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 気のせいか、なんであんたまでいるの? と言われたような。いなかったら、あなたがアイに何かするからだと視線で答えておく。

奈瑞菜さんは聞こえるか聞こえないかくらいに舌打ちした。

「あのあの、ちょっと苦しいです」 

 身動ぎするアイを奈瑞菜さんは存外素直に解放した。

 上から下までアイを撫でまわすように見て、ほうっと物憂げにため息。

「アイちゃん」

「はい?」

 アイは可愛いらしく首をかしげた。長い銀髪が動きにあわせてさらっと揺れる。

「服はこれしかなかったの?」

 アイは俺のジャージを来ていた。当たり前だが、俺は女物の服など所有していない。

「レイジ、何よこの味も素っ気も色気もないジャージは」

 ジャージに素っ気や味や色気を求めるな。非難がましい口調で奈瑞菜は続ける。

「アイちゃんをいくつだと思ってるの? 花の十代よ? 女の子が一番輝いている時期なのに、野暮にもほどがある」

「だったら服貸して下さいよ」

 アイは奈瑞菜の胸元と自身の胸を一瞥ずつしてから俺に向き直る。

「何かの嫌みですか?」

「いや、そんなつもりは」

 確かにちょっとというかかなり胸のサイズが違うが、着られないこともないと思う。どうやらコンプレックスに触れてしまったらしく、アイはじとっとした瞳で睨んでくる。

「大きさなんて、こだわらなくてもいいと思うけど」

 いざとなったらすぐ逃げられるように微妙に重心を後ろに傾けながら言った。

「それってわたしに対する嫌み?」

 今度は奈瑞菜さんが睨んできた。まったく、どうしろというのか。しばらく睨んで飽きたのだろう。奈瑞菜さんはアイの細い腕を掴み、玄関に引きずりこむ。短い悲鳴を残してアイはあっけなく部屋の中へ。そして扉が閉ざされた。

「えーと、奈瑞菜さん? 開けて貰えます?」

 アイと奈瑞菜さんが二人っきりになったら、まあ、なんだ、大変だ。やっぱり助けるべきだよな。

「まだ開いてるけど」

 少しだけ開いたドアから奈瑞菜が顔をだす。眉間に皺を寄せていたが口元は笑っていた。

「着替えさせるけど、みたいの?」

 首を横にふる。


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