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アイを抱けなくても。
悪くはない。
そう思えた。
“カレイドスコープ”
〈アイだけを愛して、アイだけを抱きしめて、アイだけを見つめて、アイだけを愛して下さい〉
俺の人生は人類としてみればただのうたかたに過ぎないのだろう。だが俺個人にとっては一瞬で消え失せるうたかたなどではない。
一瞬で消えてくれれば随分楽になれるのだが、まあないものねだりをしても仕方ない。
昼下がりの公園にて、俺は暇を持て余していた。アイはなにやら子供達にまじり砂遊びなどをしている。
俺はというとベンチに腰掛けぼんやりとアイを眺めていた。
平和で、そして暇な一時である。
実際問題、俺はかなりの暇人である。持て余す時間を更に持て余している。そうでなければ公園になど来ない。散歩がてらに公園に行きたがったのは当然ながらアイだ。断る理由もないので大人しくついてきたわけだ。
もっとも、良い機会なので俺もちょっとした用事をすませようと思った。
「急に呼び出すなよ。俺はお前と違って学校があるんだ」
「すまない。秋葉原」
「秋庭だ!」
いつものやりとりをすませ、さっそく本題に入る。
「この間頼んだもの、しらべはついたか?」
秋庭は隣に腰を下ろし、持っていた紙袋からおもむろに薄っぺらい紙束をとりだした。
「なんとゆうか、アイって名前が多すぎるな。まっ、偶然だとは思うが」
紙束を受けとり、パラパラとめくってみる。
やはりな。
「冬馬あいは、冷凍冬眠施設にいるのか」
「ああ、きちんと見てきたから間違いない」
一昔前まで成功率の低さからけんえんされていた冷凍睡眠技術も、昨今では安定した技術になった。冷凍冬眠施設には現代の技術では直せない病を抱えた人々が眠っている。
ふと、疑問が立ち上る。




