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俺様、神様、創成主!?~いいえ、人間です~  作者: 慧斗
第3章 そして神様を中心に、世界は変わり始める
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第25話 癒しの天使の正体は

「ここだったよな」


 目の前に建つのは、あのカフェみたいな、おしゃれな建物。間違いない、救護所だ。


「失礼しまーす」


 誰もいない。廊下に血が落ちてるあたり、また負傷者が運ばれているのだろうか。


「なら、アリシアも忙しいかな……」


 俺の個人的な相談より、仕事の方が優先だ。忙しいのなら、諦めて研究所に向かおう。


「あれ?あなたは、前にもいらっしゃってた……」


 突然、そう呼び止められた。あわてて後ろを向くと、知らない女の人が立っている。


「アリシアに何か用かしら?」


「あ、ちょっと相談があって……。忙しいのなら帰るけど」


「アリシアなら、今汚れたタオルを洗いに行ってるわ。今人手は余裕があるし、相談があるのならいいわよ。アリシアは、あそこの部屋にいるから……」


 その女の人の説明が終わる前に、俺はアリシアがいるという部屋に向かっていた。


「アリシア!」


 ドアを勢いよく開ける。と、誰かが飛び出してきた。


「いたたたたた……」


「アリシア!」


「あ、高良さん!どうしました?」


「いや、ちょっと相談があって…………ん?」


 背中に妙な感触が……


「なんだ、これ?」


 背中の後ろにあったのは……胸パッド?しかも、こんなにたくさん!


「なんでこんなところに……」


 アリシアに視線を戻す。ん?


「アリシア、胸がしぼんでる」


「あ」


 アリシアの巨乳は、真っ平らになっていた。ん?んん?


「まさか、この胸パッドってアリシアの……」


「ちっ、違います!」


「でも、そうじゃないとこれは説明がつかない……。あ、アリシアって実は貧乳…」


「バレたら仕方ないか。俺は実は男……え、貧乳?あ、そうですそうです。実はそうなんです」


「ん?アリシア、今男って………ええええええええええええ!」


 アリシアが、男ぉ!?


「あーあ、バレちゃった。そうだよ。私、いや俺は実は男なんだ。アリシアなんてのは架空の人物。俺の名前はアランていうんだ。よろしく」


「あ、あぁ。よろしく……」


 口調ががらりと変わる。変化はそれだけでなく、ふわっふわの金髪がなくなった。それ、カツラだったのかよ!声の高さまで変わって、まるで別人だ。


 そういえば、最初にアリシアに会った時、俺思ったっけ。『こんな子、俺創ったっけな……?』って。

 その疑問も、今なら納得できる。俺が創ったのは、《アリシア》じゃない。《アラン》なんだから。


「な、なぁ」


「ん?何?」


「なんで女装してたんだ?」


 そこだけが気になる。いや、他にも気になることは山のようにあるけど。一番気になるのは、やっぱそれかな。


「んー、趣味?」


「趣味!?」


 女装が趣味…………変人?


「っていうのは嘘で、俺は癒しの能力を持ってるだろ?その力を使うには体にさわんなきゃいけないんだけど、男が女の体に触るっていうのは嫌がる人も出てくるんだよ。でも、女だったら同姓だしいいや、ってなるし、男でも女に触られて嫌な奴いないからね」


「へー……」


「それに、癒しの天使ってあだ名ついてるだろ?誰が言い始めたのか知らないけど、『天使』が『男』ってなんかあれじゃん?それで」


 そんな理由で女装なんかしてたのか……。大変だな……。


「それに、俺女装すると結構美人なんだよね。それで男を誘惑すんのって、結構ハマるんだよ。口調も『尽くす女』っぽくしたりして、性格も優しくして、いつも笑顔で。まあ、笑顔の裏側で腹黒いこと考えてんだけど、そうとも知らずに男はたくさん寄ってくるし」


 前言撤回。アランはまったく大変じゃなさそう。むしろ、楽しんでるみたいだ。


「それで?ここに来たのって、俺に何か相談があったからなんだろ?」


「ああ、そうそう。前に俺、エルっていう兵士と一緒に来ただろ?」


「エル……ああ、あのエレオノーラっていうなかなかの美人?」


「…………まぁ、そう。で、俺は創世主。創世主の仕事が何か、知ってるか?」


「予言、だろ?あとは自由気ままに生活してるんだっけ。良いよな~、そんな生活。俺もしてみたいよ」


「…………とにかく。それで、その予言で分かったんだ。エルが、明後日戦死する」


「あんな美人を、モンスターなんかとの戦いで亡くす?もったいない!」


「もったいないかどうかは置いといて。俺は、エルがその戦いで死ぬのを阻止したいんだ」


「いいぜ、協力する」


「早っ!」


「あんな美人、死なせるわけにはいかないもんな。さて、作戦練ろうか」


「あ、ああ……」


 やる気があるのは良いことだし、協力してくれるのはものすごくありがたいけど……なんか、アリシアの時とイメージが違いすぎて今だに戸惑ってるんだけど。


「早く座れよ」


「ああ……」


 釈然としないまま、俺たちは作戦会議を始めた。

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