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俺様、神様、創成主!?~いいえ、人間です~  作者: 慧斗
第2章 神様は、仲間たちと出会った
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第10話 そして、神様は夢を見る part2

『ワンッ!』


「え……?」


 次の瞬間。俺は、画面に信じられないものを見た。


「ミ、ケ……?」


 画面の向こうでは。

 俺とミケが、血だらけで倒れていた。


『はっ。これで三人。全員死んだか。さてと、金はどこにあるかなー?』


 男がナイフを投げ捨て、部屋の奥へと向かう。


「ミケが、庇った……?」


 ナイフが俺に刺さる直前。

 ミケは、俺と男の間に躍り出ていた。

 俺が目を瞑っていたから。男が、俺に集中していたから。

 俺は死んだと思われていたらしかった。


「そうだったのか……」


 まあ、俺はミケの血だらけだったし、ビビッて気絶してたしで死んだと思われても無理はない。

 ミケが、俺を守ってくれていた。そう思うと、今まで存在すら忘れていたことに罪悪感を感じる。


「おい、起きろ、俺!今のうちに逃げやがれ!」


 叫んでも起きない。画面を叩いても、何も変化はなかった。


「くそ、このままだとあいつに気づかれんぞ……」


 俺は生きてる。でも、その事実があっても不安を感じずにはいられない。


『さすが高級マンションだぜ!今見つけた金品だけで億はくだらねぇな!』


「戻ってきやがったか……」


 ジャボジャボジャボ


「なんだ……?なにかを撒いてる……」


 俺の疑問の答えは、すぐに判明した。


『ははははは……。これで、証拠は全部燃える……!これで完璧だ!』


「こいつ……家を焼こうとしてるのか!」


 それは覚えている。家が燃えたこと。なにもかも、一夜にして失ったこと。


『よし、こんぐらい撒きゃあ十分だろう』


 男はそう言い残すと、玄関から出ていってしまった。

 残されたのは、荒らされた部屋と、父さんと母さんとミケの死体と、気絶した俺のみ。

 でも、このままだと俺も死体になってしまいそうだった。


「おい、起きろ!起きろよ!」


 無駄だと分かっていても、叫ぶ。せっかく助かったのに気絶して死んだとか、どんだけマヌケなんだよ、俺。そんなマヌケな死に方はさせねぇぜ!

 ってカッコつけてみたものの、今の状況はどうしようもない。


「起きろ!起きろって!起き……あ!」


 俺の言葉が通じたんだろうか。


『え……あれ……?』


 俺が、起きた。


『え……?』


 事態がまるで理解できてないようだ。辺りを見回し、親の亡骸にしがみついて動かない。


『あちっ!』


 服に火が引火して、ようやく気づいたようだった。どこまでマヌケなんだよ、俺……。自分で見てて情けなくなってくる。


『燃えてる……?』


『そうだ』


「え……?」


 今、喋った声は、確か。


『お父さん!生きてたの?』


『縁起でもないことを言うな。まあでも、もう少しであの世行きだろうな。お前は逃げなさい』


『いやだ!』


 即答。


『陽?お前は無傷だ。それはきっと、神様がお前に逃げなさいと言っているんだよ』


 その神様、今俺だけどな。

 父さんが生きてたと知って、少し余裕が出てきたみたいだ。一分前の俺にはツッコミなんてありえない。


『いやだ!いやだったらいやだよ!僕、お父さんと一緒にいる!』


 見上げた根性だな。今の俺だったらきっと、死にたくなくて逃げると思う。うわ、我ながらゲス。


『陽?早く逃げなさい。これは命令だ』


『じゃあお父さんも一緒に逃げよ!』


『無理だよ。父さんはな、もう動けないんだ』


 どっかのドラマでやってそうな感動のシーン。これも、俺は忘れてたのか……。


『いやだよ!一人ぼっちなんていやだ!』


『陽!』


 父さんが怒鳴る。気がついたら、俺は窓の外へと放り投げられていた。


『お父さん!』


 叫びながら、落下していく。


『おい、男の子が落ちてきたぞ!』


 下に群がった野次馬の叫び。俺は、野次馬のうちの一人に受け止められた。


『坊や、大丈夫かい?』


 助けてくれた人の言葉を無視して、マンションへと向かう。


『坊や、危ないよ!』


「危ねぇぞ!」


 俺は、そのまま呆然とマンションを見上げていた。

 すべてが終わる。終わってしまう。


『助けてよ!お父さんもお母さんも、助けてよぉ!人を助けるのが仕事なんでしょ!』


 憧れだった消防士に、掴みかかる。


『無理だよ、坊や!この火じゃ、もう中に入れないんだ!』


 火が、すべてを焼き尽くす。幸せな日々、両親、たくさんの思い出、俺の帰る場所、かわいがってたペットのミケまで。


『お母さん!お父さん!ミケぇ!』


 俺の叫びも空しく、マンションは崩れ落ちる。


 俺に残ったのは、絶望と独りぼっちの未来だけだった。


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