【第壱話】 女子的エモーショナルストリップジャーナル!
「ポテトチップスはコンビニなの!」
美咲は唐突に云った。
「え、どういうこと?」
佐代はキョトンとなりながらも、訊き返す。
「だから、ポテトチップスはコンビニなの!」
「ポテトチップスはコンビニで買えるっていうこと?」
「ちがう!」
美咲は首を横に振った。
「ポテトチップスはコンビニなの。でも、からすみはデパートなの。これが、幸せを掴むための女子的エモーショナルストリップジャーナルよ!」
「……えっと」
佐代は返答に窮した。いつもの美咲のおふざけかな、とも思った。だが、いつになく彼女の表情は真剣で、冗談を云っているようには思えない。
(もしかして、これは私に何かを訴えようとしているの!? だとしたら、考えなきゃ! 美咲が何を云おうとしているのか――)
佐代は考えてみた。けれど、どう考えても美咲の気持ちが分からない。
「もう美咲、何が云いたいのかさっぱり――」
云いかけて佐代ははっとした。美咲の真剣な表情、まっすぐに自分を見つめる眼差し――。
(私は、美咲のことを頭で理解しようとした。でも、そうじゃない。気持ちで通じ合わなきゃ、友だちとは云えないよね。――ああ、私はそんな当たり前のことさえ、今まで気づかなかったんだわ)
佐代は自分を恥じた。そして、美咲にとびっきりの笑顔を向けて云った。
「そうよね、ポテトチップスはコンビニ! でも、からすみはデパート!」
すると、美咲もおもむろに笑顔になった。
「そう。これが幸せを掴むための――」
「女子的エモーショナルストリップジャーナル!!」
ふたりは声をあげて高らかに笑った。その際、見上げた空は青く、雲ひとつない快晴であった。そしてふたりは手を取り合い、スキップをして夜の街へと消えていった。
世間にノロウイルスが流行りだしたのは、その直後のことである――。