第45話 懐かしい、緑だけが広がる世界
「久しぶりだな……」
くぅとナオがゆっくり旋回して、丘に着地する。俺たち四人は、二匹から飛び降りた。
「変わってないなぁ……」
感慨深く辺りを見回す。何も無い、何も見えない、緑だけが広がる世界。まあ、前にここに着てから二ヶ月ぐらいしか経ってないからな。そんなに変わってるわけないか。
「へぇ、町外れにこんなところがあったんですねぇ」
「懐かしいわねぇ……」
「え、え、見えない……」
三人の感想を聞きながら、俺はある場所を探していた。
「えーっと……あ、ここだ」
「え?」
「うわっ、びっくりしたぁ……」
「何よ、失礼ね」
「いや、ちょっとな……」
「んー……。まぁ良いわ。それで?何を、探しているのかしら?」
「あー、えっとなぁ……」
「何よ、言えないことなの?」
「いやいやいや。たださぁ、俺がこの世界に来た場所を探してたんだよ」
「来た場所って……。この丘でしょ?」
「まあそうなんだけど。そうじゃなくて、俺、ここら辺に落下したんだよ」
「……?創世主様は、天から落ちてきた設定だったの?」
「設定じゃねぇし!そうじゃなくてだなぁ、俺がこの世界に来た時に……」
「その話、詳しく聞かせて……!」
突然。俺たちの間に、ガムの塊がにゅっと出て来た。。
「きゃああああああああああああああ!!!!」
「あ、リオラか……。びっくりしたー……」
いきなり出たガムの塊に、思わず数歩後ずさるエル。まあ、そりゃびっくりするよなー。
「つーか、それで立てたんだ」
「立てない……。でも、研究者としての探究心が不可能を可能にした……」
「名言っぽく言うなよ!」
「それに、このガムは伸び縮みしやすいガムだから……」
「あー、そういやそれ、手作りなんだったな」
何だっけ?モンスターの、繊維かなんかが入ってんだろ?
「それで、詳しく聞かせてってなんのことだ?」
「さっき、話してた……。高良が、この世界に来た時の話……」
「あー、それか?それがなぁ、この丘にいきなり落ちてきて、モンスターに襲われるわエルにも襲われるわで……」
エルに襲われたのも今なら笑える思い出だけど、二ヶ月前は本当に生命の危機を感じたからなぁ……。
「それじゃない……。それも興味深いけど、何でエルが高良を襲ったのか詳しく聞きたいけど、それは男女間でも行為としての『襲う』なのか非常に聞きたいけど、そうじゃなくて……」
「いや、違うからな!」
興味津々じゃねぇか。
「襲うってのはそういう意味じゃなくてだな……」
「そ、そそそそそうよ!わ、私はだだ断じて高良を襲ってにゃんか……」
「お前は動揺しすぎだ!」
そんな態度じゃまるで、本当にそんなことをしたみたいじゃねぇか。
「襲うってのはなぁ、エルが俺をモンスターと間違えて撃ってきたことだよ!」
「ふーん……。そういう『襲う』じゃないのは残念だけど、エルが高良をモンスターに間違えたっていうのもある意味興味深い……。メモメモ。エルの目は節穴なの……?」
「メモるな!っつーか、そのガムの中でどうやってメモるんだよ!あと、お前そんなゴシップ好きだったか!?今の状態はな、小説の『起承転結』に例えたらもう『結』に差し掛かってんだよ!今更キャラ路線変更したって遅いんだよ!」
「むぅ。メモするのは、研究者の性……。研究者は、メモってなんぼ……」
「だから、創世主である俺の許可なしに勝手にキャラ路線変更すんなっつーの!」
もう、大人しくしとけよ。今、感傷に浸ってるんだからさ。
「とにかく……。リオラは、高良がどうやってこの世界に来たのか、を知りたい……」
「は?そんなの、知ってどうすんだよ」
「あ、でも、私も聞きたいです!高良さんが、どうやってこの世界に来たのか!」
「しょうがねぇな……」
「差別だ……。リオラが聞いても答えてくれなかったくせに……」
だって、お前に聞かれただけなら面倒くさいし断るけど、恩があるアリシアにまで聞かれたら答えるしかねぇだろ。
「えーっとなぁ……」
そして、俺は話し始めた。
俺がこの世界に来て、エルと出会った経緯を。




