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もはや反論する気力すらわいてこない。
「買い物は終わりましたか」
奈瑞菜さんはにゅふふと笑った。
「おうともよ! お代は見てのおかえりだ! とくと拝見しやがれ!」
無駄に勢いよく指差された先を見やる。
天使がいた。
きらびやかな銀髪。
ミニスカート風の可愛らしいワンピース。
両手を身体の前で恥ずかしそうにもじもじさせて、上目遣いで俺に問いかけるような視線を投げかける。
「あの、いかがですか?」
「……綺麗だと思うよ」
スカートから伸びた白い素足に見惚れて少しだけ返事が遅れた。
「ひゅーひゅー。にいさんにいさん、鑑賞料は高いよー。お触りはもっと高いよー。ワタシはちょっと安いよー。買いどきだよー」
やたらテンションの高い奈瑞菜さんは無視した。この人をまともに相手してはいけない。
「かわいくないですか?」
なにやらシュンとしてアイが言う。
「え? いや、可愛いよ」
「どれくらいですか?」
「どれくいって言われても」
「押し倒したいくらい可愛いですか?」
小首をかしげながらいう台詞ではないと思うのだが。女の子はミステリーだ。
「押し倒したくなるくらい可愛いよ」
半分投げ遣りに言ってやる。するとアイは微妙に頬を赤らめ、腕で胸を隠すようにして身をひねった。
「わたし、襲われちゃいます?」
「にいさんにいさん、特殊プレイは追加料金だよー」
なんで俺の周りはこうゆう女性ばかりなのだろうか?
ハーレムには違いないがなにか納得出来ない。
騒いでいたせいで周りの注目を集めてしまったようだ。
微妙に視線が痛かった。平日の昼間にこんな所にいるのはそもそも場違いだ。俺の年齢なら今の時間帯は学校にいなければならない。日本の学費は無料なので余程特殊な事情が無い限り、みんな高校に通っている。
「ご飯でも食べにいこうか?」
俺の居心地の悪さを察してくれたらしく奈瑞菜さんが提案した。もちろん断る理由などない。




