第40話 二年前の真実
何で?
「な、なんで博士がこんなところにいるんですか?」
エルが詰め寄る。
「そうだよ、何でこんなとこにいるんだ、じいさん!」
俺も、じいさんに詰め寄った。
二人に睨まれてもじいさんは動きもしない。それどころか、俺を見てニヤリと笑った。何だよ……。
「ここは……」
え?何だって?
「ここは、絶好の隠れ場所だからのぅ。ワシもよくここに来とるんじゃ」
もう聞き慣れた爺口調。でも、ここが隠れ場所だと知って来てるんならじいさんも隠れてしなくてはいけないものがあるんだ。
「ここで何してるんだ?秘密の実験か?」
「まぁ、大体は当たっておるわな」
ひげを撫でながらのんびりと答えるじいさん。おいおい、はっきりしろよ。
「博士、まさか……」
いつの間にか、後ろにリオラが迫ってきていた。いつも眠たそうな顔が、心なしか青い。
「リオラ、何か心当たりあんのか?」
「うん……。多分なんだけど、博士……」
ビュオンッ
「ストップ、じゃ。そこからはワシに言わせてもらうぞい」
むうっ?なんだ、これ?口に張り付いて離れない……!
「これで黙っといてもらえるかの」
じいさんが作ったものか……!クソ!何も喋れねぇ!
「さて、リオラ?」
じいさんが、俺と同じく口を塞がれているであろうリオラに話しかける。
「お主が何を言おうとしていたのか分かるぞい、おおよそ……ワシの、罪のことじゃろう」
「ふひ……?」
罪……?って言いたいのに言えない。よし、もう喋らないでおこう!
「二年前のことじゃよ。ワシとリオラは、子犬を拾った。その子犬に、ワシはこっそり実験中の薬を飲ませたんじゃ。その薬で子犬はモンスターとなり、どこかへ消えた。ワシは慌てたよ。じゃが、たかが子犬一匹じゃ。すぐに軍に捕まるじゃろうと思っておった。それで、証拠隠滅ということで薬を川に流した。じゃが、それは間違いだったんじゃ」
リオラといい、じいさんといい、研究者はみんな長ゼリフが好きなんだろうか。俺がそこまで言って息を吸った後、じいさんはまだ続ける。
…………
「というわけなんじゃ」
すごいな、じいさん!よくそんな長ゼリフを話した!
長すぎて描写する気にもなれなかったので、まとめると。
・じいさんが薬を捨てた川にいた生物やその水を飲む動物はモンスターになった
・慌てたじいさんは残っていた薬を埋めた
・植物に薬が含まれ、それを食べた動物がモンスターになった
↓
・モンスターにより軍が出動、国は大騒ぎ。研究所にも解剖の依頼が殺到し、一気に有名に
そこで、じいさんは思ったらしい。モンスターがいれば、この研究所は保てるって。何でも、その頃まったく活躍してなかった研究所は近々廃止予定だったとか。
モンスターがいれば、この研究所は必要になる。それに、研究所を無駄だと言った政府の奴らに仕返しが出来る、って。
そんなことを考えて、じいさんは薬を大気中にばら撒いた。ここら辺は、前にエルが言ってたのと同じ内容だ。
そして、モンスターは増え、人間にも感染して。
じいさんは、計画通りに研究所を保ち、栄誉を手に入れた。
多大な犠牲を払って。
それが、じいさんの話だった。




