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八士戦闘記  作者: 瑞沙
悪化する日々~第2章~
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真相

   「教孝を殺したアケドの間者め!!」

 華凜が生明を指差しながら、その言葉を華凜が発した瞬間、伊勢、生明は顔色を変えた。

 「アケドの間者? 教孝さんを殺した……?」

 伊勢の声に疑いの色がかかる。

 一方の生明は、俯いたまま微動だにしない。反省しているのだろうか。

 「本当なんですか、生明用務員」

 伊勢が聞く。華凜は唾を飲み込んだ。その時、廊下で複数の足音が聞こえた。誰が来たんだろうか。  気になった華凜は、生明に見られないように手を後ろに回し、手首をクロスさせ、両手を握りしめ、目を瞑る。遠近透視えんきんとうしの魔法だ。遠近どちらも見えるようになる魔法だ。しかし目を瞑ったり、両腕が不自由になるなど、デメリットが多い魔法である。

 廊下の様子が目を瞑った暗い視界に映る。ぼんやりとした視界がだんだんはっきりになる。まるで目を開けているかのように鮮明になった時に見えたのは華凜たちがいる個室に耳を澄ます……、響、千春、真弓だった。

 三人が個室の外にいる事で、生明が逃げても安心になった。聞いててね真弓、私がこいつを懲らしめるからね。

 そんな事をしていたら、生明がぶるぶると肩を震わし始めた。目を開いて視界を部屋に戻した華凜はえっ、何?と思い、一歩下がると、生明は顔を上げた。

 華凜と目を合わせた生明はニタァ……と笑い、大声を出して笑い始めた。けれど確かに生明の目には憎悪が見えた。

 伊勢は生明の胸倉を掴んだ。男はケタケタという笑いを止めた。

 「本当なのかと聞いてるんだ!!」

 伊勢は生明の胸倉をぐらぐらと揺らしながら生明に質問した。

 「本当だよ」 

 生明はフッと笑い、伊勢の手を離させた。

 胸倉を掴んでいた手を離された伊勢は、目を見開き、驚きの色を隠せないでいた。

 「まーぁ、そこの可愛い華凜ちゃんにばれちゃったし? 今頃隠してもしょうがないよねー、全部話そうか」

 生明はいつもの態度で言った。

 「舐めてんのか」

 伊勢はその態度が気に食わないようで、怒る時の低い声で言った。

 「なにー? い・せ・ちゃ・ん。全部話そうって言ってんのにその態度は?」

 と言いながら伊勢に上段の正拳突きをした。思わず華凜は目を瞑った。

 しかし伊勢は右手でそれを軽々止め、

 「いいから全部話せ」

 と、更に低く響く声で言い、生明の手首を捻った。生明はうっ、と呻き声を出し、冷たいパイプ椅子に崩れ落ちた。

 その瞬間、化けの皮が剝けたかのように、生明から笑顔が消えた。

 「話せばいいんだろ」

 先程からは想像がつかない程暗く、鳥肌がたつくらいの低い声だった。

 「そこのクソガキが言った通りさ、俺はアケドの間者だ。この学校にいる時よりずっと前からな。爺ちゃんは俺がアケドの間者って事は知らない筈だ。てめえらが告げ口していなければな」

 「何故、教孝さんを殺した?」

 伊勢が言った。

 「あいつは魔矢の名手として世界に認知されてるだろ?」

 「だから嫉妬してんのか」

 「はぁ? そんな事は言ってねえだろ? あいつは老いていれどいずれアケドの脅威になり、そして世界の脅威となる。そして……この戦争はポロニの勝利になる。はッ、そんな事は許せねえんだよ、アケドの敗北なんかな」

「……それだけの事で」

 「あ? なんだよクソガキ」

 「それだけの事で教孝を殺したの!? ふざけんなよ!!」

 憎悪が染み出る眼にギロリと睨まれ、華凜は口を閉ざす。

 「てめぇ、舐めた口聞いてんじゃねえよ。俺が人を殺すのはな、上から命令がきた時だけなんだよ! それがたまたまその真弓とかいう奴のジジィだっただけだ! 文句があるならアケドまで行け!!」

 「それでも殺しを実行するのはあんたでしょ!?」

 「これだからガキは……。わかる?ぼくよりえらーい人のめいれいはしたがうしか無いんですー」

 その時。

 ドアが大きい音をたてて開けられ、真弓がズカズカと入ってきた。

 「華凜、もういい」

 と言い、華凜の腕を引いて個室を出て行った。

 「え!? ちょっと、真弓!? まだアイツと話しが……」

 そんな華凜の言葉も真弓の耳には届かず、そのまま早足で歩いていった。

――――――

 「……さて」

 夕焼けの橙色の柔らかな光が入り込む部屋で、伊勢と生明は睨みあう。

 「二人きりになったけど、何か話してくれる事はない訳? 生明用務員」

 「ねぇよ。この事は極秘事項だ、誰にも言う訳にはならねぇよ」

 「ふーん……。あなた、華凜の時と随分態度が変わるのね」

 「俺は子供が嫌いだ。何でも知ったような顔して普通に他人や教諭を馬鹿にしてくる。それ以外にも嫌いなところはたくさんあるけどな、子供ってのは大人に勝てると思ってんだ、馬鹿にしやがって」

 「今までもポロニ国の人を殺害してたのか?」

 生明は素っ気なく窓のほうを向き、淡々と答える。

 「さっきもあのガキに言っただろ、上から命令が来たときだけだ」

 「そう……、本当は殺しが嫌いなのね」

 「……お前はわかってくれんのか?」

 伊勢は軽く微笑み、

 「わかってあげる」

 と疑いの声色も無く明るく言った。

――――――

 「ちょ、ちょっと真弓!」

 真弓は廊下を抜け、下駄箱を抜け、前に二人で授業をサボった場所、校内庭園までやってきた。

 「手、手痛いって」

 「あ、ごめん」

 真弓はやっと華凜の手首から熱い手を離すと涙をぽろぽろとこぼした。

 「え!? どうしたの真弓!」

 華凜は真弓の涙の意味が分からず、おどおどと真弓の前を右往左往した。

 「ごめん……」

 涙をごしごし擦りながら真弓は小声で謝った。

 「まだあいつに言う事あったのに、どうして止めたの……?」

 「ごめん、ごめんね……」

 真弓は鼻をズズーッと啜り、一息ついた。

 「嬉しかったんだ……。今まで私のために人に怒ってくれる人なんていなかったからさ……、もう十分だよ、華凜」

 「真弓がそう言うなら……、もういせっちに任せるよ!」

 「ありがとう、華凜。私、華凜に打ち明けて良かった。華凜と友達で良かった。華凜と……出逢えて良かった!!」

 華凜は思わずもらい泣きをしそうになったが、嬉しいなぁ、と笑って誤魔化す。

 その後生明は伊勢と秘密の契約をしたらしく、ひとまず置いておく事になった。もちろん生明は、アケドとの関係を一度絶つため、ポロ南にあるアパートの一部屋を借り、そこに住まわせる事になった。

 秘密の契約の内容が知りたかったが、伊勢が教えてくれずに終わった。

 真弓はしばらく遠縁の親戚家で休養をとるという事で、学校は休んでいる。まあ、真弓には長い休養が必要だと感じていたから、たっぷり休んでほしいと華凜は思った。


 こうして一段落ついた日、華凜が家に帰ると華凜の父が民族衣装……、ポロニの戦闘服をつけ、着替えや長期間もつ食料を大きいバッグに入れ、出掛ける準備をしていた。

 「お父さんどこ行くの?」

 「んー? ……ちょっとな」

 しかし華凜は、戦闘服を着ている時点でどこかに戦いに行くのだと察した。

 「頑張ってね!!」

 華凜は意味ありげに会話を終わらせ、一日を終わらせるようにぐっすりと眠った。


 予想通り、華凜の父は翌朝にはもう出掛けていた。

最期まで読んで下さってありがとうございます!

更新遅くなってごめんなさい(>< 多分次も遅くなります!気長に待ってくれたら超嬉しいです!! 華凜はなんだか掴めない子ですねー(お前が言うな

なんか人格がぼんやりしてるというか……。これからどんな子に成長してくれるのか楽しみです!! 次話も見てくれたら嬉しいです!!

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