第2話 親友と一目惚れと不思議な少女
親友である郁と再開すると嬉しくてつい話も盛り上がってしまった。
どんな生活して中学校はどうだっかとか、彼女はできたかとか。
「メイドさんとかいて金にも困らないとか羨ましいぞぉぉぉぉ!」
「知らないうちにお前もオタクになってたのね......。
言っておくけどお前の想像してるようなこともないし、ご飯とかも全部普通の和食とかで高級なのはそんな無いぞ。」
合わない間に人はここまで変わるのかと思いつつもバカみたいな話をしていた。
「あれ?郁と亮斗か?」
後ろから声をかけられ振り向くとそこには眼鏡をかけた男。
親友のもう一人である仲村健。
小学校のとき郁と出会う前から仲良かった友達である。そのころは眼鏡をかけていなかったのですぐにはでてこなかった。
「久しぶりだな、健。」
「そうだね、何年ぶりだろう。
あまり変わってないように見えるけど......。」
「お前らさっきから
俺の身長が変わってないって言ってんの!?」
確かに170㎝もないけどもさ、俺だって気にしてんだから言わないで欲しいのだけど。
「サイ、だれも身長のことについて言ってないぞ?それとも自分でも気にしてんの?可愛い奴め!」
前では郁がからかってくる。
「別に身長のことじゃないからな?でも成長してるって。背も高くなってるし。」
後ろでは健が当たり前のことをいっている。
どっちにしても俺は心に小さな傷をおった。
くだらない話をしてる間に入学式が始まる時間になった。
皆が静まりステージの方に目線を向ける。
そんなときだった。
ホントなら式中に後ろ向いたりしちゃいけないのだがこの時、何故か後ろを向いてしまった。
健よりも後ろの列の女子生徒に釘付けになった。
腰まで届きそうな黒髪であり顔も笑えばきっと可愛いだろう。
そんなこと細かいことなどどうでもいい。惚れやすい人間である俺だがここまでときめいたのは初めてだった。
(あんな子と付き合えたらきっと楽しいだろうな。)
見ていたらあちらも気づいたらしくこちらを見て微笑んだりするのかと思いきや周りに聞こえないように口を動かし......。
『こっち見ないで変態』
ネガティブな俺だからそう思えるのか初めて知らない女の子に変態呼ばわりされた。
(嫌々待て待て。俺の勘違いかもしれない。きっと俺のネガティブな心のせいでそう感じただけだ。)
心に言い聞かせ気分を変える。動揺は消え去ることはなくモヤモヤは残るが改めて考えると知らない男に見続けられたらあのような反応もありえる。
(これで学年中から変態呼ばわりされる生活になったらどうしよう......。というか俺よく動く口だけでそうわかったな!そっちにも驚きだよ!)
そんな心配と自分の隠された力に驚きながらも入学式は無事おわった。
※※※※※※
入学式も終わり家への道を歩いていた。
郁や健と途中まで帰っていたがよる場所があると言われて一人で帰っていた。寂しいという気持ちもなく音楽を聴いてる方が気が楽だった。
(相手の心の中はわからないよな)
人が俺をどんな風に思っているのかがわからない。もしかしたら親友というのも俺の中だけなのかもしれない。そんなことを一人になるとつい考えてしまう。
俺は人が信用できないのだ。いや、孤独を感じたときにそう考えてしまうだけだとわかっているのだが、一度考えてしまうとどんどん広がっていく。
(つか、ここどこよ)
くだらないことを考えているうちに知らない場所に来てしまった。
「この年で迷子とか......。」
住宅街のなかにある空き地、ネコえもんに出てくる空き地のようだがその中心に一人レジャーシートをしいて座っている少女がいた。金色の髪でお姫様のような格好をしていて風景にはまったく合わない。そして尚更合わないのがその横には持ち運びができる将棋盤やチェス盤などが積んで置かれている。
「なぁ。」
「わぁ!?」
いきなり声をかけたのが悪かったのだろう。少女は驚きのあまり積まれていた物を崩してしまい駒をばらばらと散らばせていた。
「ごめん。いきなり話しかけるのは良くないよな。」
素直に謝り散らばっている駒を拾おうと近寄る。
「えっ、どうして......。」
こちらを見る少女はまるで幽霊でも見ているような表情(そんな表情を見たことはないが)でこちらをみつめる。
「どうかしたのか?」
「......。」
少女はあごに手を当ててなにか考えてはこちらを見ることを繰り返している。
「まさか俺が変質者に思われてるのか!?」
「思ってないよ!?」
少女がいきなり声を出したのでビックリはしたが、やっと会話ができると安心もしていた。
「やっと話せるな。あと散らばってた駒とか片付けといたから安心してくれ。」
「あ......、ごめん。ありがとうね。」
「どういたしまして。んで、君はなんでここに一人なの?
お母さんとかはいないの?
家の場所わかる?」
もう日は暮れている。親も見当たらないため少し心配になったため念のため聞いてみると「お母さんはいないよ。お家はここだし。」と答える。
「どういうこと?」
「いった通りだよ。一人でここにいるのは趣味だし。」
見た目とは違って何故か少女らしくないと感じてしまう。こんな年で趣味とかいうのだろうか。俺がこの子くらいのときは趣味とかいう単語も知らなかった気がする。
「どうかしたの?」
今度は俺が考え事していたため少女が顔を覗きこんでくる。
「いや、君は見た目と違って大人だと思ってさ。」
大人というのは言い過ぎかもしれないが少なくとも俺が小さいときよりは大人なはずだ。
普通の小さい子なら大人と言われたら喜んだりするはずなのだがこの子は違った。
「そっか......。そうだよね......。」
悲しそうな顔でうつむく。
「ど、どうした?」
「なんでも......なんでもないよ?うん。何でもない。」
何か地雷を踏んでしまったのだろうか?頭をフル回転させて考えられる理由を探す。
両親がこの子を大人だと誉めたそのあとに事故で亡くなった。というのが俺の答えだった。ここが家というのは両親が生きていたときここに家があったということだろうと考えたが父親がいないとわかったわけではないため考えすぎであると自分のなかで結論を出す。
ここでふと状況を考える。
俺は地雷を踏んだらしく少女を悲しい気持ちにさせてしまった。そして俺は謝りもせず勝手にこの子の親が死んだなど考えている。
(最低だな俺は。)
「悪い。悲しいことを思い出させたな。」
今ごろ遅いかもしれないが謝罪をする。だがそれが逆効果だった。少女は涙をながしてしまった。
それを見たとき頭に知らない光景が浮かび上がる。住宅街が燃え上がり道にはたくさんの人が倒れている。その人たちには胸から血を出しているという特徴があった。
「大丈夫?ねぇ!気をしっかりもって!」
少女の声で現実に引き戻されると同時に耳なりがし始める。目眩もしだして頭がうまく動かなくなり次第には倒れこんでしまう。
(貧血か?)
少女の声がだんだんと遠くなっていく......。
「ごめんなさいっ。ごめんなさいっ。」
涙声で謝り続ける少女の声を最後に聞いて俺は意識を失った。




