第42話 俺の命に代えても守る
「ぐすっ、ひっく」
「エル?もう泣くなよ」
「だって、だって」
「エルさん?もうすぐ洞穴を出ますから、涙を拭いてください」
「うん……」
エルが抱えているのは、じいさんの首。
俺たちは今、歩いてきた道を逆方向で歩いているところだった。
俺としては、もうそんな顔は一生見たくないんだけど、エルが『博士がいなかったら今の私がいないのは確かだから、ちゃんとお墓に入れてあげたいの』と言い出したから町に行くことにした。いや、その『博士がいなかったら今の私はいない』状態を作ったのもじいさんなんだから、別に良いじゃんとは思うんだけどな?
もちろん、俺たちが今逃亡中の身だってことは忘れてない。でも、そこは俺の命に代えてもお前らは無罪にしてみせる、って言っといた。無罪は無理でも、死刑にはならないと良いんだけど。俺の命ってもともと無くなる予定だったから、代えても守るってのは難しいかもしれない。でも、もともとは俺の嘘のせいでこんなことになったんだから。今戻って捕まっても、別に悔いは無い。せめて、こいつらを守ることに尽力しなきゃな。
くぅの炎で照らされた狭い道に、エルの泣き声だけが響く。
しばらく歩くと、目の前に小さな光が見えた。出口だろう。




