NGシーン
【NGシーン】 (強姦魔が少女を連れ去るシーン)
・ボツ理由 一人称で書いたものの、男にどうしても感情移入できない
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ああ、
俺は、そう、俺は神に選ばれた人間だ。
だから、俺だけに許されることがある。
純心無垢な少女を穢すことだ。俺はそのためだけに生きている。
今までに三十五人の少女を襲った。服を切り裂き、魂を切り裂いた。
少女の泣きはらした顔を見るときが、唯一の至福だ。
真っ白なミルクのなかに、一滴の墨汁を零れ落とす。
決して取り除くことのできない、絶望を。
背徳感、高揚感、超越感、俺だけが味わえる、俺だけが許された快楽。
もちろん、警察には絶対に捕まらない。
なぜなら俺は、神に選ばれた人間なのだから。
次のターゲットを見つけるために、裏道を歩いていた。
そしてひとりの少女を見つけた。
年は中学生くらいだろうか。
少女は真っ白なブラウスに黒のジャンパースカートだ。
しゃがみこんで、なにやらひとりごとをつぶやいている。
長い髪の芯のさきまで艶のある、俺が穢すにふさわしい少女だった。
「お譲ちゃん」
甘い声で呼びかける。
「なあに、おにいちゃん?」
少女は笑顔で振り返った。
おにいちゃんだと!? ふっ、なかなか分かってるじゃないか。
「お譲ちゃんに、とってもいいものをプレゼントしようと思ってね」
「ほんと! それってもしかしてチョコパイ?」
少女は目を輝かせた。ほんの欠片も疑うようすはない。
俺の力をもってすれば簡単なことだ。
「そうだよ、よくわかったね。これからチョコパイのたーくさんあるところに招待するから、ついておいでよ」
「わーい」
まてよ……。
頭のなかで、赤い警告灯がくるくると回った。目の前にいる少女は、中学生のように見えるが……見かけに対して精神年齢が低すぎる気が……いや、それよりも
「おい、これは捨てていけ!!」
強引に、少女の手からボロ雑巾をひったくる。
なんだこれは、マフラーか?
汚らしい、俺がこれから穢すための少女に、不必要なアイテムだった。
抵抗する少女の頭を押さえつけ、俺は汚れたマフラーを放りなげた。
マフラーはひらりと宙を舞い、どこかの物陰へと姿を消した。
嫌がる少女の腕を無理やり引っ張り、どんどん足を進める。少女は強張った表情で、もう片方の腕はスポーツバッグを落とさないように必死に抱え込んでいるようだった。
まあ、いいだろう。バッグの中身は知らないが、少しは希望を残しておいた方が面白い。
ここから先は、行き止まりだ。
周囲は買い手のつかない古家と空き倉庫に囲まれている。
誰かに見つかることは決してない。
あるのは、絶望だけだ。
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【あとがきのようなもの】
これは本当に、私が書いた小説なのだろうか。
『死にたい少女と強姦青年』を読み返したとき、そう思った。
冷たくて暗い。
悲しくて、救いようのない。
いったい私のなにが、こんな作品を書かせたのか。
作者の気持ちがまったくもって理解できなかった。
理解できないどころか、許し難かった。
ただ私は、チョコパイが好きな女の子の物語を描きたかっただけなのに。
頭を抱えて悩んでいると、たったひとりの友人である江安くんが肩をぽんと叩いて言った。
「宮野夜美は、きっと何かを伝えたくて生まれたんだ。キミは彼女を信じなければいけないよ」
死にたい少女が何のために旅を続けるのかは分からない。
知るためには書き続けなくてはいけないのだと、私は決意した。
神に選ばれる、そのときまで――。
【NGシーン/あとがきのようなもの】 (完)