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「なあ、その知り合いがどうしてるか調べてくれないか」
「うん? ああ、なんとなく状況は理解した。調べておくよ」
「あのさー、男二人でひそひそ話しなんて不健全だとおもうなあ」
しびれを切らしたらしい奈瑞菜さんがじとめで睨んでくる。
「しかもなんか女の子の範疇に入れてくれなかったような」
「はは、気のせいですよお嬢さん、それではお暇させていただきます」
「なんか逃げられたようなきがするなあ」
ぼやく奈瑞菜さん、ややっこしそうなのでしばらくほおっておこう。
秋庭と別れて俺は家に戻ることにした。
奈瑞菜さんとアイはもう少しうろうろしてくるらしい。アイは一緒に帰りたそうだったが、俺の気持ちを察したのか、ついてこなかった。
まだ午後になったばかりの空が高い。落ちる日光は皮膚を焼きそうな熱さだったが、時折吹く冷たい風が熱気を払った。
帰り道にある我が母校、川原学園。二度と近づきたくなかったが、仕方ない。アイが何者なのか調べるには此処から始めるしかないのだから。
幸い学内に人影はなかった。川原学園は小学、中学、高校、大学からなるエスカレーター式の学校である。
さすがに休校なのは高等部だけのようで、どこからともなく、笛の音や喧騒が聞こえてくる。
アイの外見からして調べるなら生徒名簿だろう。たしか図書室のパソコンから閲覧できたはず。
図書室も人影はあまりない。司書にパソコンの使用許可をとってさっそく『アイ』という名前で検索をかけてみる。検索結果は数百件。とても一つ一つ潰していく気にはならない。検索範囲を五年前までにしぼってみる。すると20件までにへった。この数ならさして手間にもならない。一人一人写真を確認していく。
知らない顔の中に一枚だけ知った顔があった。この人がアイなのだろうか? 記録上は休学扱いとなっておりその理由までは書かれていない。
名前をネットで検索してみる。明らかに関係なさそうな検索結果を無視していくと、交通事故の新聞記事にたどり着いた。しかし、これ以上の情報は落ちていない。
となると、少しばかり非合法な手段を使うしかないだろう。




