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 だから叫ばなくていい。君の孤独を癒すためなら、君が何処に居たって俺が探しだすから。

「いやぁ! レイジさん! レイジさん!」

 ああ、やっと俺の名を呼んでくれた。

 アイ……アイ……俺はずっと君に逢いたかった。逢って伝えたい事があったんだ。

 それは。


 鷹乃宮から連絡を受けて、秋庭が広場に駆け付けた時にはすでに全てが終わっていた。広場にはざわめきが満ちている。

 その騒めきの中央にアイがいた。誰かを胸にかき抱き、しゃくりあげて泣いている。秋庭は嫌な予感に苛まれながら、急ぎ足でかけより、天を仰いだ。予感どおり、アイに抱き抱えられていたのはレイジだ。

 首筋から血を流し、完全に意識を失っている。秋庭に気付いてアイが顔をあげた。銀の瞳からいくすじも涙を流し、唇をわななかせる姿にレイジはもう手遅れなのではないかと疑う。

「秋葉原さん、レイジさんが」

 泣き声混じりの訴えに、秋庭は慌てレイジの首に手を伸ばした。まだ手遅れと確定していないのだ。やれる事をやらねばならない。

 指先に弱々しい振動が伝わる。今にも止まってしまいそうだが確実にレイジはまだ生きていた。

「もう救急車はよんである」

 聞き覚えのある声に驚く。見やると白衣を纏った如月先生が立っていた。止血するためか、レイジの首に手を伸ばす。

しかし、それよりも早くアイの手がレイジの首に押しあてられた。

アイは男に明らかな敵意を向けている。

 秋庭はいぶかしんだが、すぐに気付いた。傷ついたレイジに、どこの誰とも知らない奴が触れるのは嫌なのだろう。

 如月はさして気を悪くした素振りもなく、行き場を無くした手を引っ込めた。

「如月先生」

 秋庭が呼びかけた。如月はこともなさそうに肩をすくめる。

 遠くからサイレンが聞こえてくる。

 果たして間に合うのだろうか。もし間に合わなかったら、アイはどうなるのだろう。アイは法的にレイジの所有物だ。基本は親族に相続される。秋庭は奇妙な形の笑みをこぼした。レイジが自分に親兄弟の話しをした事はない。


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