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“the imagination world in you”
〈愛する人に近づきたい、最初は寄りそって歩きたくなる、もっと近づきたくなって手を握る、もっともっと近づきたくなって唇を重ねあう、もっともっともっと近づきたくて舌を絡ませる、それでもまだ、愛しい人が遠い、もっと近く、もっともっと近づきたい、そして人は肌を重ね、一つになる、愛しい人が中にいる、愛しい人の中にいる、愛する人と混じり、一つになる、距離が0になる、なのにどうしてだろう、愛する貴方との距離が、こんなにも遠い〉
取り戻す。
絶対に取り戻す。
一度目は諦めてしまった。
しかし。
二度目は諦めない。
どんな手段を使ってでも、俺はアイを取り戻す。
あの日、いきなり消えてしまったアイを俺は絶対に探し出すのだ。
悲壮とも言える決意を胸に学園に戻った俺は、まず秋庭に協力を頼んだ。
「秋庭、付き合ってくれ」
「俺にそんな趣味はない」
ちょっとしたすれ違いもありつつ、秋庭の協力は得られた。
「でっ、一体何処からあの子を連れ戻すんだ」
「カレイドスコープ」
自信はないが、心あたりはそこしかない。アイは自分がこの世界には元々存在しないと言っていた。
つまり、何処かには存在しているのだ。
「カレイドスコープか? 同じ事の繰り返しになるかもしれないぞ」
「でも、他にあてはない」
「ふん。溺れるものか。まあいいさ、協力はしよう」
口では納得出来ない様子の秋庭であったが、彼も探すならばカレイドスコープしかないと考えていたようだ。
「まっ、あいつも居るかもしれないしな」
嘘ぶきながらも、秋庭は真剣に彼女を探すつもりであるらしい。胸が僅かに痛んだ。
すでに彼女を諦めている俺に比べて、秋庭が純粋に見えた。俺は鷹乃宮を好きだった筈なのに今はもう、アイの事しか頭にない。所詮、俺が抱いていた鷹乃宮への思いはその程度だったのだろうか。
俺にとっての鷹乃宮はどんな存在だったのだろう。初めて会った日には、鷹乃宮をどうとも思わなかった。少し変わった子だったから印象に残ったくらいだ。
だとすると鷹乃宮が研究に協力するようになってからだろうか、彼女を意識するようになったのは。
そうだ、確かあれは初めて俺の両親について話した時だ。俺の生い立ちを聞くと誰もが同情するのに、鷹乃宮は何の反応も示さなかった。




