第14話 白衣の少女は、本当に研究者でした
「その代わりに、なんだけど……」
「おう、なんだ?俺に出来ることなら何でも言ってくれ!」
「そう……?じゃあ……」
白衣の少女は、そのだぼっだぼの白衣のポケットから丸いものを取り出した。
「この、キャンディー……。くぅとナオに、食べてほしいの……」
見た目はどこにでも売ってそうな、丸いキャンディー。そういや、アメとキャンディーってどこが違うんだろ?
その疑問には、白衣の少女が答えてくれた。
「アメは、デンプンを糖化して作った甘いお菓子、および砂糖やその他糖類を加熱して熔融したあと、冷却して固形状にしたキャンディーなどを指すの……。固形のアメを固アメ、粘液状のアメを水アメと呼んで、大別する……。作り方は、液状の水アメに砂糖など顆粒糖類を加糖して加熱熔解後、成形しながら冷却して固める方法が一般的だよ……。」
そこまで言い切ると、一旦息を吸ってまた喋りだす。
「キャンディーは、西洋風のアメ、砂糖菓子の種類のことなの……。キャンディ、キャンデーとも呼ぶんだよ……。こっちの作り方は、砂糖や水アメを主原料として、煮詰めたあとに冷やして固めるの……。副原料としてはクリームやバター、チョコレート、香料、増粘剤、酸味料などが使われてるよ……。煮詰めるときの温度によって、高温で加熱して硬く仕上げるハードキャンディーと、低温で加熱してやわらかく仕上げるソフトキャンディーの二つに分けられるの……。ハードキャンディーにはドロップ、タフィ、バタースコッチなどが、ソフトキャンディーにはキャラメル、ヌガー、マシュマロなんかがあるよ……。」
「あ、そうなんだ……」
まさかのウィキ○ディア並みの情報が返ってきたぁ……。なんでそんなに詳しく知ってるんだろ?さすが研究者ってことなのかな?でも、研究者でもそんなに詳しく知らないと思うけど……。どっちかと言うと趣味なのかも?
「とにかく、このキャンディーを食べてほしいの……」
この少女の長ゼリフの途中から寝ていたくぅが飛び起きる。
「うわっ、ちょっ、暴れんなよ」
『なにそれ、おいしそう!』って言わんばかりに飛び跳ねて、白衣の少女に飛びついた。
一方、じっと黙っていたナオは、『別に良いけど……』と言わんばかりに手に乗る。
「二人とも、ありがと……」
少女が嬉しそうに言う。この場合、〈二人〉って言い方で合ってるんだろうか……。
「くぅっ!」
「…………」
二匹がキャンディーをぱくっと食べる。その瞬間、二人の体がパァッと光った。
「くぅ!?」
「ナオ!」
「え?ちょ、ちょっと待て!おい、今食べたキャンディーってなんなんだ?」
「私の、研究中のキャンディー……」
「じゃあ、あの二匹は実験台?」
「うん……」
くそっ、この子が餌の代わりにお願いしてきた時点で気づくべきだった……っ!わざわざお願いしなくても普通のキャンディーなら食べさせればよかったのに、お願いしたってことは食べるのに許可がいるってことか……!
「ちなみに、なんの実験なんだ?」
あんなにモンスターが好きそうだったから、死ぬなんてことはないと思うけど……。
「見たら分かる……」
「え?」
「ほら……」
その子が指差した先では……くぅとナオが、強い光に包まれて見えなくなるところだ
った。
「くぅ、ナオっ!」
「大丈夫……。ちょっと変身するだけだから……」
「え?変身?」
思わず聞き返した、その時。
「きゃあっ!」
「うわっ」
二つの小さな影は見えなくなり、代わりに大きな影が現れた。




