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「また会いましょうね、秋葉原さん」
何故かにっこり微笑みアイが言う。
「いや、君までなのか」
沈痛な面持ちで空を見上げる秋庭。
どこかしら、哀愁がただよっていた。
奈瑞菜さんは不在だったので預かっているスペアキーを使い、部屋に入らせてもらった。アイは早速洗面所に入る。
ふむ。手持ちぶさい。
取り敢えず、床に腰を落としてテーブルに肘をついた。
自然に視界の中に小さな本棚がはいる。なんとなく背表紙を見てみる。
『秘技百八手』『今日から始めるベッドタイム』『陰の扉』『着衣の極意』……奈瑞菜さんらしいラインナップだな。
「あのー、レイジさーん」
呼ばれて振り向く。そこには。
「お湯の出し方がわかりません」
バスタオルで胸元と下を隠したアイが立っていた。タオルを身体に巻き付けるのではなく、ただ胸元にタオルを押し付けている。
そのため滑らかなくびれや小ぶりなお尻が見えてしまっていた。
意気地なしと呼びたければそう呼べば良い。
俺は咄嗟に目を反らしていた。
さすがに、ここまで見せつけられると我慢するのは無理だ。せめて見ないようにしないと押し倒してしまう。
「レイジさん?」
訝しげな声を出し、アイが俺に近付いてくるのが気配でわかる。あくまでも目を反らしたまま、アイをよけて洗面所にはいる。
「此処のシステムは一世代前のものでね」
話しながら自分の心を誤魔化す。
「点火プラグを押しながらここのボタンを」
手が止まった。
既に点火されている。
罠だと理解した時にはアイが後ろから抱きしめてきていた。柔らかい胸を背中に触れさせ、腰も密着させてくる。
「ちょっ」




