E-3.眠らぬ街、東京
眠らぬ都市、東京。
人口が多いということは死者も多い。
そこで得るものは多かった。
(ハジメ、ユリ、そっちはどうだい?)
ユリは臆病で甘えん坊、そしてサボり魔だ。
彼女は白猫のボディを愛用し、仕事が無ければボクの中に戻って眠ろうとする。
ハジメは要領と手際がよく真面目で執事みたいだ。
この間は鷹に襲われて逆に食い殺したと喜んでいた。
普段はカラスや梟かコウモリ、戦闘時は鷹かオウムだ。
逃げたペットかは知らないがオウムが外にいるって危ない世の中だね。
指なんて余裕で噛みちぎるパワーがあるんだけど、あいつ。
(えーと、公園にいますよ~)
ユリは食事中のようだ。あいつは飯をねだるのが上手だからな。
(イエローナイフ族を見つけた。大手門で待っていてくれ)
イエローナイフ族とは情報収集を糧とする種族だ。
地球人からすると宇宙人?違うな、正確には異世界人だな。
そもそもボク達ブルーリング族も異世界人に当たる。
ボク達の場合はグランドマザーが統括し、マザーが各地で情報を収集し統括に送っている。
情報収集の方法は現物徴収だ。
イエローナイフ族の場合はグランドマザーが統括するのは同じだが直接各端末を統括する。
情報収集の方法は乗っ取りだ。
あと、詳細は知らないが読心、遠距離視、過去視、未来視が可能なのは間違いない。
ボク達とは利害関係がある程度一致するため、協力的な関係にある貴重な異世界人だ。
ボク達のように動物の姿をしている場合、やはり公園のほうが楽で気持ちがいい。
駅内にも入れなくもないけど面倒は面倒だからね。
大手門で日向ぼっこしながらのんびり待機する。
「あら、いいこねー」
ツインテールの女性がボクを抱きかかえる。
礼儀としてにゃあ、って応えてあげる。
「はじめまして、イエローナイフのカスミと申しますわ」
「こちらこそはじめまして、ブルーリングのミコトという」
「今回は一つお願いにきました。これから三日後の午後六時ちょうど、
彼ら四人が異世界へ召喚されます」
写真と名前が提示される。
サトウ トモヒコ、オクダ カツシ、オオクボ コーコ、カドカワ ヨーコか。
全員高校二年生。帰宅途中に召喚される予定。
「彼らに便乗して異世界へ行っていただけませんか」
「ありがたい話です。情報提供感謝いたします」
異世界渡航はかなりのコストがかかる。複数人の強制召喚ならなおさらだ。
便乗できるならそれほど美味しい話はない。
「お礼はいかほどに?」
「私の端末を一つ持っていってください。人が多いところに置けばあとは勝手にやります」
「了解」
自分は異世界に行く。彼女は異世界に端末を置ける。
そうやってお互い協力し、勢力を広げているのだ。
「情報があったら情報リンクしてくれ」
「わかりました」
身体接触から直接情報の交換を行う。
どうやら魔王と複数国家が戦争し、召喚合戦をしている世界のようだ。
魔族、獣人、魔法、魔法鉱石を確認、面白そうである。
「ではまたあちらで」
「ではよろしくです」
予定日の午後六時ちょっと前、自分は白猫ボディで待ち伏せしていた。
ユリとハジメも体内待機中だ。
「にゃ~」
ふふふ、女子ホイホイと言われた手腕見せてやろう。
ヨーコが近寄って来るのが見える。
四人とも仲がいいようだ。
ヨーコに頭を撫でさせてやる。
時間はもうすぐだ。
召喚陣が見えた。
さあ異世界へ行こうじゃないか。