第15話 チビドラゴンは、人間になりました
「え……?」
さっきの声は、まぎれもなく人間の声。そして、俺の声ともこの子の声とも違う。つまり……
「実験、成功……」
少女が嬉しそうにつぶやく、よく見ると、常に眠そうな顔がほんのりと赤く染まっていた。
「私の研究の内容は、〈モンスターを人間化させる〉というものなの……。あのキャンディーに含まれた成分がモンスターの中にある細胞と混ざり合うことで化学反応を起こして……」
「ああもう、難しい話はいいから!とにかく、くぅとナオが人間になったってことなのか?」
俺の問いに答えたのは、少女とは違う女の子の声だった。
「そうだよ!ボク、人間だよっ!」
「僕も……」
「くぅ?ナオっ?本当に、二匹なのか?」
まだ信じがたい。
「本当だよっ!ほらほら、見て見てっ!ボク、結構な美人さんだと思うんだよねっ!」
「本当に、人間だ……」
光が消えて、二匹―――二人が、完全に姿を現した。
片方は、中学生ぐらいの女の子。明るくて元気そうな顔で、確かに美人だと思う。でも、どっちかと言うと〈美人〉より〈かわいい〉の方が似合いそうだ。笑ったときに見せる真っ白な歯がまぶしい。
もう片方は、同じく中学生ぐらいの男の子。この子は落ち着いた雰囲気で、どこか大人びている。肩や足を動かしたり手をまじまじと見つめたり、人間になった実感がないようだ。後ろで一つにまとめた長い銀髪が、動くたびさらりと揺れる。
そして、困ったことに二人とも……
「くぅ、ナオっ!今すぐ服を着て来い!」
「あぁっ、ほんとだっ!見ないでっ!服、服どこっ?」
錯乱する女の子。
「そっか、いつも鱗に覆われてて裸だったから……」
冷静に分析する男の子。
「服はこっち……。ひとまず、白衣を着て……」
そんな二人に白衣を着せて、部屋の外に連れていく白衣の少女。
しばらくして、二人とも服を着て戻ってきた。