見た冒険者組合は見上げなければならないほど壮大であり隙間なく積み重ねられた石材によって頑強なつくりであった。この建物の中に今も入っている者たちは、身の丈ほどもある剣を背負っていたり、ローブで身を覆い隠していたりと一癖も二癖もありそうな者たちである。
口を小さく開けて見上げていた私も、よしっ、という小さな声と共に周りの流れに任せるように中に入っていった。
冒険者組合に入ってすぐのところには10を超えるカウンターが存在していた。そこに並ぶ冒険者が長蛇の列となっていて、カウンターが足りていないのだから今ここにいる冒険者の数は相当といえるだろう。まるでテレビで見た役所の行列のようである。いかついおじさん達が列となって順番を待っているその姿が現実での行列とそう変わらないため私はつい小さな笑いを漏らしてしまう。
私もカウンターの列へと並び、待ち時間の暇つぶしとして左右を見回してみると、右側では食堂や酒場となっているのだろう。丸テーブルを囲んでお肉や揚げ物を片手にお酒を飲む者たちがいる。赤ら顔のおじさんたちが口を大きく開けてガハハハッと笑うさまは、現実とそう変わらない。
左側を見ると沢山の掲示板に貼られた用紙に冒険者が集まってあれじゃないこれじゃないと、何かを話し込んでいる。依頼を受ける場所なのだろう。剣、槍、斧と様々な武器を背負い、帯剣し、どこか物々しさを感じるがこれぞ冒険者、という感じが見て取れた。
そしてこれから私も見習い冒険者として身分証を作りに行くのだ。憲兵さんが言っていた、身分証があれば大概の町は行けるため、様々なところを渡り歩く冒険者には必須であると。
カウンターへ向けてできている長蛇の列に十数分ほど待ち、高鳴る鼓動を内に秘めながらそわそわと私の番が来るのを待つ。。私と同じプレイヤーなのだろう。周りからは、ドラゴンを仲間にして空を飛ぶのだと語る者や、この世界一の金持ちになるのだと意気込む者、最高の武器を作る者と沢山の声が耳に入ってくる。
彼らの夢を語る顔はとても眩しくて、先の希望を実現するのだという熱意を感じてくる。私も彼らの気に中てられたからだろう、これから先にたくさんの未知があるのだと胸が高鳴った。
そうして私の番がきた。とことことカウンターへ歩み寄る。
「あらお嬢ちゃん身分証を作りに来たの?早速だけど、身分証を作るためにお嬢ちゃんのお名前を教えてね」
水色の髪をおさげのように縛った綺麗なお姉さんは私へゆっくりそう問いかける。
「サラです。」
前々から決めていた名前を伝える。だが…。
「サラちゃんね。ちょっと待ってて……あら?嘘は駄目よ、サラって方はもういるもの。そうやってお姉さんを困らせちゃだめよ?お嬢ちゃんの本当のお名前はなんていうの?」
名前の重複など当たり前だと知っていた私ではあったが思わず、エッ…と、なんて声を漏らしたのがまずかったのだろう。
「エッちゃんね?可愛らしい名前ね。---はいお待たせしました。これが身分証よ。落とさないように大切にしてね。」
私は瞠目してお姉さんの顔をじっと見つめた。まさか…私の名前が口から漏れた声によって決められるとは思わなかったのである。
えっちゃん…これ、名前じゃなくてあだ名な気がするんだけど…。