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俺様、神様、創成主!?~いいえ、人間です~  作者: 慧斗
第3章 そして神様を中心に、世界は変わり始める
29/54

第29話 守ってくれて、ありがとう――。

「……からっ、た……!」


 あれ、どこかで声が聞こえる。

 うるさいなぁ。ここは、とっても気持ちいいんだ。ここにいると、とても落ち着く。


「た……………ら!」


 ああもう、うるさい。

 でも、あの声は聞き覚えがある。誰の声なんだろう。


「たか……っ!」


 俺は、いったい誰なんだろう。もう少しで、何かが思い出せる。俺は……

 誰か、大事な存在を忘れてる気がする。脳裏に浮かぶのは、ぼやけた顔、黒いコート、そして―――オレンジ色の、髪の毛。


「エルッ!」


 ぱちっと目を開く。目の前にあったのは、号泣してるエルの姿だった。頭とかに包帯を巻いてて、痛々しい。でも……


「良かった、生きてて……」


 少し動くだけで痛むからだを無理やり起こして、俺はエルを思いっきり抱きしめた。


「ちょっ、高良、何すんのよ!」


「ひゅーひゅー。お二人さん、熱いねー」


 いきなり抱きしめられたことに戸惑うエル、茶化す兵たち。アリシアは、俺に力を使い果たしたのかぐったりしてる。

 それでも、俺はただ繰り返した。


「良かった、本当に良かった……」


 思わず、ぽろぽろと涙が流れた。その涙はシーツに落ちて染み込んでいく。でも、それに文句を言う人は誰もいなかった。エルは静かにぽんぽん、と背中を叩き、周囲に集まっていた人もみんな、静かになっている。


「私も、ごめんね……。守ってくれて、ありがとう……」


 エルの囁きに、首を横に振る。


「守れなかった、よ……ぐすっ。実際、エルはケガしてる……」


「でも、死んでないわよ?」


「そうだな……っ……ひっく……ぐすっ……」


 部屋には、俺の泣き声だけが響いていた。

 みんなの気遣いが嬉しい反面、少し恥ずかしかった。

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