表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺様、神様、創成主!?~いいえ、人間です~  作者: 慧斗
第3章 そして神様を中心に、世界は変わり始める
51/54

第50話 諦めなければいけない

「ごほっ、ごほっ」


 リオラに渡された水を飲みながら、軽く咳き込む。


「勢いよく飲みすぎ……」


「しょうがねぇじゃん、俺の胃袋に何かが入るの何日ぶりだと思ってんだよ」


「ちょっと待って……」


「ちょ、計算し始めなくていいから!」


 どこかから取り出したノートが、高速に計算式で埋まっていく。これが研究者か……。


「お兄ちゃんっ!無事で、無事で良かったよ~っ!」


「分かった、分かったからいい加減泣き止め。そんで俺の腰からどけ」


 くぅも、いきなり腰にしがみついてから離れやしない。なんつーバカ力だ、引っ張ってもびくともしねぇ……。


「リオラ?高良に水を飲ませるのはもう少し後でも良かったんじゃないの?喋れるようになった途端にうるさくなったわよ」


 いきなり無慈悲なことを言い出すエル。


「ごめん……」


 謝らないで!?


「ひゃっほー!です!」


「ちょ、スピードが速すぎですよ」


「良いじゃないですか!」


「ぎゃああああああ」


 前の席ではしゃぐ、アリシアとナオ。


「あのさ……、これからどこに行くの?」


 あれ?こういう話、前にもしなかったっけな?


「高良を元いた世界に帰すわ」


「……………………は?」


 え、え、ちょっと待って。今、さらっとすごいこと言わなかったか?


「え、なんて……」


「高良を元いた世界に帰すって言ったのよ」


「……………………帰す?誰を」


「高良を」


「……………………元いた世界に?」


「うん」


「……………………ちょっと待って。え?俺を、元いた世界に、帰すって言った?」


「うん、言った」


「何で急に」


「それはまあ……色々」


「どうやって」


「このノート使って」


 そう言ってエルが取り出したノートに、俺は飛びついた。


「これ……!」


 俺の、大学ノートじゃねぇか……!


「これで、帰れるのか?」


「うん」


「そうか……」


「どうする?帰りたい?」


 エルが、俺の目を覗いてくる。


「帰る、か……」


 いきなり見つかった、帰る方法。

 そりゃあ、日本には未練がある。俺にだって仲の良い友達はいたし、高校生活も結構充実していた。帰りたくない、と言ったら嘘になる。

 でも、帰ったらこいつらとはお別れだ。こいつらに出会えたのは、本当に偶然で、奇跡で。きっと、帰ったらもう二度と会うことは出来ない。

 気がついたら、五人が揃って俺を見つめていた。


「どうするの……?帰るのも、ここに残るのも、高良の自由だよ……?」


 リオラがそう言う。でも、その目は『帰ってほしくない』と訴えていた。

 みんなの目も同じ。でも。


「俺は、帰るよ」


 俺は、本来この世界にいてはいけない存在だから。これ以上俺がいても、闇雲に歴史をかき回すだけだ。

 それに。

 この世界に来れた。

 みんなと出会えた。

 二ヶ月だけだけど、みんなと一緒にいれた。

 それは、本来あり得ないことで。

 神様が、偶然起こしてくれた奇跡だから。

 だから、それだけで充分。

 もう、これ以上を望んじゃいけない。

 帰りたくない、みんなといる、と言うのは贅沢なわがままだ。


「……そう」


 エルが、そう寂しげに呟く。諦めなければいけないけど、諦められないような、そんな複雑な表情で。

 みんなも、それは同じだった。

 そして、俺も同じだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ