第12話 二匹のチビドラゴン、命名
コンコン
ガチャ
「誰かいますかー?」
その部屋は、さっきいた所と比べると小さかった。でも、それでも学校の理科室ぐらいの広さだ。この研究所、どんだけ広いんだろ。
机の上にはノートパソコンや実験道具が所狭しと並べられていて、さっきの部屋に負けず劣らずで研究所っぽい。まあ、実際研究所なんだから当たり前かも知れないけど。
その部屋の隅っこにあるテーブルで。
白衣を着た女の子が、寝ていた。
「研究所の人かな……?」
でも、それにしては幼すぎる。いや、幼いっていう言い方は正しいのかな?
見た目からして、中学生ぐらいだろう。小学生かもしれない。だから幼いって言い方はちょっと違うかもしれないけど、でも、研究所で研究者として働くには幼いような……。
近くに寄って見てみる。うわ、まつげ長っ!肌白っ!髪、長っ!まあ、ぼさぼさだけど。寝てるだけなのに何かインドアな雰囲気が漂ってるような……。
「ん……」
「うわわっ、起きた!」
僅かに開かれた目と目があって、俺は思わず後ずさりした。
「誰……?」
「ごごごごめんなさいっ!起こしちゃってごめんなさい!」
身を起こした少女に平謝りする。……我ながら情けない。でも、あんなに気持ち良さそうに寝てたのに起こしちゃったのは、なんか罪悪感があるっつーか……。
「別にいい……。で、誰……?」
「たっ、高良といいます!」
年下相手に思わず敬語。ますます情けない。
「高良?知らない名前……」
不思議そうに首をかしげる。なんかぼんやりしてんのは、寝起きだからか、もともとか。
「ち、ちょちょちょちょっと相談したい事が、あって」
待て。落ち着け俺。このままじゃ何言ってんのか分からない。深呼吸してー、吸ってー、吐いてー。よし、ちょっと落ち着いた。
「それで?相談って、なに……?」
「あ、ああ。こいつらについてなんだけど」
頭と肩に乗っかってる二匹を指差す。
「モンスター……!」
その子の目が輝いた。何これかわいい。
なんだ?モンスター、好きなのかな?
「かわいい……。名前、なんて言うの……?」
「名前……。そういや、まだ決めてねぇな」
チビとか呼んでるけど、それは名前じゃないと思う。そんな名前、こいつらも嬉しくないだろうし。
「じゃあ、今決めよう……!」
「おう。いいぜ、別に」
「くぅ、くぅ!」
「ナオ!」
チビたちが、喜んでるような声を出す。
「じゃあね……。んーと……えーと……………………………………なにがいい……?」
結局人任せかよ!
「そうだな……。〈くぅ〉と〈ナオ〉、とか?」
「それ、鳴き声そのまんま……。手抜き……」
「思いつかなかった奴に言われたくはねぇよ!そうだけど!」
だって、それ以外に思いつかねぇもん。
「そだね……。この子たちは、なにがいいかな……?」
「くぅ!」
「ナオ!」
「〈くぅ〉と〈ナオ〉がいいってさ」
「ほんと……?自分の意見がいいからって、嘘、ついてない……?」
「つくかよ!」
そこまで執着する名前じゃねぇし!
「そっか……。じゃあ、〈くぅ〉と〈ナオ〉で、決定……」
「くぅ!」
「ナオ!」
「え、ガチでそれでいくの!?」
「あなたが言ったんでしょ……?」
「いや、そうだけどさ……」
本当に採用されるとは思ってなかったんだよ。
というわけで、二匹の名前は〈くぅ〉と〈ナオ〉になった。