第33話 世界は、変わる
「創世主様、よくご無事で」
「今日からまた、予言をよろしくお願いします」
お辞儀をする召使いたち。見慣れていたはずなのに、久しぶりだからだろうか。とても、新鮮に感じる。
ドラゴンからやられた傷がようやく治った俺は、さっそく王宮へと戻っていた。
アランには散々止められた。傷が治ったとはいえ、いつ傷口が開くか分からない。もう少し救護所で安静にしとけ、と、何度も言われた。
でも、この仕事は俺にしか出来ない。いつの間にか、俺はこの仕事に愛着が出てきていたようだ。
「よし、今日からまた予言だ!」
思い切り伸びをする。方がズキッってなった気がするけど、気のせいだ、気のせい。
歩き出したら、今度は足がピキッっとなった。無視だ無視。
「よ、予言だ……」
それが終わったら、部屋でゆっくりしたいたら治る。……多分。
「早く、予言を……」
久しぶりだから、緊張する。
俺は部屋へと入り、覚えている予言を口にした。
「今日は―――」
「創世主様っ!」
突然響いた怒鳴り声。眠い目をこすって時計を見ると、まだ夜の一時だ。
「なんだよ、寝かせろよ……」
ふわぁ、と欠伸をする。眠い。
「どういうことですか!」
でも、そんな眠気も一瞬で吹き飛んだ。
「昨日の予言、外れましたよ!」
「えええええ!いや、そんなはずは……そうだ!きっと、長い間予言してなかったから日にちを間違えたんだ!その予言はきっと今日のだ、今日の!」
「そうですか……」
腑に落ちない顔をしながらも、その召使いは自室へと戻っていった。あーあ、予言外したのなんて今までなかったのに。
「あ、でも今日の予言の時間は無しでいいのか」
俺の長期入院によって外出禁止令がうやむやになったのをいいことに、俺は今日の遊びの予定を考え始めた。
「あ、そういやくぅとナオのことバレなかったな……危ねー、すっかり忘れてた」
二人とも、寝る時はドラゴンの姿に戻る。俺の横で寝てるから、あの召使いに見られたら一貫の終わりだった。危なかった……
ほっと息をつくと、俺はすぐに眠りへと戻った。
でも、それは『長期入院による単なる日にちの間違い』ではなかった。それから何日も、俺の予言は外れたのだ。
毎日毎日予言を外すたびに周りの視線はキツくなっていき、二週間連続で外れた頃には俺は〈嘘つき〉になっていた。
「創世主様?あなたは、本当に神なのですか?」
召使いに、そう問われた。
予言が外れたのは、エルを助けたからだと俺は思っている。俺が書いた小説の内容を無理矢理変えたから、歴史が大きく変わってしまったんだ、と。
でも俺は、エルを助けたことになんの後悔もない。でも、この世界の歴史を変えたこと、その責任は取らないといけないと思う。
だから、俺は息を吸い込んで言った。
「いいえ、人間です」
と。
その日、〈創世主・高良陽〉は、〈身分もない怪しげなモンスター(仮)〉にランクダウンした。
嘘をついて周りを欺き続けた罪は重い。俺はまた、あの地下牢に入れられた。




