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死にたい少女とチョコパイ聖戦  作者: 五条ダン
第二話 死にたい少女と強姦青年
8/8

NGシーン


【NGシーン】 (強姦魔が少女を連れ去るシーン)


・ボツ理由 一人称で書いたものの、男にどうしても感情移入できない



 ***** *****

 


 ああ、

 俺は、そう、俺は神に選ばれた人間だ。


 だから、俺だけに許されることがある。


 純心無垢な少女を穢すことだ。俺はそのためだけに生きている。



 今までに三十五人の少女を襲った。服を切り裂き、魂を切り裂いた。

 少女の泣きはらした顔を見るときが、唯一の至福だ。


 真っ白なミルクのなかに、一滴の墨汁を零れ落とす。

 決して取り除くことのできない、絶望を。

 背徳感、高揚感、超越感、俺だけが味わえる、俺だけが許された快楽。


 もちろん、警察には絶対に捕まらない。

 なぜなら俺は、神に選ばれた人間なのだから。



 次のターゲットを見つけるために、裏道を歩いていた。

 そしてひとりの少女を見つけた。


 年は中学生くらいだろうか。

 少女は真っ白なブラウスに黒のジャンパースカートだ。

 しゃがみこんで、なにやらひとりごとをつぶやいている。


 長い髪の芯のさきまで艶のある、俺が穢すにふさわしい少女だった。



「お譲ちゃん」

 甘い声で呼びかける。


「なあに、おにいちゃん?」

 少女は笑顔で振り返った。


 おにいちゃんだと!? ふっ、なかなか分かってるじゃないか。



「お譲ちゃんに、とってもいいものをプレゼントしようと思ってね」


「ほんと! それってもしかしてチョコパイ?」

 少女は目を輝かせた。ほんの欠片も疑うようすはない。

 俺の力をもってすれば簡単なことだ。



「そうだよ、よくわかったね。これからチョコパイのたーくさんあるところに招待するから、ついておいでよ」


「わーい」



 まてよ……。

 頭のなかで、赤い警告灯がくるくると回った。目の前にいる少女は、中学生のように見えるが……見かけに対して精神年齢が低すぎる気が……いや、それよりも



「おい、これは捨てていけ!!」


 強引に、少女の手からボロ雑巾をひったくる。


 なんだこれは、マフラーか?

 汚らしい、俺がこれから穢すための少女に、不必要なアイテムだった。


 抵抗する少女の頭を押さえつけ、俺は汚れたマフラーを放りなげた。

 マフラーはひらりと宙を舞い、どこかの物陰へと姿を消した。


 嫌がる少女の腕を無理やり引っ張り、どんどん足を進める。少女は強張った表情で、もう片方の腕はスポーツバッグを落とさないように必死に抱え込んでいるようだった。


 まあ、いいだろう。バッグの中身は知らないが、少しは希望を残しておいた方が面白い。



 ここから先は、行き止まりだ。

 周囲は買い手のつかない古家と空き倉庫に囲まれている。


 誰かに見つかることは決してない。

 あるのは、絶望だけだ。



 ***** *****

 


【あとがきのようなもの】


 これは本当に、私が書いた小説なのだろうか。


『死にたい少女と強姦青年』を読み返したとき、そう思った。


 冷たくて暗い。

 悲しくて、救いようのない。

 

 いったい私のなにが、こんな作品を書かせたのか。


 作者の気持ちがまったくもって理解できなかった。

 理解できないどころか、許し難かった。


 ただ私は、チョコパイが好きな女の子の物語を描きたかっただけなのに。


 頭を抱えて悩んでいると、たったひとりの友人である江安くんが肩をぽんと叩いて言った。


「宮野夜美は、きっと何かを伝えたくて生まれたんだ。キミは彼女を信じなければいけないよ」


 死にたい少女が何のために旅を続けるのかは分からない。

 知るためには書き続けなくてはいけないのだと、私は決意した。


 神に選ばれる、そのときまで――。



【NGシーン/あとがきのようなもの】 (完)



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