アーカイブ 塚原 紗枝の日記
七月 某日。
今日も、あいつは走っていた。名前は、えっと、忘れた。ぶっちゃけ、東条くん以外の男に興味がなかった。
嘘嘘。流石に幼馴染のことを忘れたりはしない。堤森だ。
性格は根暗で陰湿。口を開けば大口をたたく割に根性なしで、なんか知らないけどクラスの女子に気に入られてると思ってるみたい。
実際は、クラスメイト全員に嫌われていた。一学期が終わるころには一人ぼっちだし。
そんな性格だからか、中学校の友達もいない。なんか、マニアックな友達はいるみたいだけど。
そんなやつ。
今回、なんか知らないけど走ってるけど。
いつまで続くのやら。
七月 某日
………結構、頑張るものね。今日も走ってた。意外と、フォームなんかも気にしているようで、少しずつだけど、早くなっている。
むぅ。しっかりと準備運動しているみたいだし。有酸素、無酸素考えての練習っぽいし。………マジで?
なんか、他の人にも挨拶しているみたいだし。
変なの。
七月 某日
今日は東条くんと学校で会っちゃった! 部活動の帰りなんだって!
「あ、練習がんばってるね、塚原さん」
ちょっと、仲がよさそうな女の子と一緒にいたのが気になるけど、やっぱり格好いいよね! あ~あ、彼が彼氏だったらいいのに。ま、陸上が命のアタシには、関係ない話か。
大したことではないのだが、近所のごみ屋敷がきれいになったらしい。まぁ、あの堤森の家なんだけど。
チラッと家の前を通り過ぎたとき、掃除しているのが見えた。なんか、一回りおおきくなったみたいだった。
肌は少し焼けてたし、タンクトップとジャージ、タオルを頭に巻く格好なんて、生まれてこの方見たことがなかったし。
でも、髪の毛切ったんだ。少し似合うかも。
七月 某日
今日も、あいつは走ってた。ほんと、よく続くわよね。結構、見慣れた。
なんか、サッカーグランドで練習していた小学生と鬼ごっこしていたし、優しいのかも。
あ、でもあんな根暗、こっちからお断りだけどね。
七月 某日
今日は、季節外れの雨だった。あ~、練習もできないし、憂鬱。………勉強しようかな。
ふと、外を見る。家からは堤防が見えるんだけど。
なんか、あいつが走っている気がした。
七月 某日
あいつは今日も、走っている。最近、近所ではそれなりに評判がいいらしい。藩の会合なんかがあったりするらしいんだけど、あいつが出てくるそうだ。
なんとなく、気になんだよね。
っていうか、振り返ってみると日記があいつのことだらけじゃん。甘い思い出でも作れる相手を作って、思い出なんかもいっぱい作らないとなぁ。
東条君なんか、最高なんだけど。
七月 某日
………予想外の事が、起きた。
あいつ、意外と、凄い奴だった。