F-6.魂のクローゼット
まあいいか。ユリも呼んじゃおう。
「ユリ、出てきなさい」
「は~い」
猫獣人を気に入ったようだな。寝子だけに。
人間だったことは既に無かったことにされていた。
ボクも人のことは言えないけどね。
なお、ハジメは犬獣人の男性である。
「この娘がミユというんだ。こちらはユリ」
「ユリお姉さんだよ~」
「ユリ…ねえ?」
「きゃ~かわいい!」
おい、急に抱き締めるな。怯えているじゃないか。
「こら、落ち着け」
「私妹が欲しかったのよね~」
「クミも妹だろう」
「あの娘はしっかりしているから~」
お前はしっかりしなさすぎだ。あとミユが混乱している。
「いいから離せ、まったくもう。ミユ、大丈夫か?」
「うん。大丈夫」
「ユリは怪我や病気に詳しい。あと料理や裁縫も出来る。困ったら相談するといい」
「うん、いつも暇してるから遊びにきてね~。じゃあ隣の部屋で寝てるから」
ユリは本当に隣の部屋で寝るようだ。まだ昼なんだけどなあ。
さて、クミの様子はどうだろうか。落ち込んでいなければいいが。
「クミ、出ておいで」
「私をお呼びですか」
「うん、このエルフの娘がミユ。君の妹になる。ほら、ミユ挨拶できるかな?」
「う、うん。ミユです。よろしく…」
「ああ、私はクミ。偵察・護衛なら任せてくれ」
クミもだいぶ落ち着いたかな?
クミがミユの頭を軽く撫でてあげている。
「私は軽く外を回ってくる。夕飯には戻る」
「そうか。わかった」
夕食まではミユといちゃいちゃしよう。
夕食はハンバーグにしようかな。
夕食後、ミユが疲れて寝たのを確認してクミと外に出る。
風がひんやりして気持ちがいいね。
「ミコト…その、なんだ。獣人を助けてくれてありがとう」
「ああ、その件か…。相手からすればボクがみんなを食い殺した悪魔に見えていたと思ったけれど。
みんなの反応はどうだった?」
確か、クミを除いて合計16人くらいいたはず。
「ほとんどの人は地獄から抜け出せたと喜んでいたよ。
死んで泣いてた子と恨んでた子もいたけど大丈夫。
今は落ち着いている」
なんとなく空を見上げる。いつもの二つの赤い月。
「彼らは私の故郷の住人でね…再会出来て嬉しかった。
戦争で負けて、飢えて、みんな捕まって、バラバラになって、
もう二度と生きては会えないと思ってた」
今は死んでボクの中で一緒、というのは皮肉なもんだね。
ボクの体の中は魂の収納所みたいなところだ。
中にいる者同士なら交流も可能なのだ。
「そうか、生きる目的は見つかったんだね」
「ああ、この世界は救えなくても私は彼らと共に生きることにする。
ミコト、それでいいかな?」
「うん、これからもよろしくね。
いずれ、ううん、6ヶ月以内にこの世界からは去ることになる。
時間に余裕をとって他の獣人も回収するかい?」
クミも空を見上げている。星座は地球とはまったく違っていてわからない。
クミ、ミユ、王女の知識にも無かったからこの世界では星座という文化は育たなかったのだろう。
「いや、私の家族はもういない。だからもう十分だよ」
ぽつりと言った。それで思い出す。
「地下牢の獣人は既に魂を失っていた。悪かったな」
彼らはクミと間違いなく関係があっただろう。
「…隊長は最期まで戦った。それだけだ」
クミは最後まで泣かなかった。




