最終話 帰ってきた世界、そしてまた
目を覚ますと、そこは見慣れた天井だった。
壁にかかった制服。マンガばっか入ってる本棚。机の上に置かれた、大学ノート。
間違いない。俺の部屋だ。
「帰ってきたのか……」
手をついて起き上がる。時計の針が指す時刻は……四時?
確か、俺が起きたときの時間が二時だったから、えーと……二時間しか経ってないじゃないか!
「夢、だったのか……?」
いや、違う。あれは、紛れもない現実だ。俺の傷だらけの体や足枷の痕がそれを証明している。それに、俺の手ははっきりと、エルの頭を撫でたときの感触を覚えていた。
「時間枠が違うのか?」
あの世界でも、俺はそう思った記憶がある。なら、実際その通りなのかもしれない。
息を吐き出し、椅子に座る。新しい大学ノートを棚から取り出し、ゆっくりと開いた。
新しい物語を創ろう。みんなの、新たな人生を。
我ながら良い思いつきだと思う。
「なあ、エル……」
思わず、何もない空間にそう呼びかけた。
今更ながらに、涙があふれる。
オレンジ色をした髪の怪力で強い女の子も、お菓子に関しての知識が豊富な研究者も、女装した能力持ちの男の子も、正反対なドラゴンの兄妹も。もう、みんないないんだ。
これから一生、会うこともないだろう。
でも……
俺に、出来ること。
それは、みんなの幸せを創ってあげることだ。
俺のせいであんな顔をさせてしまったんだから。
俺の手で、みんなが笑えるように。幸せになれるように。
願いを込めて、俺はシャーペンを握った。
完結です!今まで読んでいただき、ありがとうございました!




