追及
真弓の祖父が、弓道の名手でポロニ国の誇りである、教孝が、殺された――――……
「殺されたって、誰に? いつ?」
まだ涙を目に浮かべている真弓に華凜は訊ねた。
「昨日、家に帰ったときに、何も返事がなくって……、嫌な予感がしたんだ、台所の窓も割れていたし……。それで急いでじいちゃんの部屋に行ったら、もう……」
真弓は小さく鼻を啜り、話しを続けた。
「誰に殺されたかは、わかんない、でも黒いサングラスをかけて、どっかの地方衣装を着た男の人が家に入るのを隣の家の人が見たみたい……」
「黒いサングラス?地方衣装……」
華凜はいくつか思い当たるキーワードがあった。それが正しいのかはまだ判断ができない。
「なんかもう少し特徴はないの?」
「う~ん……、全部隣の家の人が見た事だからなぁ……。あ!」
真弓は何か閃いたように短く声を上げた。
「そういえば、刀を持っていたって。なんか……、白っぽい刀って言ってた」
「白っぽい刀かぁ……。とりあえず色んな人に聞いてみるよ!!」
真弓は華凜の言葉に目を見開いた。
「華凜、協力してくれるの?」
「あったりまえじゃん!! そうだ、その隣の家の人にどんな民族衣装を着てたか聞いてみよッ……」
華凜が言葉を言い終わる前に真弓は華凜に抱きついてきた。その体は細かく震えていた。
顔は華凜の肩に押し付け、涙を必死で隠そうとしているのが華凜にもすぐにわかった。
「華凜……、ありがと、ありがとう……」
声は涙声、鼻を絶えず啜りながら真弓は、華凜に抱きついたまま、感謝の言葉を述べた。
「当たり前でしょ……?ね、真弓」
華凜はもらい泣きするのを誤魔化すように真弓の頭を撫でた。
二人は何も無かったかのような顔で教室に戻った。真弓は目の周りが少し赤くなっていたが。
華凜は多分二人じゃ十分に犯人を探せないだろう、と思い、響と千春に協力を頼んだ。
「と、いうことで響、千春、犯人捜し手伝ってくれる?」
響と千春は一瞬顔を見合わせ、そして華凜のほうを向き、笑顔をつくった。
「「もっちろん!!」」
華凜はこの時、友達がいて良かったと心底思った。
その日から響と千春は、街行く人々に真弓から聞いた特徴の人物を見たことがないか聞き始めた。
華凜は真弓の家の近くの人に聞き込みを始めた。どちらも収穫がある日は無かった。
「まだなんにもわかんねーなぁ……」
響が伸びをしながら言った。
「聞き込みを始めて四日目なのにね……」
千春が欠伸をしながら言った。
「ごめんね、巻き込んでしまって……」
真弓が申し訳なさそうに言った。
「きっともうすぐわかるよ!」
華凜が四人を元気づけるように言った。
その後響、千春と別れ、華凜は真弓を自宅へ招いた。それは真弓があんな広くて大きい家に一人でいては寂しいだろうという華凜の思いやりだった。
「そうだ真弓、真弓の家の隣の家の人に直接聞いてみようよ!」
真弓は華凜が作った甘いココアを飲みながらいいね、と答えた。
――そして夜は明け、橙色の雲が肌寒い空を彩っている。
華凜がぼんやりと目覚め、部屋を見渡すと、ベッドにいたはずの真弓の姿が無かった。
「え!? 真弓!?」
華凜は眠気も忘れ飛び起きると、まずはトイレを見に行った。いない。
一階、二階……とすべての部屋を見たがいなかった。華凜は焦ってきた。まさか家に帰ってしまったの? 真弓の身になにかあったらどうしよう……。嫌な予感ばかりが頭をチラつく。
そんな予感をふり払うように駆け足で四階の階段を上り、屋上のドアを静かに開けた。
いた、真弓が。
「まゆ……」
真弓を呼ぼうと思ったけれど、ある事に気づいて中断された。
真弓は一枚の写真を眺めながら肩を震わせていた。泣いていたのだ。嗚咽を盛大に洩らしながら。
泣いてる姿を見たのも衝撃的だったのに、もっと衝撃的なものを見てしまった。なんとなく心の隅に罪悪感が募る。
真弓はずっと我慢してたんだ。あの時、教室に入ってきたとき、目に化粧がしてあったのは、泣いた跡を誤魔化すためだったんだ。真弓はお母さんもお父さんも失くして、辛かったのに、おじいちゃんまで殺されて、居なくなって……。なんで、真弓ばっかりこんな目に遭わなきゃいけないの? わからないよ、どうして? 私は泣いてる真弓の背中をさする事しかできなくって、悔しいよ、悔しい……。
華凜は無意識のうちに真弓の背中をさすっていた。真弓は華凜に体を預け、貪るように泣いた。
その後、華凜と真弓は真弓の隣の家の人に話しを聞いたが、これといった収穫はなかった。ただ、黒いジャケットを着ていた事しかわからなかった。その後学校に戻り、四人は学校での聞き込みを始めた。
「あ、いせっち!!」
「んー? お、華凜じゃん! どうしたの?」
「うちの学校で、白っぽい剣を持ってて、黒いサングラスと黒いジャケットを身に着けてる人いない!? 見なかった!? あ、あとどこかの民族衣装着てる!!」
華凜は今までに聞いた特徴を言ってるうちに忘れないように早口で言う。
「白っぽい刀……黒いジャケット……? うーん……」
伊勢は頭の中の記憶を引っ張り出すように手首をくるくる回しながらうーんうーんと唸りながら考え始めた。そして、閃いたようにあっと声を出して目を見開いた。
「教頭先生の孫の……用務員さん! あの人、いつも黒いジャケットも黒いサングラスもかけているし、最近教頭先生から白っぽい剣を貰って、よく持ってるわ。でも……それがどうかしたの?」
「その人が犯人なの!! 真弓のおじいちゃん、教孝を殺した犯人!!」
「……え? 何言ってるの?」
伊勢はあからさまに信じていないようだった。
「本当なんだってば!! まだその用務員さんいる!? 話しを聞きに行こう!」
半ば強引に伊勢を職員室に連れて行き、用務員を個室に連れてこさせた。
「あ、華凜ちゃんじゃーん? どうしたの? そんな怖い顔して、俺をこんなとこに連れてきちゃってさ~、あ、もしかして華凜ちゃん俺の事好きになっちゃったの? そうでしょ~?」
確かにこの用務員は頭に黒いサングラスをかけ、黒いジャケットを着用し、その中には民族衣装らしきものを着ていた。
名前は……生明。生明用務員。生明教諭。
「生明教諭、あなたは……、白っぽい刀を持っていますか?」
「白っぽい刀ぁ? ああ、持ってるよ。この前爺ちゃんからもらったんだ、それがどうかしたぁ?」
教頭から貰ったんだ……。
「あなたは、どこ出身ですか?」
「俺は生まれも育ちもアケドだ、今も住んでるぜ。てかさっきからなんなんだ? やっぱ俺に惚れたから色んな事知りたくなったのか?」
アケド……、つまりアケードタン出身。今も住んでいるという事はアケドが好きだからだろう。でなければわざわざアケドからこのポロ南まで働きに来るワケがない。好きでなければここ、ポロ南に引っ越すはずだ。
そして、今も住んでいるという事はアケドからも信頼され、ポロ南の内情を探るように言われているはずだ。八年以上その土地に住んでいると特別な階級が貰えて、アケドの中心に入れるようになる。そしてそこでポロニ国の内情を探れと言われたんだ、コイツは。
これで華凜の考えは確信へと変わった。
「生明教諭、あなたが……、殺したんですね」
「は?な、なんの事? 俺は誰も……」
華凜は大きい瞳を睨むように生明に向け……
「嘘を吐くな!! 教孝を殺したアケドの間者め!!」
遅くなってごめんなさい(><
早く書いたので誤字・脱字が多いかと思います、発見したらご指摘願います。
という事で…、ついに犯人がわかりましたね(笑)もう真弓の事を書いていると心が痛みますね、ホント。(自分で作ったコだけども。)
次話も見てくれると嬉しいです!!てかみて下さい(笑)
6月はテストとかいうなにそれおいしいの的なものがあるので更に遅くなると思います、ごめんなさい&ご了承願います。
では!!