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八士戦闘記  作者: 瑞沙
平和な日々~第1章~
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いざ、実技試験!!

快晴。雲一つない空に若々しい緑が生い茂る季節。

 ついに実技試験の日がやってきた。

 我が伊勢クラスは校庭に並び前クラスの試験が終わるのを待った。前のクラスは千春のいるクラスだ。

 千春のクラスは先生がランダムに生徒をあてて皆の前で試験をやらせるという形式だった。ちょうど千春の番だったため、運良く千春の試験を見る事ができた。当の千春は私にも響にも見られるという事になってしまい、露骨に嫌そうな顔をしていたが。

 千春は私に教えられるという事だけあって、見事に風を操り、近所のおじさんのカツラを吹っ飛ばし、校庭に小さい竜巻を作り、自分を少しだけ浮かせた。全部千春の魔法で。

 さすがに疲れた様子で、顔が少し青くなっていて息切れもしていたが、回復の呪文じゅぶんを唱え自身を回復させた。千春のクラスからも私のクラスからもたくさんの拍手と歓声が溢れた。先生も関心したように深く頷いていた。ふと響を見ると目を輝かせて誰よりも拍手をしていた。それに負けじと私も数えきれない拍手を送った。

 そして千春のクラスの試験が終わり、いよいよ伊勢クラスの番がやってきた。

 千春のクラスとすれ違うとき、千春は頑張ってね!と声をかけてくれた。嬉しかった。

 名前順にどんどん試験をしていき、どんどん緊張が高まってくる。そんな時、響の番がやってきた。  響は剣術・戦術コース|(略して剣戦コース)なので、相手がいないと試験にならない。

のでなんと伊勢教諭と対戦する事になった。

 伊勢が自分の金色のツタのような絵柄の装飾が施されている白いさやから磨き上げられた銀色の剣をゆっくりと出し、構えた瞬間、クラスから歓声が上がった。主に女子から。「いせっちイケメン!!かっこいい!!」「響くんも頑張って!!!」みたいな。

 伊勢が軽く頷いた瞬間、響はもの凄い速さで伊勢の目の前に向かって走り、その勢いに任せ、剣を振り下ろした。伊勢は軽々と受け止め、響を弾き返した。響が尻餅をつくかと思ったが地面に体がつく直前に後方宙返り、通称バク宙をし体制を整えた。クラスからは関心と応援の歓声が一層増し、伊勢は小さくほくそ笑んだ。

 響の繊細で豪快な剣使い、考え抜かれた戦術、鍛え上げられたカラダ。響の今までの努力が見なくてもわかる。実際は無理だけど。

3分くらい戦っていただろうか、響が半回転斬りをかまし、伊勢が軽くジャンプし避けた。

 それを狙っていたかのように着地した伊勢に足をかけ無常にも転ばせ、剣先を伊勢の首元に向けた。

 伊勢は一瞬目を見開き、すぐに目を瞑り、浅く頷き響の耳元で何かを言った。そして笑顔を見せた。

 はち切れんばかりの歓声と拍手が校庭に響いた。本当にすごくて、呆気にとられていた自分がいた。

 感動に浸るのも束の間、真弓の正確な弓術に目を凝らし、ついに自分の番がやってきた。

「じゃ、次、華凜さん!」

 伊勢の力強い声が脳内に響いた。

「は、はいッ!!」

 緊張でガチガチの体で皆の前に立ち、一礼をした。ぱらぱらと拍手が聞こえ伊勢が鳥操からはじめて下さい、と小さく言った。

 大きく深呼吸をし、指笛を鳴らした。ピィーーッという高い音が辺り一帯に響いた。

 と、同時に幾つかの樹木が大きく揺れ、大小様々な大きさ、様々な色の鳥が青い空一面に逆行により黒い影を落とした。クラスのほとんどの人が上を向いた。

 華凜はよし、と小さく声を出して両腕を前にまっすぐ伸ばした。と同時に空で自由気ままに飛んでいた鳥達は華凜の腕に順序良く止まった。ヒュッと口笛を吹き、右腕に止まっていた鳥達を順番に飛ばせた。

 華凜が鳥達を眺めながら右手の人差し指を空に向けて空中に円を書いた。すると鳥達は丸く円を描きながら滑らかに飛んだ。次に華凜が三角形を書くと鳥達も見えない三角形を描き飛んだ。

 最後に左腕の鳥も飛ばせ、空中で行進のように綺麗にクロスさせたりハートを描いたりし、鳥操のテストは終了した。伊勢はクラスで一番うまいわ、と大きな拍手をくれた。クラスの皆も拍手をくれた。

 では弓術をどうぞ、という伊勢の声を聞き、素早く戦闘用弓道着を装備し約30m先にある的を狙い、弓を構えた。一連の動作は教孝に教わったもの。自分では完璧にできたと思っている。

 体、顔ともに引き締め、十分に弦を引き、多少上下に調節をし、矢を放った。

 スローモーションに見えるような放物線を描き矢は的の真ん中……から少しずれたところに刺さった。 心の中で畜生、と呟いた。でも教孝に教わっていなかったら的になんか刺さらなかっただろう。

 では魔法を入れましょう、と伊勢は言った。実は魔矢のテストの魔法は教諭が選ぶ。なのでほとんどの魔法を熟知していなければならない。できれば火の魔法がいいけど……

 「じゃあ……、風の魔法をいれて下さい。」

 チッ、風の魔法か……。確かΦ(ふぁい)を空中に書いて息を吹いて念じれば……!!!

 ビュウワアアアァッ…という音とともに華凜の付近には強い風が吹き荒れた。

 華凜は強く念じ、真っ直ぐ吹くようにしたかったが、念じ方がおかしいのか、念じが足りないのか風は雑に吹き荒れたまま。

 「くそ……!」

 強い風のなかで無意識に呟き、無茶だとわかっていながらも弓を構えた。風に今までになく強く念じ…

 「いっけえええええぇッ!!!」

 叫び、矢を放った。

 風はいきなり真っ直ぐに吹きはじめ、矢に追い風をつけた。そのおかげか的の真ん中に勢いよく矢が刺さった。勢いがあり過ぎて矢は的を倒してしまった。

 「やったあぁッ!!」

 自然に出た喜びの声とともに、クラスメイトの皆はたくさんの拍手を送ってくれた。真弓もその一人だった。響は華凜にやったな!!と大きい声で言ってくれた。


 そうして実技試験はとても良い結果を残す事ができた――――……。



 今日も良い天気じゃのぅ……。こんな日はあの頃のようにこの広い道場で小さい真弓と一緒に弓道をしたいものじゃ…。

 わしもこんなに年老いてしまって…、だらしがない。きっと、もっと人を傷つける機会があれば弓道の実力を発揮できるんじゃが…。はぁ。おっと、溜め息は良くないな。

 そういえば真弓は今日テストがあるとか言っていたのぅ。うまくいったんじゃろうか。そういえば、華凜ちゃんとかいう子にも教えたのぅ。あの子は砂みたいに教えた事を吸収して、芯の強い子じゃったなぁ。真弓、いい友達できてよかったのぅ。きっとお前の死んだお母さんやお父さんも喜んでいるじゃろうな。もちろん、わしも嬉しいぞ。

 あぁ、ばあさんが死んでからわしも独り言が多くなったわい。更にだらしがないな。

パリ――ンッッ‼‼

 ん?ガラスの割れる音か?台所のほうかのぅ…。石でも当たったかいな?

タン、タン、タン、タン…

 人の足音…。誰かが入ったのかのぅ?真弓でも帰ってきおったか?それにしては時間が早いのぅ…。

バシィッ!!

 「お前が弓道の名手の一番手、教孝か?」

 アケードタンの地方衣装をまとい、黒いサングラスをかけた比較的声の高い男がそこにはいた。

 「誰じゃ?アケードタンの者か?」

 男の左手には窓から漏れる光にぎらぎら反射する長い白っぽい刀が握られていた。

 「……問答無用」

 男は逃げる隙も与えず教孝の左胸付近を刀で貫いた。

 「ウッ…!?」

 教孝は前に倒れこみ、男に体を預ける姿勢になったが、男は教孝を突き飛ばし刀をするりと抜いた。部屋に血飛沫が飛んだ。

 「貴…様……」

 それが教孝の最期の言葉だった。教孝は膝をつき、左腕から崩れ落ちた。血液はどくどくと流れだし、高級感ある暗い橙色の絨毯に染み込んでいく。

 男の刀は教孝の血液で赤く染まった。男は一人笑った。

 

最後までみて下さりありがとうございます!!

鳥操のシーンや魔法のシーンは書くのは大変ですが書いててとても楽しいです(笑)

火の魔法を自分でもしてみたのですが…、もちろん火は出ませんでした(笑)←馬鹿

次話も見てくれると嬉しいです!!

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