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俺様、神様、創成主!?~いいえ、人間です~  作者: 慧斗
第3章 そして神様を中心に、世界は変わり始める
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第28話 神様は、ヒロインを救えるのか

「くそっ!」


 知ってたのに。エルが死ぬのを知ってて、助けるために来たのに。うかつだった。


「どりゃあぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!どけどけどけーっっっ!」


 剣を振り回し、銃を発砲し、エルと俺との間に立ちふさがっているモンスターをなぎ倒す。剣の振り方もめちゃくちゃで、とにかくエルだけを見て必死に前へと進む。


「おりゃおりゃおりゃぁぁぁぁーっっっっ!」


 兵の一人が『強そう』と言っていたモンスターをどうやって退けたのか分からない。とにかく俺は夢中で、エルのことだけを考えていた。


「うがっ!」


 腕に何かが刺さる。モンスターの、牙……?


「しまった、油断した……」


 膝に力が入らない。腕から流れる血が、地面を赤く染めていく。

 どさり。

 気がついたら、目の前に地面が広がっていた。


「く、そ……」


 そうこうしている内に、ドラゴンの尻尾が大きく振り上げられる。


「だめだ……力が、入らないや……ははっ」


 結局、目の前でエルを亡くすのか。俺は、自分で描いたバッドエンドも変えられないのか。

 俺は、とにかく平凡で、どこにでもいるような普通の男子高校生だった。

 才能がある奴に嫉妬して、もう夢を諦めて。普通のサラリーマンになって、普通に結婚して、普通に一生を終えるのかと思っていた。むしろ、それが俺にとっては幸せなんだって、達観した気になっていた。

 だけど。

 友達から借りたラノベで、同い年の奴が立派に働いてることに胸を打たれた。

 俺も、あんな風になりたいと思った。小説家じゃなくてもいい。なにか努力して、こんな人生で良かったって思えるような一生を過ごしたい。そう思って、手始めに小説を書いてみた。文法もめちゃくちゃ、内容も支離滅裂、でもとにかく書いた。

 そこで、思ったんだ。

 確かに俺には才能がない。顔も、勉強も、スポーツも平凡。もう努力することすら諦めていた。

 でも。


 ―――根性と努力は、不可能を可能にする。


 って。

 平凡がなんだ。今まで平和に暮らしてきたから戦いは無理?苦手?ハッ。

 高良陽、お前は何なんだ。

 創世主だ。この世界も、あのドラゴンも、エルも、俺を刺したモンスターも。みんなみんな、俺が創った。

 その責任は、負わなくちゃいけないんじゃないだろうか。

 俺がモンスターを創ったせいで、今こんなことになってる。

 なら、俺が真っ先に立ち向かっていかなくちゃ。


「…………っ」


 俺は、立ち上がっていた。

 もう、尻尾は振り下ろされている。ここからだと、多分間に合わないだろう。

 でも、俺は何度もエルに助けられてきた。

 創世主として。男として。

 エルを、絶対に助けるっ!

 固い地面を踏みしめ、走り出す。

 間に合え。間に合え、間に合え、間に合え、間に合え、間に合え!

 心の中で、ひたすらそう唱え続けて。

 初めての戦いでエルにしてもらったように。

 俺は、何のためらいもなくエルと尻尾の間に滑り込んだ。


「高良!」


 背中に鋭い衝撃が走る。やっぱり、エルみたいに無傷で助ける、ってわけにはいかなかったか……でも……これで……

 救護所のある方向に向けてガッツポーズをする。俺はそのまま、意識を失った。

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