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銀髪に黒い瞳はかなり目立つ、細身な身体も手伝ってアイは妖精みたいに可憐だ。よからぬイタズラをする輩もいるかもしれない。

 学校に通い始めたアイの隣には、必ず鷹乃宮がついていた。アイも鷹乃宮を気に入ったようで、いつも鷹乃宮と手を繋いでいた。川原学園の制服を着こんだアイは上機嫌で校内を闊歩した。

 世間ずれしてないアイは母性本能をくすぐる存在であるらしい。たちまちのうちにアイは女子生徒達のアイドルとなっていた。

 男子が近づこうものなら蹴りが飛んでくる始末。開発責任者である僕は一応アイにちかよれたが、何故か女子一同はやたら警戒した。

 いわく、あんたが一番信用ならない。

 基本的に僕は放任主義なので、学校が終わるまでアイに会わないようにした。もっとも、アイと顔を合わせると指差しされて『変態さんだぁ』と呼ばれてしまうので近寄りにくいのもあるが。

 最初僕の呼び名をからかっていた秋庭も自身が『オタクの秋葉原さん』と呼ばれるにいたり、遠くからアイを見守る事にしたらしい。

 そんなわけで、アイとふたりっきりになれるのは下校時刻が過ぎてからである。

 広大な川原学園を見下ろせる屋上で、それこそ恋人同士の密会みたいに俺達は逢瀬を重ねたわけた。

 憂鬱な猫みたいに手摺りに両腕でもたれ、腕の上に顎をのせたアイを俺は厭きもせずじっと眺めた。夕日に陰影を刻まれ、銀髪を夕に染めてたなびかせるその姿を目に焼き付けるために。

「ヘンタイさんはどうしてわたしを連れ出したのですか?」

 いい加減その呼び名はやめて欲しいのに何度言っても聞かない

「夢を見たんだ」

 どこともしれない場所で女の子が呼びかけてくる夢を。

「君は俺を呼んでいたのか?」

 実のところ、僕にとってはかなり自制心を必要とする問いだった。

 アイがあの世界で誰かを呼んでいたのは確かだ。だが、それが僕であったのかは不確かである。

 アイはふっと息をもらすと顎を腕につけたままこちらを見上げた。真珠のごとき黒瞳が、今は黄金色に輝いている。

「聞こえたのなら、わたしはヘンタイさんを呼んでいたんだと思います」

 それは答えになっているのか?


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