第1話 始まり
桜が綺麗に咲く春。
俺、西城亮斗は新しく通う高校の入学式へと向かっていた。
周りには親と歩く真新しい制服を着る生徒たち。そんな中俺は一人であった。理由は簡単、親がいないからだ。
俺が小学4年生の時に事故で死んだ。そのときの記憶は無いし、思い出もあまりないから思い出して悲しいということはない。
だが、何かを思い出さなければいけないと感じるときがある。しかし思い出そうとするとすぐに白いもやのようなものが邪魔をする。それに自分でも知らないうちに思い出さないようにしていると感じる。思い出してはダメだと心の奥で叫んでいるような。
だから、俺はあまり考えずに過ごしてきた。
「まぁ、今頃思い出してどうなるんだか。」
これから高校生活が始まるというのにつまらないことを考えてもしかたがない。そんなことをしているうちに高校へ着いたようだ。
入学生の受付に行き体育館へと移動する。
(とりあえず、どんな奴がいるか確認しなくちゃな)
不良やチャラチャラした奴は要注意だ。単に俺と馬が合わないだけではなく恐いため高校生活を楽しむためにはなれる必要があるし、いじめをしてくるかもという偏見もある。
周りを見てもそんな奴は数名。
(よかったぁ~、あまり警戒しなくてもいいかもしれない)
見た目が恐いやつはいないらしいが油断は禁物だ。中身が恐いやつ、俺みたいにめんどくさかったり自分勝手だったりする奴や、ホントにヤバイ奴がいるかもしれない。
(油断しない油断しない。そう簡単に信用もしない。)
心のなかで何度も繰り返す。
「オッス、サイもこの学校だったのか。久しぶりだな!」
一瞬ビックリしてしまったがすぐに声が聞こえた方を向く。前の列に座っている男。小学校から付き合いのある親友の一人、木野里郁だ。
親の事故で俺が引き取られてから電話でしか話してなかったのにこんなところで会えるとは思っていなかった。
「五年くらい、あってないのによくわかったな、おまえ。」
「そんな見た目変わってなかったからな。それにおまえのおじさんが手紙で写真を送ってくれてたからな。」
俺を引き取ったおじさんとは母方の祖父で西城財閥とか言うとこの偉い人みたいだが難しいことは嫌いだからそんな知らない。ここでわかるように俺は金持ちの家に住んでいる名字も引き取られてから変えたのだ。
(知り合いがいるだけでも気楽に生活的そうだ)